HOME > サステナビリティ > サプライチェーンの人権・労働環境の尊重 >生産パートナーのモニタリングと評価

生産パートナーのモニタリングと評価

最終更新日: 2023.09.15
to English page

サプライチェーンにおける人権の尊重や労働関連法令の遵守、労働環境の改善を最優先課題のひとつと考え、「生産パートナー向けのコードオブコンダクト」に基づき、労働環境モニタリングに積極的に取り組んでいます。

労働環境モニタリング

生産パートナーの労働環境モニタリング

ファーストリテイリングは、2004年に「生産パートナー向けのコードオブコンダクト」を策定し、労働環境モニタリングを通じて、すべての縫製工場および主要素材工場の遵守状況を確認しています。労働環境モニタリングの手法として、第三者機関による抜き打ち監査や、アパレル・フットウェア業界共通のフレームワークによるアセスメントを導入しています。いずれの方法でも、ファーストリテイリングの基準に照らして工場の労働環境を評価し、リスクの深刻度に応じた改善活動を行っています。また、新規に取引を開始する縫製工場に対しては、事前監査を実施することで、適正な工場のスクリーニングを行うとともに、早期に労働環境の改善に着手できるようにしています。

「生産パートナー向けのコードオブコンダクト」は、署名した工場に対し、その取引先である上流工程の工場にも適用することを求めています。さらに、サプライチェーン全体における人権デューディリジェンス強化と人権リスク未然防止のため、サプライチェーン全体のトレーサビリティを追求していきます。原材料調達の最上流までを自社で把握し、自社従業員による訪問や第三者機関による監査、第三者認証などを通じて、労働環境の確認を進めていきます。

2015年から、一部の工場では、国際労働機関(ILO)と国際金融公社(IFC)の共同活動プログラム「ベターワーク」による監査も実施しています。アパレル業界で広く導入されているベターワークの監査により、工場は監査の重複を減らすことができ、労働環境の改善により注力することができます。

2015年、ファーストリテイリングは公正労働協会(FLA)に加盟しました。FLAの労働環境基準の導入のほか、ファーストリテイリングの労働環境モニタリングプログラムの改善、およびFLA加盟企業や工場、市民団体などのステークホルダーとの対話について、FLAからの支援を受けています。2019年2月、ファーストリテイリングの労働環境モニタリングプログラムは、FLAに認定されました。これは、当社のサプライチェーンにおいて、FLAの基準を満たすための仕組みや手続きが展開されていることを意味します。

関連リンク

サステナビリティ部の工場労働環境改革チーム(以下、サステナビリティ部)は、ファーストリテイリングの全ブランドの生産パートナーに対する労働環境モニタリングと、サプライチェーンの人権・労働環境における課題への対応と解決のための取り組みを行っています。サステナビリティ部の責任者は、取り組みの計画や進捗の管理を行い、サステナビリティ担当役員への報告を行います。サステナビリティ部は、各地の生産パートナーの経営者や従業員、その他の個人や団体と、現地の言語で適切なコミュニケーションを行うため、本社のある日本だけではなく、中国、ベトナム、インドネシア、バングラデシュなどの重要な生産国にも拠点を置いています。役員、部の責任者および担当者は、人権方針を推進する活動の一環として行われる労働環境改善を含む取り組みの成果に対して、年に2回業績評価を受け、その評価に応じて報酬が決まります。

労働環境モニタリングの仕組み*

労働環境モニタリングの仕組み

*ベターワークの監査を実施している工場の評価・改善フローは、この限りではありません。

2020年9月より、工場による自主的な労働環境マネジメントプロセスを強化するため、モニタリングプログラムを段階的に変革しています。従来の、第三者機関による抜き打ち監査から、業界共通のフレームワーク「SLCP:Social and Labor Convergence Program(労働環境基準統合プログラム)」の評価ツールを通じて、工場が主体的に労働環境のリスクや課題を把握し、改善する仕組みへの移行を進めています。2023年度末までに、全ての縫製工場と、主要素材工場にSLCPを導入します。従来、一つの工場に対して複数のブランドが独自の監査を行うことで過剰な負担が生じ、効率的な改善が妨げられるといった課題がありました。SLCPは、業界共通のフレームワークを作成し、提供している団体です。工場は、SLCPの評価ツールによる自己評価を行い、第三者機関による検証(第三者検証)を受け、改善に取り組みます。評価ツールには、労働環境の各評価項目について、方針、社内体制、手順書とその周知、実行状況のレビューと改善など、労働環境マネジメントシステムを強化するための指標が多く盛り込まれています。監査を中心とする従来のモニタリングプログラムでは、監査の指摘事項の是正が活動の中心になりがちでしたが、今後は、工場が自社の仕組みを通じて労働環境の課題を把握し、改善を実行するサイクルの構築が期待されます。また、工場は、評価ツールのデータを複数のブランドと共有することができるため、年間の監査数が減少します。

