最終更新日: 2024.12.27
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ファーストリテイリングは、倫理的かつ責任ある方法により原材料を調達し、原材料の社会・環境への影響を継続的に改善していきます。
責任ある原材料調達方針
ファーストリテイリングは、お客様が本当に必要とするものだけをつくり、服の生産から輸送、販売までのすべてのプロセスにおいて、環境負荷の少ないモノづくりを実現するとともに、人権や動物福祉に配慮し、それらをトレーサブルな状態にすることで、お客様が安心して商品をお買い求めいただけるサプライチェーンを構築します。このような取り組みを通して、サステナビリティと事業の成長を両立する新たなビジネスモデルへの転換を進めています。
当該取り組みを進めるため、ファーストリテイリングは、製品に使用される原材料がその生産・製造過程において、主に下記2点について配慮されたものであるべきであると考えます。
- 人権侵害や動物虐待が発生していないこと:栽培・飼育現場での児童労働や強制労働、動物虐待が一切ないことが確認可能な原材料
- 低環境負荷であること:一般的な原材料※に比べ、化学物質使用量を抑える、土壌汚染を防止する、生物多様性に配慮される、温室効果ガス排出量削減の工夫がなされるなど環境に配慮された原材料
※⼀般的な原材料の環境情報は統⼀された基準がないため、Higg Materials Sustainability Index(Higg MSI)登録情報などを参考に個別に判断
ファーストリテイリングは、これらの配慮すべき点が遵守されるために、原材料別に取り組むべき課題や遵守すべき基準を定義した「ファーストリテイリング原材料調達ガイドライン」(以下「原材料調達ガイドライン」)を策定しています。具体的には、工場や生産部などの原材料調達に関わる部門が業務を行う上で配慮すべきことを、原材料別に以下の7つの項目に分けて定義しています。
①人権への配慮(強制労働/児童労働/先住民の権利侵害など)
②動物福祉の尊重
③温室効果ガス排出量の削減
④水の使用削減
⑤農薬・化学肥料の使用削減
⑥生物多様性への配慮
⑦土壌保全への配慮(輪作、回転放牧等の土地管理)
なお、原材料調達ガイドラインは、国際動向、新たな科学的知見、社会的要請などを踏まえ、定期的に見直し・更新を行っています。
植物系素材の調達
コットン
ファーストリテイリングは栽培過程での水・農薬・化学肥料の使用量削減、土壌保全・生態系保全への配慮、農家における労働環境への配慮がなされているコットンを、サステナブルなコットンと定義し、2025年12月末までにサステナブルコットンの調達比率100%をめざしています。現時点では、ベター・コットン*1、米国産およびオーストラリア産のコットン、リサイクル・コットン*2、オーガニック・コットン*3、フェアトレード認証コットン、環境再生型(リジェネラティブ)農業にて生産されたコットン*4を、サステナブルなコットンとしています。
*1 下記「ベター・コットン」参照
*2 GRS(Global Recycled Standard)またはRCS(Recycled Claim Standard)による認証を取得したもの
*3 GOTS(Global Organic Textile Standard)またはOCS(Organic Content Standard)による認証を取得したもの
*4 不耕起栽培や被覆植物等の農法により土壌の健全化や環境負荷改善等などを実現する総合的な農業で生産されたコットンとして第三者認証を取得したもの
・ベター・コットン
ファーストリテイリングは2018年1月、サステナブルなコットンの生産をめざすNGO「ベター・コットン(BC)」に加盟しました。BCは、綿花を生産する農家に水の適正な使用や殺虫剤などの農薬の使用方法や労働者の権利の尊重などについて指導することで、より良いコットンの栽培方法を普及させる取り組みを行っています。BCの基準を満たした綿農家はベター・コットン生産者として認定されます。
人工セルロース繊維(Manmade cellulosic fiber、MMCF)
ビスコース/レーヨン、モダール、リヨセルなどの人工セルロース繊維(MMCF)は、木材パルプを化学的に溶かして繊維状にした再生繊維です。原料の採取にあたり、消失の危機にある森林や絶滅危惧種の生息地への影響、違法伐採への関与、先住民の権利侵害などが指摘されています。
ファーストリテイリングは、これらの課題に対して、危機に瀕した古代の森林や生態系の保全、人権と地域共同体の権利の認識・尊重・保護、温室効果ガス排出量削減等に向けた対応をまとめた「ファーストリテイリンググループ 木材・森林由来の素材・商品の調達に関する方針」を公開し、取り組みを進めています。例えば、MMCF原料の生産工場について、第三者(Canopy)の評価に基づく推奨工場リストを作成し、推奨工場からの調達をサプライヤーに求める取り組みを進めている他、温室効果ガス排出量の少ない素材へ順次切り替えを進めています。
動物系素材の調達
ファーストリテイリングでは、アパレル生産を目的として屠殺された動物からの原材料の調達を禁止しています。
動物は、飼育などにあたり、動物福祉の5つの自由(飢えや渇きからの自由、不快からの自由、痛み、外傷や病気からの自由、生態に即した行動をとる自由、恐怖や苦痛からの自由)に沿って、倫理的に扱われなければならないと考えています。このような考えのもと、原材料調達ガイドラインにて、動物が生きている状態での採取や強制給餌を行っているなど動物福祉の5つの自由に反する農場からの調達は禁止しています。
