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取引先工場のモニタリングと評価

最終更新日: 2020.12.25
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サプライチェーンにおける人権の尊重や労働関連法令の遵守、労働環境の改善を最優先課題のひとつと考え、「生産パートナー向けのコードオブコンダクト」に基づき、労働環境モニタリングに積極的に取り組んでいます。

労働環境モニタリング

取引先工場の労働環境モニタリング

ファーストリテイリングは、すべての縫製工場と主要素材工場を対象に、「生産パートナー向けのコードオブコンダクト」に基づき、人権侵害、労働環境、環境保全などの項目について第三者機関による監査を実施し、その評価結果を開示しています。前回の監査結果通知の一年後に第三者機関が抜き打ち監査を行い、改善が必要な工場については、ファーストリテイリングの従業員が直接訪問し、取引先工場とともに改善活動に取り組みます。また、新規に取引を開始する工場に対しては、事前監査を実施することで、適正な工場のスクリーニングを行うとともに、早期に労働環境の改善に着手できるようにしています。

サステナビリティ部の工場労働環境改革チーム(以下、サステナビリティ部)は、ファーストリテイリングの全ブランドの取引先工場に対する労働環境モニタリングと、サプライチェーンの人権・労働環境における課題への対応と解決のための取り組みを行っています。サステナビリティ部の責任者は、チームの業務計画と進捗の管理を行い、サステナビリティ担当役員への報告を行います。サステナビリティ部は、各地の取引先工場の経営者や従業員、その他の個人や団体と、現地の言語で適切なコミュニケーションを行うため、本社のある日本だけではなく、中国、ベトナム、インドネシア、バングラデシュ、トルコなどの重要な生産国にも拠点を置いています。役員、部の責任者および担当者は、人権方針を推進する活動の一環として行われる取り組みの成果に対して、年に2回業績評価を受け、その評価に応じて報酬が決まります。

2015年からは、国際労働機関(ILO)と国際金融公社(IFC)の共同活動プログラム「ベターワーク」による監査も実施しています。アパレル業界で広く導入されているベターワークの監査により、工場は監査の重複を減らすことができ、労働環境の改善により注力することができます。

2015年、ファーストリテイリングは公正労働協会(FLA)に加盟しました。FLAの労働環境基準の導入のほか、ファーストリテイリングの労働環境モニタリングプログラムの改善、およびFLA加盟企業や工場、市民団体などのステークホルダーとの対話について、FLAからの支援を受けています。

2019年2月、ファーストリテイリングの労働環境モニタリングプログラムは、FLAに認定されました。これは、当社のサプライチェーンにおいて、FLAの基準を満たすための仕組みや手続きが展開されていることを意味します。

関連リンク

労働環境モニタリングの仕組み

労働環境モニタリングの仕組み

労働環境監査を定期的に実施し、取引先工場をA~Eのグレードで評価しています。労働環境監査は、決められた手続きに沿って、工場従業員、労働組合、従業員代表、経営者層などへのインタビュー、労働協約や諸記録のレビュー、現場視察による労働安全衛生状況などのチェックにより行われます。「生産パートナー向けのコードオブコンダクト」を遵守し、指摘事項が全くない取引先工場はA評価となります。比較的リスクの低い違反事項が認められた工場はB評価となります。人権を侵害する恐れや、現地の法令に違反する労働安全衛生上の違反(例えば、工場従業員にマスクや手袋などの作業用保護具が適切に支給されていないなど)が認められた場合はC評価となります。人権侵害や安全衛生、賃金や福利厚生上の重大な違反(例えば、非常口の施錠や賃金計算の不備など)が認められた場合はD評価となります。C・D評価となる違反事項が、フォローアップ監査でも解決されていない場合は、取引量の削減や取引停止につながる可能性があります。児童労働や強制労働などの深刻な人権侵害や、安全衛生上の極めて重大な違反が認められた場合はE評価となります。C・D評価となる違反事項が解決されていない場合、およびE評価の場合、企業取引倫理委員会に上程されます。企業取引倫理委員会では、当該工場の経営・雇用状況も踏まえた審議が行われ、取引の停止や見直しを生産部門に勧告します。 C・D評価の連続やE評価など、取引の見直しに相当する重大な人権侵害が発生しないよう、未然防止に努めています。