各工場によるSLCPの評価、検証などの一連の取り組みは、サステナブル・アパレル連合(SAC)が開発したHiggインデックスの一つである「工場労働環境モジュール(FSLM: Facility Social and Labor Module)」のプラットフォームを通じて行われます。プラットフォームでは、工場、ブランドの双方が各工場の評価結果をスコアで確認できます。これにより、業界平均との比較や、年次比較による分析に加え、本質的な問題や優先課題がより明確になり、改善の取り組みに活かすことができます。

関連リンク

SLCPを通じた定例アセスメントは原則毎年実施されます。工場による自己評価および第三者検証は、SLCPが定めた規定に則って行われます。第三者検証では、検証機関が工場を訪問し、工場従業員、労働組合、従業員代表、経営者層などへのインタビュー、労働協約や諸記録のレビュー、現場視察による労働安全衛生状況などの確認を行います。ファーストリテイリングは、第三者検証を受けたアセスメントレポートを受け取り、「生産パートナー向けのコードオブコンダクト」に照らして評価します。
ファーストリテイリングは、著しく人権を侵害する問題に対して、ゼロトレランス方針を採用しています。ゼロトレランス項目に該当する主な事象は、児童労働、強制労働、抑圧とハラスメント、差別、組合結成の妨害、最低賃金未達、虚偽報告などですが、これらは最も深刻な問題であり、検出された場合は、直ちにその問題を是正することが求められます。また、労働環境マネジメントシステムの不備により発生する、残業代の支払いや法定休暇の付与、契約書の管理などにおける深刻な問題を、重大項目として定めています。重大項目が検出された場合は、工場に早期の改善を促します。その後、深刻度に応じた一定期間内に、ファーストリテイリングの従業員が工場を訪問し、適切なマネジメントシステムを導入することで、徹底的な再発防止を求めています。次回の定例アセスメントで、問題の再発を防止する仕組みが構築されたことを確認します。
ゼロトレランス項目が検出された場合、もしくは、重大項目が2回連続して定例アセスメントで検出された場合は、取引見直しの可否を判断するため、企業取引倫理委員会に上程されます。同時に、工場と問題の解決策を検討し、改善が完了するまで状況を確認します。企業取引倫理委員会では、当該工場の経営・雇用状況も踏まえた審議が行われ、取引の見直しを生産部門に勧告します。その後のフォローアップ監査で問題の是正が確認されなかった場合は、取引停止となります。ファーストリテイリングは、取引の見直しや停止に相当する重大な人権侵害が発生しないよう、工場とともに未然防止に努めています。

• 主なゼロトレランス項目:
児童労働、強制労働、抑圧とハラスメント、差別、建物の安全性欠如、組合結成の妨害、ストライキの不当な解散、苦情を申し立てた従業員に対する報復行為、賃金の不払い、最低賃金未達、火災などの緊急事態への対策不備、虚偽報告などの透明性に関する問題、賄賂、工場の監査対象範囲の申告漏れ、未承認の委託先や家内労働者への外注

• 主な重大項目:
残業代の支払い不足、法定休暇を付与していない、休業中の賃金不払い、社会保険料の未納付、長時間労働、法令に従った休憩を与えていない、雇用契約の未締結や内容不備

また、労働環境モニタリングの結果に基づき、G1~G5のグレードで工場を評価し、毎年結果を開示しています。「生産パートナー向けのコードオブコンダクト」を遵守し、指摘事項が全くない工場はG1評価となります。比較的リスクの低い問題(マスクや手袋などの作業用保護具が適切に使用されていない、労働安全に関するトレーニングを全従業員に実施していないなど)が認められた工場はG2評価となります。人権を侵害する恐れのある問題(避難経路に障害物がある、避難訓練を定期的に実施していない、出退勤時刻の記録不備など)が認められた場合は、G3評価となります。重大項目が認められた場合は、G4評価、ゼロトレランス項目が認められた場合は、G5評価となります。労働環境モニタリング結果についてはこちらをご覧ください。

