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取引先工場のモニタリングと評価

最終更新日: 2019.05.17
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サプライチェーンにおける人権の尊重や労働環境の改善を最優先課題のひとつと考え、「生産パートナー向けのコードオブコンダクト」に基づき、労働環境モニタリングに積極的に取り組んでいます。

労働環境モニタリング

取引先工場の労働環境モニタリング

ファーストリテイリングは、すべての縫製工場と主要素材工場を対象に、「生産パートナー向けのコードオブコンダクト」に基づき、人権侵害、労働環境、環境保全などの項目について第三者機関による監査を実施し、その評価結果を開示しています。第三者機関が定期的に抜き打ち監査を行い、改善が必要な工場については、ファーストリテイリングの従業員が直接訪問し、取引先工場とともに改善活動に取り組みます。また、新規に取引を開始する工場に対しては、事前監査を実施することで、適正な工場のスクリーニングを行うとともに、早期に労働環境の改善に着手できるようにしています。

2015年からは、国際労働機関(ILO)と国際金融公社(IFC)の共同活動プログラム「ベターワーク」による監査も実施しています。アパレル業界で広く導入されているベターワークの監査により、工場は監査の重複を減らすことができ、労働環境の改善により注力することができます。

2015年、ファーストリテイリングは公正労働協会(FLA)に加盟しました。FLAの労働環境基準の導入のほか、ファーストリテイリングの労働環境モニタリングプログラムの改善、およびFLA加盟企業や工場、市民団体などのステークホルダーとの対話について、FLAからの支援を受けています。

2019年2月、ファーストリテイリングの労働環境モニタリングプログラムは、FLAに認定されました。これは、当社のサプライチェーンにおいて、FLAの基準を満たすための仕組みや手続きが展開されていることを意味します。

関連リンク

労働環境モニタリングの仕組み

労働環境モニタリングの仕組み

労働環境監査を定期的に実施し、取引先工場をA~Eのグレードで評価しています。「生産パートナー向けのコードオブコンダクト」を遵守し、指摘事項が全くない取引先工場はA評価となります。比較的リスクの低い違反事項が認められた工場はB評価となります。人権を侵害する恐れや、現地の法令に違反する労働安全衛生上の違反(例えば、工場従業員にマスクや手袋などの作業用保護具が適切に支給されていないなど)が認められた場合はC評価となります。人権侵害や安全衛生、賃金や福利厚生上の重大な違反(例えば、非常口の施錠や賃金計算の不備など)が認められた場合はD評価となります。C・D評価となる違反事項が、フォローアップ監査でも解決されていない場合は、取引量の削減や取引停止につながる可能性があります。児童労働や強制労働などの深刻な人権侵害や、安全衛生上の極めて重大な違反が認められた場合はE評価となります。C・D評価となる違反事項が解決されていない場合、およびE評価の場合、企業取引倫理委員会に上程されます。企業取引倫理委員会では、当該工場の経営・雇用状況も踏まえた審議が行われ、取引の停止や見直しを生産部門に勧告します。

また、ファーストリテイリングは、取引先工場の評価およびファーストリテイリング従業員の工場訪問により、透明性の欠如(虚偽報告など)、労使間の争議、人権侵害などの懸念がある工場を「リスクの高い工場」として特定しています。リスクの高い工場に対しては、第三者機関による監査や、ファーストリテイリング従業員による工場訪問の頻度を通常より増やすことで、本質的な問題の把握と解決に取り組んでいます。

外注先工場の労働環境モニタリング

ファーストリテイリングは、「生産パートナー向けのコードオブコンダクト」において、ファーストリテイリングの事前承認を得ていない工場への生産委託を禁止しています。主要な縫製工場には、生産工程の一部を委託する外注先工場に対しても監査を実施し、ファーストリテイリングから承認を得るよう義務づけています。外注先工場は取引先工場と同様の監査を毎年受け、「生産パートナー向けのコードオブコンダクト」の重大な違反が認められた場合は3ヶ月以内に是正し、再監査を受けて合格する必要があります。
ファーストリテイリングは、主要取引先工場の定例監査において、承認を受けた外注先工場のみを使用しているかを確認しています。

労働環境モニタリング結果

労働環境モニタリング結果(取引先工場の評価)

2018年度は、取引先工場内の苦情処理システムの有無や機能に関する監査基準をより厳しくしました。その結果、C評価の工場の割合が増加しました。また、2018年度は、取引先工場とともに、労働時間のより正確な把握にも力を入れました。労働時間を正確に把握した結果、残業代の支払い不備などが発覚したため、D評価の工場の割合が増加しました。一方、上記の取り組みが早期の問題解決につながり、E評価の工場の割合は大幅に減少しました。2018年度に重大な違反があったD評価の工場には、3ヶ月以内の是正を要請したのち、フォローアップ監査を実施し、改善されなかった工場に対しては、取引量を削減する措置を実施しました。また、極めて重大な違反があったE評価の工場には、企業取引委員会での経営・雇用状況を踏まえた審議と、工場の改善意思を確認した上で、取引の見直しや取引停止を実施しました。