取引先工場の評価およびファーストリテイリング従業員の工場訪問により、透明性の欠如(虚偽報告など)、労使間の争議、人権侵害などの懸念がある工場を「リスクの高い工場」として特定しています。リスクの高い工場に対しては、第三者機関による監査や、ファーストリテイリング従業員による工場訪問の頻度を通常より増やすことで、本質的な問題の把握と解決に取り組んでいます。また、工場の労働環境における潜在的なリスクを把握し対応するためには、労働組合や労働者代表と適切なコミュニケーションを取ることが重要だと考えています。例えば、労働組合が工場においてどのような役割を果たしているかを理解するため、労働環境監査では、労働組合や労働者代表にもインタビューを行い、監査当日に工場と監査員が行うオープニングおよびクロージングミーティングにも出席を依頼しています。労働組合の活動の侵害にあたる重大な事態が発生した場合は、予防・改善措置が確実に行われたかを確認します。

ファーストリテイリングのモニタリングプログラムマニュアルと取引先工場向けガイドブックには、改善措置の実行プロセス、監査後の改善タイムライン、根本原因の分析方法などが規定されています。ファーストリテイリングは、各工場で問題を未然に防止するための具体策が確実に策定され、実行されるよう、工場に対して、公正労働協会(FLA)の原因分析ガイダンスをはじめとするさまざまな資料提供や支援を行っています。全体の監査結果や特に指摘が多い項目については、ウェブサイトで開示するだけではなく、各ブランドの調達関連部署や取引先に共有しています。

第三者機関が行った定例監査結果を分析することで、労働環境モニタリングプログラムの効果測定を行っています。分析結果に基づき、労働安全衛生、賃金と福利厚生、労働時間などの重点領域における監査の指摘件数の削減目標を設定しています。取引先工場の従業員がファーストリテイリングに直接相談できるホットラインも設置し、監査以外にも課題を特定する方法を導入しています。少なくとも年に2回、緊急度の高い課題、国や地域特有のリスク、高リスク工場の改善支援状況など、取り組みを通じて把握した傾向やリスクが経営陣に報告され、必要に応じて人権委員会やサステナビリティ委員会に上程されます。上記およびFLAによる認定の過程で得た意見や助言、また、ベターワークなど外部団体との取り組みなどの過程で得た気づきは、検討のうえ、プログラムの改善に反映されます。例えば、取引先工場の従業員向けホットラインに寄せられた意見を分析し、労働環境モニタリングプログラムの改善に反映することによって、工場経営者が自ら問題を発見、調査、解決できるよう、工場内の苦情処理メカニズムの強化に努めています。

さらに、国やブランドごとに、監査の合格・不合格数や違反傾向を分析しています。こうした傾向分析とあわせて、バングラデシュ、カンボジア、中国、インドネシア、ミャンマー、ベトナムといった国ごとの課題を整理し、改善策を策定しています。各国の課題の優先順位は、ステークホルダーエンゲージメントやビジネス戦略との整合を図りながら設定しています。

外注先工場の労働環境モニタリング

ファーストリテイリングは、「生産パートナー向けのコードオブコンダクト」において、ファーストリテイリングの事前承認を得ていない工場への生産委託を禁止しています。主要な縫製工場には、生産工程の一部を委託する外注先工場に対しても監査を実施し、ファーストリテイリングから承認を得るよう義務づけています。外注先工場は取引先工場と同様の監査を毎年受け、「生産パートナー向けのコードオブコンダクト」の重大な違反が認められた場合は3ヶ月以内に是正し、再監査を受けて合格する必要があります。
ファーストリテイリングは、主要取引先工場の定例監査において、承認を受けた外注先工場のみを使用しているかを確認しています。