ファーストリテイリングのモニタリングプログラムマニュアルと生産パートナー向けガイドブックには、改善措置の実行プロセス、定例アセスメント監査後の改善タイムライン、根本原因の分析方法などが規定されています。ファーストリテイリングは、各工場で問題を未然に防止するための具体策が確実に策定され、実行されるよう、工場に対して、公正労働協会(FLA)の原因分析ガイダンスをはじめとするさまざまな資料提供や支援を行っています。全体の監査結果や特に指摘が多い項目については、ウェブサイトで開示するだけではなく、各ブランドの調達関連部署や取引先に共有しています。

モニタリングプログラムの改善

定例アセスメント結果を分析することで、労働環境モニタリングプログラムの効果測定を行っています。分析結果に基づき、労働安全衛生、賃金と福利厚生、労働時間などの重点領域における指摘件数の削減とスコアアップを目標として設定しています。生産パートナーの従業員がファーストリテイリングに直接相談できるホットラインも設置し、アセスメント以外にも課題を特定する方法を導入しています。少なくとも年に2回、緊急度の高い課題、国や地域特有のリスク、高リスク工場の改善支援状況など、取り組みを通じて把握した傾向やリスクが経営陣に報告され、必要に応じて人権委員会やサステナビリティ委員会に上程されます。上記およびFLAによる認定の過程で得た意見や助言、また、ベターワークなど外部団体との取り組みなどの過程で得た気づきは、検討のうえ、プログラムの改善に反映されます。例えば、生産パートナーの従業員向けホットラインに寄せられた意見を分析し、労働環境モニタリングプログラムの改善に反映することによって、工場経営者が自ら問題を発見、調査、解決できるよう、工場内の苦情処理メカニズムの強化に努めています。

さらに、国やブランドごとに、定例アセスメントの合格・不合格数や違反傾向を分析しています。こうした傾向分析とあわせて、バングラデシュ、カンボジア、中国、インドネシア、インド、ベトナムといった国ごとの課題を整理し、改善策を策定しています。各国の課題の優先順位は、ステークホルダーエンゲージメントやビジネス戦略との整合を図りながら設定しています。

外注先工場の労働環境モニタリング

ファーストリテイリングは、「生産パートナー向けのコードオブコンダクト」において、ファーストリテイリングの事前承認を得ていない工場への生産委託を禁止しています。縫製工場には、生産工程の一部を委託する外注先工場に対して第三者機関による監査を実施し、ファーストリテイリングから承認を得るよう義務づけています。外注先工場は毎年監査を受け、ゼロトレランス項目が検出された場合は、ファーストリテイリングと合意した期間内に是正し、再監査を受けて合格する必要があります。
ファーストリテイリングは、縫製工場の定例アセスメントにおいて、承認を受けた外注先工場のみを使用しているかを確認しています。

新規工場の事前モニタリング

新規工場との取引開始プロセスで事前監査を導入

新規に取引を開始する縫製工場に対しては、取引開始前の監査を行っています。新規取引基準を満たすことが確認された場合のみ、取引を開始します。事前監査でゼロトレランス項目が検出された工場は、フォローアップ監査で改善が確認できた場合のみ、取引を開始します。2022年度は、事前監査を実施した工場の91.2%と取引を開始しました。

新規工場の承認プロセス

新規工場の承認プロセス

労働環境モニタリング結果

労働環境モニタリング結果

2022年度のモニタリング結果は以下のとおりです。

G5評価の工場で確認されたゼロトレランス項目は、非常口の数の不足、火災報知器の未設置、従業員の採用における差別的な条件などです。G5評価の9工場全てと改善計画、再発防止策を合意し、順次改善の完了を確認しています。また、G4評価の工場で確認された主な重大項目は、法定休暇を付与していない、残業代などの支払い不足、長時間労働、退職金の支払い不足・不備、雇用契約の未締結や内容不備といった問題でした。G4評価の工場についても改善計画を合意し、ファーストリテイリングの従業員が工場を訪問して改善進捗を確認しています。