労働環境モニタリング結果

評価内容
A評価指摘事項が全くない
B評価比較的リスクの低い違反事項が認められた
C評価人権を侵害する恐れや、現地の法令に違反する労働安全衛生上の違反(例えば、工場従業員にマスクや手袋などの作業用保護具が適切に支給されていないなど)が認められた
D評価人権侵害や安全衛生、賃金や福利厚生上の重大な違反(例えば、非常口の施錠や賃金計算の不備など)が認められた
E評価児童労働や強制労働などの深刻な人権侵害や、安全衛生上の極めて重大な違反が認められた

2018年度の監査における違反項目

2018年度に実施された監査において、「生産パートナー向けのコードオブコンダクト」の項目のうち、「健康と安全性」と「労働時間」に関する違反が多く検出されています。
ファーストリテイリングは、これらの違反の防止と改善のための取り組みを強化していきます。

2018年度の監査における違反項目の内訳

2018年度の監査における違反項目の内訳

健康と安全性
取引先工場へのトレーニングを定期的に実施し、現地法令やファーストリテイリングの労働安全衛生基準、ベストプラクティスなどを説明しています。サステナビリティ部が取引先工場を訪問する際は、防火設備の設置状況を確認し、問題があった場合は早急な改善を求めています。 また、ファーストリテイリングは、縫製工場におけるビルの崩壊や火災事故を防止するためのイニシアティブ「バングラデシュにおける火災予防および建設物の安全に関わる協定(通称:アコード)」に加盟しています。

関連リンク

労働時間
ファーストリテイリングは、サプライチェーンの透明性向上に力を入れており、取引先工場による虚偽報告を禁止しています。取引先工場の労働時間を監査で確認するだけでなく、生産部とサステナビリティ部が協働して、取引先工場の労働時間の削減に取り組んでいます。生産部は、長時間労働が発生する根本原因を取引先工場とともに特定し、改善計画を策定します。その上で、毎月、取引先工場の全従業員の週単位の労働時間実績を収集し、改善進捗を確認しています。
取引先工場は労働時間を削減するために、生産計画立案方法の見直しを行うとともに、生産ラインの自動化、従業員のスキルアップトレーニングの実施、生産性と連動した報酬制度の採用などによる生産効率の向上に取り組んでいます。さらに、取引先工場には、長時間労働が発生する見込みがある場合は、事前に生産部に連絡するよう依頼しており、生産部は可能な限り生産計画の調整などを行い対応します。サステナビリティ部も改善計画の進捗を確認し、必要に応じて取引先工場を訪問して、労働時間の実績を確認しています。さらに、社内で定期的に進捗確認会議を実施し、取引先工場の改善状況を共有しています。
これまでの取り組みを通じて、多くの取引先工場で長時間労働の改善がみられました。今後も、取引先工場の労働時間の適正化に取り組んでいきます。

新規工場の事前モニタリング

新規工場との取引開始プロセスで事前監査を導入

すべての取引先工場に「生産パートナー向けのコードオブコンダクト」を遵守してもらうために、新規に取引を開始する工場に対しては、取引開始前の監査を行っています。新規取引基準を満たすことが確認された場合のみ、取引を開始します。事前監査で重大な指摘が検出された工場には、3ヶ月以内の是正期間が与えられ、フォローアップ監査で評価の改善が見られた場合のみ取引を開始します。極めて深刻な指摘が検出された工場は、取引を開始することができません。2018年度は、事前監査を実施した取引先工場の87.8%と取引を開始しました。