労働環境モニタリング結果

労働環境モニタリング結果(取引先工場の評価)

2020年度の労働環境モニタリングの結果は、2019年度と比較して、A・B評価工場の割合が微増、C・D評価工場の割合が微減となりました。2020年度は、新型コロナウイルス感染症の影響で、現場訪問が制限される中でも、ウェブカメラなどを利用し、リモートでの現場指導を実施しました。また、工場による改善状況の確認強化を促しました。こうした取り組みが、評価の改善につながりました。課題としては、過去に評価が改善された工場においても、次年度の監査で異なる指摘事項が検出されていることがあげられます。今後は、工場の管理の質を根本的に改善し、向上させるため、モニタリングの仕組みを見直していきます。
なお、2020年度にE評価となった1工場については、問題の是正と再発防止のための対策に関し、工場経営者と合意しました。そのうえで、問題が期限内に是正されなかった場合には、取引を削減もしくは停止する旨、厳重注意を行いました。

労働環境モニタリング結果

評価内容
A評価指摘事項が全くない
B評価比較的リスクの低い違反事項が認められた
C評価人権を侵害する恐れや、現地の法令に違反する労働安全衛生上の違反(例えば、工場従業員にマスクや手袋などの作業用保護具が適切に支給されていないなど)が認められた
D評価人権侵害や安全衛生、賃金や福利厚生上の重大な違反(例えば、非常口の施錠や賃金計算の不備など)が認められた
E評価児童労働や強制労働などの深刻な人権侵害や、安全衛生上の極めて重大な違反が認められた

2020年度の監査における指摘項目

2020年度に実施された監査において、「生産パートナー向けのコードオブコンダクト」の項目のうち、「健康と安全性」と「労働時間」に関する指摘が多く検出されています。ファーストリテイリングは、これらの指摘の防止と改善のための取り組みを強化していきます。

2020年度の監査における指摘項目の内訳

健康と安全性
取引先工場へのトレーニングを定期的に実施し、現地法令やファーストリテイリングの労働安全衛生基準、ベストプラクティスなどを説明しています。サステナビリティ部が取引先工場を訪問する際は、防火設備の設置状況を確認し、問題があった場合は早急な改善を求めています。 また、ファーストリテイリングは、縫製工場におけるビルの崩壊や火災事故を防止するためのイニシアティブ「バングラデシュにおける火災予防および建設物の安全に関わる協定(通称:アコード)」に加盟しています。

関連リンク

労働時間
ファーストリテイリングは、サプライチェーンの透明性向上に力を入れており、取引先工場による虚偽報告を禁止しています。取引先工場の労働時間を監査で確認するだけでなく、生産部とサステナビリティ部が協働して、取引先工場の過度な労働時間の撲滅に向けて取り組んでいます。生産部は、過度な労働時間が発生する根本原因を取引先工場とともに特定し、改善計画を策定します。その上で、毎月、取引先工場の全従業員の週単位の労働時間実績を収集し、改善進捗を確認しています。
取引先工場は労働時間を削減するために、生産計画立案方法の見直しを行うとともに、生産ラインの自動化、従業員のスキルアップトレーニングの実施、生産性と連動した報酬制度の採用などによる生産効率の向上に取り組んでいます。さらに、取引先工場には、長時間労働が発生する見込みがある場合は、事前に生産部に連絡するよう依頼しており、生産部は可能な限り生産計画の調整などを行い対応します。

サステナビリティ部は、改善計画の進捗を確認し、必要に応じて取引先工場を訪問して、労働時間の実績を確認しています。さらに、社内で定期的に進捗確認会議を実施し、取引先工場の改善状況を共有しています。工場と密にコミュニケーションを取りながら改善状況を確認するとともに、労働時間が削減されることによって工場従業員の収入が損なわれないよう、賃金と福利厚生を維持する施策について他社の好事例の共有などを行っています。