縫製工場モニタリング結果

縫製工場モニタリング結果

評価 内容
G1評価 指摘事項が全くない
G2評価 比較的リスクの低い問題(例えば、マスクや手袋などの作業用保護具が適切に使用されていない、労働安全に関するトレーニングを全従業員に実施していないなど)が認められた
G3評価 人権を侵害する恐れのある問題(例えば、避難経路に障害物がある、避難訓練を定期的に実施していない、出退勤時刻の記録不備など)が認められた
G4評価 人権侵害や重大なコードオブコンダクト違反(残業代の支払い不足、長時間労働、雇用契約の内容不備など)が認められた
G5評価 児童労働や強制労働、最低賃金未達など深刻な人権侵害や、火災などの緊急事態への対策不備(非常口の施錠など)といった極めて重大なコードオブコンダクト違反が認められた

2022年度の監査における指摘項目

2022年度に実施された監査において、「生産パートナー向けのコードオブコンダクト」の項目のうち、「健康と安全性」と「労働時間」に関する指摘が多く検出されました。指摘が挙がった工場には、再発を防止する管理システムの構築を要請しました。

2022年度の監査における指摘項目

労働環境改善の取り組み

労働環境モニタリングでは、「生産パートナー向けのコードオブコンダクト」の項目のうち、「健康と安全性」と「労働時間」に関する指摘事項が多く検出されています。改善に向けて、以下の取り組みを行っています。

健康と安全性
生産パートナーへのトレーニングを定期的に実施し、現地法令やファーストリテイリングの労働安全衛生基準、ベストプラクティスなどを説明しています。サステナビリティ部が工場を訪問する際は、防火設備の設置状況を確認し、問題があった場合は早急な改善を求めています。健康と安全性の領域で見つかる問題は、防火安全や労働安全衛生、化学物質管理など、多岐にわたります。工場には、それぞれの問題への対処を求めるとともに、労働安全衛生の管理体制構築、防火対策や建物安全性の定期診断の導入といった、問題を未然に防ぐための仕組みの構築を求めています。

また、ファーストリテイリングは、縫製工場におけるビルの崩壊や火災事故を防止するためのイニシアティブ「繊維・縫製産業労働者の健康と安全のための国際協定(旧バングラデシュにおける火災予防および建設物の安全に関わる協定(通称:アコード))」に加盟しています。

関連リンク

労働時間
ファーストリテイリングは、サプライチェーンの透明性向上に力を入れており、工場による虚偽報告を禁止しています。工場の労働時間を定例アセスメントで確認するだけでなく、生産部とサステナビリティ部が協働して、工場の過度な労働時間の撲滅に向けて取り組んでいます。生産部は、主に縫製工場について、過度な労働時間が発生する根本原因を特定し、改善計画を策定します。その上で、毎月、工場の全従業員の週単位の労働時間実績を収集し、改善進捗を確認しています。
工場は労働時間を削減するために、生産計画立案方法の見直しを行うとともに、生産ラインの自動化、従業員のスキルアップトレーニングの実施、生産性と連動した報酬制度の採用などによる生産効率の向上に取り組んでいます。さらに、工場には、長時間労働が発生する見込みがある場合は、事前に生産部に連絡するよう依頼しており、生産部は可能な限り生産計画の調整などを行い対応します。
サステナビリティ部は、改善計画の進捗を確認し、必要に応じて工場を訪問して、労働時間の実績を確認しています。さらに、社内で定期的に進捗確認会議を実施し、工場の改善状況を共有しています。工場と密にコミュニケーションを取りながら改善状況を確認するとともに、労働時間が削減されることによって工場従業員の収入が損なわれないよう、賃金と福利厚生を維持する施策について他社の好事例の共有などを行っています。

また、ファーストリテイリングは、工場における労働環境を守り、工場従業員の人権を尊重するため、適切な手順に従って発注を行うことを規定した「責任ある調達方針」を策定しました。責任ある調達を推進するために、主要ブランドの調達業務に沿ったガイドラインも作成しています。主要取引先に対して年次調査も行っており、当社の発注が工場の労働時間の改善を遅らせるような過度な負担につながっていないか、ヒアリングを行っています。工場からのフィードバックは、生産部とサステナビリティ部間で確認し、残業時間の根本原因を解決するための施策を検討します。