新規工場の承認プロセス

新規工場の承認プロセス

工場ホットライン

取引先縫製工場および素材工場におけるホットライン

ファーストリテイリングは、取引先工場に従業員の苦情に対応するための仕組みの導入と公正労働協会(FLA)の基準などを踏まえた適正な運営を求め、労働環境監査で確認しています。
また、主要な縫製工場および素材工場の従業員や従業員代表が、ファーストリテイリングに直接相談できるホットライン「ワーカー相談プログラム」を、上海、ホーチミン、ダッカ、ジャカルタ、東京などに設置しています。
取引先工場には、工場内の目につきやすい場所にホットラインの案内ポスターを掲示すること、従業員に対して問い合わせ方法を説明すること、通報した従業員に不利益を与えたり、報復行為を行わないことを要請しています。ホットラインの連絡先は現地語で案内されており、また、第三者機関による監査やサステナビリティ部の工場訪問でインタビューを受けた従業員には、連絡先を記載したカードを渡しています。
相談が寄せられた場合、ファーストリテイリングはまず調査を行い、問題点を把握したうえで是正措置を検討します。相談内容は機密情報として扱われます。ファーストリテイリングの従業員は、機密情報の漏洩禁止と適切な情報管理を定める「ファーストリテイリング グループコードオブコンダクト」の遵守を誓約しています。また、相談内容は人権委員会に報告されます。
調査の結果、問題があった場合は、ILO中核的労働基準、現地労働法、「生産パートナー向けのコードオブコンダクト」などをもとに、サステナビリティ部と生産部が中心となって、改善策や対応策を取引先工場に要請し、工場の人権問題や労働環境の改善につなげています。
ホットラインの運用にあたっては、通報者のプライバシーを保護するとともに、報復行為を禁止し、不利益な取り扱いは一切認めていません。また、通報者などの関係者と適切にコミュニケーションをとり、迅速かつ一貫性のある対応をしています。ホットラインが適切に運営されているかの確認を厳密に行っており、例えば、サステナビリティ部の責任者は、相談者の通報後に担当者が迅速に折り返し連絡を行ったか、相談者が納得できる期間内に対応を完了させたか、などを管理しています。

工場ホットライン運用プロセス

工場ホットライン運用プロセス

人権侵害に該当する相談

2018年度にホットラインに寄せられた相談のうち、ILO中核的労働基準、現地労働法、「生産パートナー向けのコードオブコンダクト」の違反にあたるものは19件ありました。そのうち13件が、賃金や労働時間の問題、ハラスメントなどの人権侵害に当たると判断されました。13件のうち9件については、2018年度中に対応が完了しています。
ファーストリテイリングは、人権侵害を未然に防止するため、これまでに受け付けた相談内容を分析しました。相談内容の分析とカントリーリスク分析の結果、特にバングラデシュの取引先工場におけるハラスメントの防止と改善が重要と考え、対策の一つとして、2018年、2つの現地NGOと協働し、取引先工場に苦情処理委員会を設置するパイロットプロジェクトを開始しました。苦情処理委員会は、ハラスメント防止に関する方針やガイドラインを策定し、ハラスメントの調査や調停の役割を担うものです。取引先工場の経営者、労働者、苦情処理委員会の委員に対し、NGOによるトレーニングを実施する予定です。パイロットの結果を踏まえ、バングラデシュにおける苦情処理委員会の仕組みを確立していきたいと考えています。

相談事例

ホットラインで受け付けた事例は、以下の通りです。

  • 事例1
    工場の従業員から、賃金が下がる可能性がある配置換えについての相談がホットラインに寄せられた。ファーストリテイリングが工場と話し合った結果、工場側は、配置換えによる従業員のパフォーマンス低下をサポートするトレーニングプログラムの提供も含め、法令に則った配置換えを実施していることを全従業員に説明した。配置換えを希望しない従業員に対しては、その意向を尊重した対応を行った。また、配置換えなどにより空いたポジションへの人員の補充は、公募により行うこととした。
  • 事例2
    工場の従業員から、退勤時刻を記録した後も作業を続け、生産性ボーナスを増やしている他の従業員について異議が寄せられた。ファーストリテイリングが工場と話し合った結果、工場は労働時間のモニタリングの強化と生産ラインへの送電停止や従業員へのトレーニングなど、退勤後の作業を防止する現場管理体制の強化に取り組んだ。
  • 事例3
    2017年秋、ミャンマーにある取引先工場の従業員がストライキを行った。その後7名の労働組合員が解雇されたため、組合からファーストリテイリングに相談が寄せられた。ファーストリテイリングは解雇された従業員の取り扱いについて対話の場を持つよう、工場経営者と労働組合に働きかけ、最終的に従業員の復職や退職金の支払いなどの解決策が取られた。この件以来、他の従業員から出されていた賃金と諸手当に関する懸念についても話し合いがなされるなど、労使間のコミュニケーションに改善がみられた。工場経営者は、現在、労使協調に関するトレーニングプログラムに参加している。

取引先工場へのトレーニング

取引先工場には、「生産パートナー向けのコードオブコンダクト」や最新の労働環境基準などを正しく理解してもらうために、定期的にトレーニングを実施しています。例えば、労働環境基準の改定ポイント(2018年度は工場内の苦情処理システムに関する基準の強化)、防火安全基準や残業時間に対する正しい賃金計算方法などに関するプログラムを提供しています。2018年度は、9カ国の636工場を対象に、トレーニングを実施しました。

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