また、ファーストリテイリングは、取引先工場における労働環境を守り、工場従業員の人権を尊重するため、適切な手順に従って発注を行うことを規定した「責任ある調達方針」を策定しました。責任ある調達を推進するために、主要ブランドの調達業務に沿ったガイドラインも作成しています。主要取引先に対して年次調査も行っており、当社の発注が取引先工場の労働時間の改善を遅らせるような過度な負担につながっていないか、ヒアリングを行っています。取引先からのフィードバックは、生産部とサステナビリティ部間で検討され、残業時間の根本原因を解決するための施策を検討します。

これまでの取り組みを通じて、多くの取引先工場で長時間労働の改善がみられました。今後も、取引先工場の労働時間の適正化に取り組んでいきます。

新規工場の事前モニタリング

新規工場との取引開始プロセスで事前監査を導入

すべての取引先工場に「生産パートナー向けのコードオブコンダクト」を遵守してもらうために、新規に取引を開始する工場に対しては、取引開始前の監査を行っています。新規取引基準を満たすことが確認された場合のみ、取引を開始します。事前監査で重大な指摘が検出された工場には、3ヶ月以内の是正期間が与えられ、フォローアップ監査で評価の改善が見られた場合のみ取引を開始します。極めて深刻な指摘が検出された工場は、取引を開始することができません。2020年度は、事前監査を実施した取引先工場の95.9%と取引を開始しました。

新規工場の承認プロセス

新規工場の承認プロセス

苦情処理メカニズム

取引先縫製工場および素材工場における苦情処理メカニズム

取引先工場における苦情処理メカニズム
ファーストリテイリングは、取引先工場に対し、従業員の苦情に対応するための仕組みの導入と公正労働協会(FLA)の基準などを踏まえた適正な運営を求めており、労働環境監査で確認しています。ファーストリテイリングの取引先工場向けガイドブックでは、苦情処理メカニズムの要件として以下を定めています。

  • 苦情処理に関する手続きを文書化し、苦情処理の体制とガイドライン、また、苦情を申し立てた従業員に対する処罰や報復の禁止などについて、明確に定める。
  • 機密保持を前提とし、匿名で通報できる窓口を少なくとも1つ設ける。
  • すべての従業員が、苦情処理メカニズムと関連規定を理解するための施策を実施する。管理者や一般従業員を含むすべての従業員に対し、導入および定期的な研修を実施し、その記録を保管する。また、知識の習得度をアンケートやインタビューなどで確認し、その記録を保管する。
  • 苦情に対して適時に対応するため、苦情処理の状況および結果を記録する。
  • 国と地域の法律・規範の変化や、内部・外部監査結果に応じて、苦情処理に関するすべての方針や手順書を適宜見直す。

これらの要件の遵守状況については、労働環境監査で確認しています。

工場の苦情処理メカニズムが機能しているかを確認するため、監査プロセスを継続的に改善しています。例えば、2018年には、工場がどのように苦情の解決状況をトラッキングしているか、ペナルティや報復行為が行われていないか、などの確認を強化する項目を監査のチェックリストに追加しました。
2019年、サステナビリティ部は、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則(UNGP)」に定義されている、有効な苦情処理メカニズムの8要件について、エレベイト(ELEVATE)社のトレーニングを受けました。8要件とは、「正当性がある」「アクセスすることができる」「予測可能である」「公平である」「透明性がある」「権利に矛盾しない」「継続学習の源となる」「エンゲージメントおよび対話に基づく」というものです。また、FLAの支援のもと、苦情処理メカニズムの機能を、8要件に照らして、工場従業員に対する調査結果も踏まえ、評価する方法を開発し、試用による有効性の確認を行いました。

2020年には、新型コロナウイルス感染症の影響により、現場訪問が制限されたことを受け、開発した評価手法に基づく予備調査を行いました。対象となった114工場に対し、工場による自己評価と、当社によるリモートでのインタビューや書類確認による評価を実施しました。工場の自己評価と当社による評価の乖離の要因分析や、評価結果と当社のホットラインへの相談状況の照合分析などを行い、評価手法の妥当性の確認と改善につなげていきます。