また、ファーストリテイリングでは以下の項目に沿って調達をするとともに、環境負荷低減のため、リサイクル素材や代替素材の使用を推進しています。
- ワシントン条約(CITES:絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)および国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストに挙げられている動物由来の原材料は使用しません。
- 一般的に食用として受け入れられている動物の食用肉の副産物のみを使用します。ただし文化や風習を考慮しながら使用可否を決定します。
- すべての⽣産⼯程において動物でテストされた化粧品や、動物由来の化粧品を使⽤しません。
メリノウール
ファーストリテイリングは、動物福祉の観点から、メリノウールのサプライヤーに対して「ミュールシング」を行う農家からの調達を廃止していく取り組みを進めています。ミュールシングとは、皮ふ表面のシワが深いメリノ種の羊に害虫が繁殖することを予防するために、子羊の臀部の皮ふの一部を切り取る措置です。
カシミヤ
カシミヤは飼育現場での動物福祉だけでなく、近年広大な土地利用と放牧地砂漠化など生物多様性への影響も課題となっています。ファーストリテイリングは、動物福祉と放牧地の適切な管理を規定したカシミヤ調達方針を策定し、この方針に同意いただいたサプライヤーからカシミヤを調達するとともに、定期的に自社従業員がサプライヤーおよび調達先牧場の一部への訪問などを実施しています。また、生物多様性保全に向け、調達先牧場やその地域について、外部の専門家研究チームと科学的な分析を実施。過去20年間にわたって植生の劣化が発生しておらず、生物多様性が維持されていることを確認しました。今後も定期的にモニタリングを実施することで持続可能な調達を担保していきます。
ダウン、フェザー
ファーストリテイリングは、強制的に給餌した鳥から採取したり、鳥が生きている状態で引き抜いたダウンやフェザーの使用を禁止しています。2019年12月末時点で、ダウン商品の生産に携わるすべての取引先縫製工場がRDS(Responsible Down Standard)の認証を取得しており、以降もこの取り組みを継続しています。また、お客様が着られなくなったファーストリテイリングのダウン商品を回収し、ダウンとフェザーを取り出し、その後洗浄工程を得て新しいダウン商品の素材としてリサイクル活用する取組を、2020年より進めています。
関連リンク
使用禁止素材
ファーストリテイリングは、下記の素材の使用を禁止しています。
- エキゾチックアニマル(クロコダイル、アリゲーター、ヘビ、トカゲ、オストリッチ、カンガルー、クジラ、サメなど)、野生動物由来や動物の胎児のレザー/スキン
- リアルファー(毛皮)
- モヘヤ(アンゴラヤギの毛)、アンゴラ(アンゴラウサギの毛)
- アルパカ
- 角 / 骨 / 歯
合成繊維の調達
ポリエステル、ナイロン、アクリル、ポリウレタン、といった合成繊維は石油の副産物から生産されており、その製造過程において多くのエネルギーを必要とします。ファーストリテイリンググループでは、2030年8月期までに、ポリエステルなどの合成繊維を含む全使用素材の約50%をリサイクル素材など温室効果ガス排出量の少ない素材に切り替えることを目指し、取り組みを進めています。2024年商品では、全使用素材に対するリサイクル素材など温室効果ガス排出量の少ない素材の使用率は18.2%、ポリエステル全使用量に対するリサイクルポリエステルの使用率は47.4%となりました。
また、これらの石油系素材は自然環境で分解されず、洗濯時のマイクロプラスチックの脱落や不適切な廃棄処理による環境汚染が指摘されています。ファーストリテイリングは、このマイクロプラスチックによる環境への影響を重要課題として認識し、影響の最小化に向けて取り組んでいます。詳細は関連リンクをご参照ください。
*ユニクロとジーユー対象
関連リンク
トレーサビリティ
ファーストリテイリングでは、サプライチェーン全体のトレーサビリティを追求し、原材料調達の最上流まで自社で把握、自社従業員による訪問や第三者機関による監査、第三者認証などを通じて、労働環境のモニタリングや、指定した原材料が使われているかを必要に応じてトレースできる仕組みを構築しています。
主要ブランドであるユニクロでは、原材料、紡績工場、素材工場、縫製工場など商品ごとにサプライチェーン計画を組み立て、実績を確認する仕組みを構築しています。2023年春夏シーズンからすべての商品の原材料原産国から縫製工場までの全工程の商流を把握しています。また、綿素材の商品については、定期的なトレーサビリティ監査を導入しています。2024年秋冬商品からは、こうした取り組みをカシミヤ100%商品に拡大し、洗毛工場と紡績工場に対して監査を実施しています。今後ウールでも同様の枠組み作りを進めていくとともに、今後は全商品、グループブランドへの展開をめざします。
関連リンク
サステナブル素材の再定義
ファーストリテイリングでは、お客様に、より安心してお買い求めいただける商品をお届けすることをめざし、当社が定める「サステナブル素材」の再定義に着手しています。温室効果ガス排出量、水使用量、生物多様性、人権、動物福祉など素材の特性に応じて配慮すべき項目を定め、定性・定量の両面で基準に合致する素材を「サステナブル素材」とし、自社商品に採用すべき素材を明確にします。調達量の多い綿から取り組みを開始しており、早期にその他の素材にも広げていきます。