ファーストリテイリングによる取引先工場従業員向けのホットライン
主要な縫製工場および素材工場の従業員や従業員代表が、匿名かつ現地語でファーストリテイリングに直接相談できるホットラインを、上海、ホーチミン、ジャカルタ、ダッカ、東京などに設置しています。
取引先工場には、工場内の目につきやすい場所にホットラインの案内ポスターを掲示すること、従業員に対して問い合わせ方法を説明すること、通報した従業員に不利益を与えたり、報復行為を行わないことを要請しています。ホットラインの連絡先は現地語で案内されており、また、第三者機関による監査やサステナビリティ部の訪問でインタビューを受けた従業員には、連絡先を記載したカードを渡しています。

相談が寄せられた場合、ファーストリテイリングは、原則24時間以内に、携帯のショートメッセージ機能や電子メール、電話などの、現地の状況に応じた方法で相談者に回答します。まず内容をレビューし、調査や解決の進め方を手続きに従い決定します。そして調査を行い、問題点を把握したうえで、是正措置を検討します。調査の結果、人権侵害に該当すると判断された場合は、ILO中核的労働基準、現地労働法、「生産パートナー向けのコードオブコンダクト」などをもとに、サステナビリティ部と生産部が中心となって、対応策や改善策を取引先工場に要請します。対応について工場と合意した後は、対応策の内容および工場から同意を得ている旨、相談者に通知します。相談者には、対応策が実行されない場合や、再度問題があった場合は、ファーストリテイリングに連絡をするように伝えます。対応策が最終的に実行されたか否かは、監査やサステナビリティ部の工場訪問などにより確認します。また、相談内容は人権委員会に報告されます。特に深刻な案件が発生した場合、人権委員会は対策案への助言や改善案の提言を行います。

相談内容は機密情報として扱われます。ファーストリテイリングの従業員は、機密情報の漏洩禁止と適切な情報管理を定める「ファーストリテイリンググループ コードオブコンダクト」の遵守を誓約しています。ホットラインの運用にあたっては、通報者のプライバシーを保護するとともに、報復行為を禁止し、不利益な取り扱いは一切認めていません。また、通報者などの関係者と適切にコミュニケーションをとり、迅速かつ一貫性のある対応に努めています。ホットラインが適切に運営されているかの確認を厳密に行っており、例えば、サステナビリティ部の責任者は、相談者の通報後に担当者が迅速に折り返し連絡を行ったか、相談者が納得できる期間内に対応を完了させたか、などを管理しています。

2019年に開発した評価方法に基づき、UNGPの8要件に照らしたホットライン機能の自己評価も行っています。評価の結果、特に、「アクセスすることができる」「公平である」の指標が、他の指標よりも低い評価となりました。

評価結果を受け、より相談しやすいホットラインにするため、携帯のショートメッセージ機能と翻訳サービスの組み合わせにより、工場従業員が母語で相談できるシステムを導入しました。取引先工場で移住労働者が働いている場合は、母語でホットラインを案内できるよう、ポスターを多言語で作成しています。また、相談者が専門的な解決を必要としている場合は、現地の専門家から直接助言を得られる仕組みを整えるため、国際移住機関(IOM)の助言のもと、移住労働者が、取引先工場での勤務時もしくは帰国時に当社のホットラインを利用し、支援のできるNGOの選定を行っています。

2020年より、当社のホットラインの改善に向けた施策を検討するため、労働組合員などの従業員代表を中心とする、工場従業員からの意見聴取を行っています。これまで、工場による定期的な説明やポスターが、ホットラインの周知のために有効である、などのコメントが得られています。工場による定期的な説明の強化や、ポスターの掲出状況の再確認を実施し、認知度のさらなる向上に努めていきます。

工場ホットライン運用プロセス

工場ホットライン運用プロセス

ファーストリテイリングホットラインの運用プロセス

人権侵害に関する相談

2019年度にホットラインに寄せられた相談のうち、ILO中核的労働基準、現地労働法、「生産パートナー向けのコードオブコンダクト」の違反にあたるものは63件ありました。そのうち53件が、賃金や労働時間の問題、ハラスメントなどの人権侵害に当たると判断されました。63件のうち43件については、2019年度中に対応が完了しています。
ファーストリテイリングは、人権侵害を未然に防止するため、これまでに受け付けた相談内容を分析し、改善策につなげています。例えば、相談内容の分析とカントリーリスク分析の結果、特にバングラデシュの取引先工場におけるハラスメントの防止と改善が重要であることが判明し、専門家と協働して未然防止策の策定と実行を行っています。

2019年度ホットライン相談案件*の内訳
*寄せられた相談のうち、ILO中核的労働基準、現地労働法、「生産パートナー向けのコードオブコンダクト」の違反に該当するもの

2019年度ホットライン相談案件の内訳

相談事例

ホットラインその他の手段を通じて当社に相談のあった事例は、以下の通りです。

  • 事例1(カンボジア)
    2019年、取引先工場の従業員代表から、組合結成の自由の侵害の可能性について、ファーストリテイリングに相談が寄せられた。ファーストリテイリングは、外部の調停者の支援のもと、従業員代表と工場経営者との対話を促した。地方自治体の労働・職業訓練部により交渉の場が設けられたが、合意に至らず、仲裁機関に持ち込まれた。ファーストリテイリングは工場経営者に対し、仲裁機関の判断に従うべきとの意見を明確に伝え、取引先工場は仲裁機関の判断に従うことに合意した。
  • 事例2(中国)
    2020年、取引先工場の従業員から、給与や社会保険料の計算方法に疑問がある、との相談が寄せられた。ファーストリテイリングは、相談者から事情を聞き、現地の法令に基づいた正しい計算方法を相互に確認した。その後、相談者の了承のもと、他の従業員の支払い状況も含めて、工場への確認を行った。工場は、計算方法の誤りを認め、相談者への差額の支払いを行った。相談者以外の従業員への支払い状況については、誤りは発見されなかった。ファーストリテイリングは、支払いが完了したことを相談者に確認した。また、工場に対し、確認体制の強化を要請した。
  • 事例3(ベトナム)
    2020年、取引先工場の従業員から、管理者の言動がハラスメントにあたる、との相談が寄せられた。ファーストリテイリングは、現場訪問を行い、ハラスメントの事実があることを確認した。その後、工場に対し、当該管理者への注意・指導を確実に行った。さらに、管理者と従業員のコミュニケーション方法に関するトレーニングの実施や、工場内の苦情処理メカニズムの強化を要請した。相談者への確認と他の従業員へのインタビューを通じて、要請した内容が実施され、当該管理者の言動が改善されたことを確認した。

人権侵害の未然防止と業界全体の課題への取り組み

人権デューディリジェンスやステークホルダーエンゲージメントを通じて提起された様々な人権侵害のリスクについて、地域やグローバルの専門家とともに、未然防止策を実施しています。

児童労働の防止

児童労働は、子どもたちの健全な成長を阻害するとともに、教育の機会を奪うことにもなる深刻な社会課題です。ファーストリテイリングは、「子どもの権利とビジネス原則」などに基づき、児童労働の撤廃と防止に取り組んでいます。
サプライチェーンにおいては、児童労働防止のための施策を講じるよう取引先工場に求めています。「生産パートナー向けのコードオブコンダクト」に児童労働の禁止を明記し、労働環境モニタリングでは、取引先工場が従業員を採用するときに、信頼できる身分証明書を用いて年齢をチェックしているかなどを確認しています。特に児童労働のリスクが高いミャンマーの取引先工場に対しては、2018年、現地の団体とパートナーシップを組み、児童労働のリスクや防止策、若年労働者に関する法令についてのトレーニングを実施しました。トレーニングでは、適切な採用プロセスや年齢確認方法、問題が発見されたときの是正策についての説明を行いました。トレーニング実施後、参加した取引先工場は社内規程の策定や見直しを行い、採用時のより厳密な年齢確認プロセスの構築に取り組んでいます。

2019年、ファーストリテイリングは、CCR CSRとミャンマーの主要取引先工場に向けたプログラムを開始しました。CCR CSRは、子どもの権利に関するCSR戦略やプログラム、プロジェクトの改善、開発、実行における企業支援を2009年から行っているパイオニアであり、経験と専門性のある社会的企業です。
CCR CSRと今までに実施した活動は下記のとおりです。

  • 若年労働者を含む法令違反のリスクアセスメント
  • 法令リスト、チェックリスト、若年労働者の管理に関するガイドラインなどの工場経営者向けツールキットの開発
  • 適切かつ持続的な若年労働者のマネジメントを実現するための具体的なアクションプランの開発
  • 児童労働の防止と改善および若年労働者の管理に関する経営層向けトレーニングを各企業の事情にあわせて提供

トレーニング実施後、参加者は最低就労年齢および児童労働の防止と改善のためのベストプラクティスへの理解を深めることができました。2019年8月から、すべての参加工場が監査の指摘事項の改善に取り組んでいます。

責任ある雇用

ファーストリテイリングは、人身取引を含む強制労働を絶対に許容しない方針を明確にしています。とりわけサプライチェーンにおいて、国や地域を越境して働く移住労働者は差別的な処遇を受けやすい立場にあります。こうした立場にある労働者が雇用時や雇用中に不当に扱われていないか確認するとともに、雇用側の取引先工場に対するトレーニングなどの取り組みを強化していきます。
また、2019年2月、ファーストリテイリングは、公正労働協会(FLA)とアメリカン・アパレル・フットウエア協会(AAFA)が2018年10月に策定した「責任ある雇用」に関する業界コミットメントへの支持を表明しました。これは、労働者による雇用手数料の負担など、グローバルなサプライチェーンにおける移住労働者に対する強制労働のリスクを低減するための、業界をあげたコミットメントです。全世界の取引先工場と協力して、以下の状況が実現されるよう取り組みます。

  • 労働者が雇用手数料を負担しないこと
  • 労働者がパスポートを自己所有し、移動の自由が確保されていること
  • 採用前に基本的な労働条件が通知されていること

「責任ある雇用」のコミットメント実行に向けて、2019年9月、ファーストリテイリングは、国際移住機関(IOM)と、移住労働者の採用および雇用の条件をより良く理解し課題に対処していくための新しい連携プロジェクトを開始しました。IOMは、移住労働に関わる課題解決の第一人者として、各種の取り組みを行っている政府間機関です。このプロジェクトは、ファーストリテイリングのサプライチェーンの管理向上と、移住労働者の人権と労働権の保護に関する取り組みの強化を目的としています。移住労働者を採用している日本、タイ、マレーシアの取引先工場の雇用慣行についての調査から開始し、その結果をもとに、移住労働者を守るための原則と具体的な対応策を取引先工場の方針やガイドラインに盛り込みます。当社の経営者や調達担当者、各国の担当者への研修なども実施します。また、2019年10月、ファーストリテイリングは、上記のコミットメントの日本での実行に向けて、移住労働者の強制労働のリスク低減などに取り組む一般社団法人ザ・グローバル・アライアンス・フォー・サステイナブル・サプライチェーン(ASSC)とのパートナーシップを開始しました。

2020年2月、IOMは、サステナビリティ部を対象とした2日間のトレーニングを実施しました。このトレーニングは、倫理的な採用に関する知識と実務および外国籍の移住労働者がいかに脆弱な状態に置かれうるかを理解するために行われました。特に、日本、タイ、マレーシアで搾取的な採用や労働条件の設定が行われるリスクの特定と、その低減に向けた取引先工場との取り組みの準備を目的としたものです。トレーニングには、ASSCとFLAも参加しました。

トレーニングの結果、参加者は、外国籍の移住労働者がどのような状況に陥りやすいかとサプライチェーンにおける強制労働のリスクについての理解を深めることができました。また、FLAとAAFAの規定する「責任ある雇用」の考え方に基づき、取引先と密に連携しながら複数国にわたる採用プロセスを改善するための、具体的なアクションを特定しました。

現在、IOMの支援のもと、基準、取引先向けのガイドライン、評価手法を開発しており、2020年から、取引先工場の評価を進めていきます。

抑圧とハラスメント

抑圧とハラスメントは、労働環境や労働者の精神的・肉体的な健康状態に悪影響を及ぼします。健康的な労働環境の実現のために、労働者が抑圧とハラスメントを受けることなく働ける環境を作ることは極めて重要です。ファーストリテイリングはいかなる形の抑圧・ハラスメントも容認しません。「生産パートナー向けのコードオブコンダクト」にも、従業員の尊厳を守ることが明記されています。
ファーストリテイリングのホットラインでこれまでに受け付けた相談内容と、カントリーリスクを分析したところ、特にバングラデシュの取引先工場におけるハラスメントの防止と改善が重要事項であることが判明しました。対策の一つとして、2019年に、現地NGOのアワジ財団(Awaj Foundation)、チェンジ・アソシエーツ社(Change Associates Ltd.)と協働し、取引先工場に苦情処理委員会を設置するパイロットプロジェクトを開始しました。苦情処理委員会は、5人以上から構成され、委員長および委員の過半数を女性とし、委員のうち2名は工場外から招へいする必要があります。隔月で開催され、ハラスメント防止に関する方針やガイドラインを策定し、ハラスメントの調査や調停の役割を担います。取引先工場の経営者、労働者、苦情処理委員会の委員に対し、NGOによるトレーニングが実施されました。トレーニングでは、不適切な言動の具体例などについて参加者による活発な議論が行われました。特に、工場が委員会を設置し、従業員代表や外部の委員を選定する際には支援が必要であるため、2020年には、設置された委員会が機能しているかを検証していくとともに、まだ委員会を設置していない工場に対する支援を行っていきます。

賃金と福利厚生および生活賃金

賃金と福利厚生および労働時間に関する監査指摘事項に対して、目標を掲げ、改善に取り組んでいます。サステナビリティ部は、工場と密にコミュニケーションを取りながら改善状況を確認するとともに、労働時間が削減されることによって工場従業員の収入が損なわれないよう、賃金と福利厚生を維持する施策について他社の好事例の共有などを行っています。

サプライチェーンで働く人々のより豊かで安定した暮らしの実現に向けて、ファーストリテイリングは最低賃金の保障だけではなく、生活賃金の実現を目指しています。 ファーストリテイリングは、「生産パートナー向けのコードオブコンダクト」の中で、賃金は、衣食住などの基本的なニーズを満たしたうえで、相応の社会生活が営める水準であるべきとしています。
ファーストリテイリングが2015年に加盟した公正労働協会(FLA)は、公正な生活賃金の実現にコミットしています。 FLAは、グローバル生活賃金連合の「アンカー計算法」に基づき、さまざまな団体の手法を用いて工場の賃金データの収集とベンチマーキングを行うことにより、各地域の工場従業員ニーズの理解を進めています。ファーストリテイリングは、FLAと協働し、取引先工場の賃金支払い状況を分析したうえで、生活賃金と実際の賃金に差があった場合の対応方法を模索していきます。

取引先工場へのトレーニング

取引先工場には、「生産パートナー向けのコードオブコンダクト」や最新の労働環境基準などを正しく理解してもらうために、定期的にトレーニングを実施しています。例えば、労働環境基準の改定ポイント、防火安全基準や残業時間に対する正しい賃金計算方法などに関するプログラムを提供しています。2020年度は、22カ国の489工場を対象に、トレーニングを実施しました。

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