これまでの取り組みを通じて、多くの工場で長時間労働の改善がみられました。今後も、工場の労働時間の適正化に取り組んでいきます。

苦情処理メカニズム

縫製工場および素材工場における苦情処理メカニズム

縫製工場および素材工場における苦情処理メカニズム
ファーストリテイリングは、工場に対し、従業員の苦情に対応するための仕組みの導入と公正労働協会(FLA)の基準などを踏まえた適正な運営を求めており、労働環境モニタリングで確認しています。ファーストリテイリングの生産パートナー向けガイドブックでは、苦情処理メカニズムの要件として以下を定めています。

  • 苦情処理に関する手続きを文書化し、苦情処理の体制とガイドライン、また、苦情を申し立てた従業員に対する処罰や報復の禁止などについて、明確に定める。
  • 機密保持を前提とし、匿名で通報できる窓口を少なくとも1つ設ける。
  • 全ての従業員が、苦情処理メカニズムと関連規定を理解するための施策を実施する。管理者や一般従業員を含む全ての従業員に対し、導入および定期的な研修を実施し、その記録を保管する。また、知識の習得度をアンケートやインタビューなどで確認し、その記録を保管する。
  • 苦情に対して適時に対応するため、苦情処理の状況および結果を記録する。
  • 国と地域の法律・規範の変化や、内部・外部監査結果に応じて、苦情処理に関する全ての方針や手順書を適宜見直す。

これらの要件の遵守状況については、労働環境モニタリングで確認しています。

国連の「ビジネスと人権に関する指導原則(UNGP)」では、有効な苦情処理メカニズムの8要件を定義しています。8要件とは、「正当性がある」「アクセスすることができる」「予測可能である」「公平である」「透明性がある」「権利に矛盾しない」「継続学習の源となる」「エンゲージメントおよび対話に基づく」です。ファーストリテイリングは、工場に対し苦情処理メカニズムのガイドラインを配布しており、その中でこの8要件を満たすよう求めています。

ファーストリテイリングによる工場従業員向けのホットライン
主要な縫製工場および素材工場の従業員や従業員代表が、匿名かつ現地語でファーストリテイリングに直接相談できるホットラインを、上海、ホーチミン、ジャカルタ、ダッカ、東京などに設置しています。 工場には、工場内の目につきやすい場所にホットラインの案内ポスターを掲示すること、従業員に対して問い合わせ方法を説明すること、通報した従業員に不利益を与えたり、報復行為を行わないことを要請しています。ホットラインの連絡先は現地語で案内されており、また、第三者機関による監査を実施する場合やサステナビリティ部の訪問でインタビューを受けた従業員には、連絡先を記載したカードを渡しています。

相談が寄せられた場合、ファーストリテイリングは、原則24時間以内に、携帯電話のショートメッセージ機能や電子メール、電話などの、現地の状況に応じた方法で相談者に回答します。まず内容をレビューし、調査や解決の進め方を手続きに従い決定します。そして調査を行い、問題点を把握したうえで、是正措置を検討します。調査の結果、人権侵害に該当すると判断された場合は、ILO中核的労働基準、現地労働法、「生産パートナー向けのコードオブコンダクト」などをもとに、サステナビリティ部と生産部が中心となって、対応策や改善策を工場に要請します。対応について工場と合意した後は、対応策の内容および工場から同意を得ている旨、相談者に通知します。相談者には、対応策が実行されない場合や、再度問題があった場合は、ファーストリテイリングに連絡をするように伝えます。対応策が最終的に実行されたか否かは、サステナビリティ部の工場訪問で確認します。サステナビリティ部が確認した結果、改善が不十分と判断した場合は、企業取引倫理委員会に当該工場との取引見直しを上程します。取引見直しの場合も、工場へ働きかけ、対応策を実施することで、相談者の救済に向けて取り組んでいます。

また、ホットラインの相談内容や対応は少なくとも年に1回以上定期的に人権委員会に報告され、人権委員会は運用プロセスの改善案などの提言を行います。特に深刻な案件については、対応内容への助言や予防策の提言を行います。サステナビリティ部は、人権委員会の提言を踏まえ、運用プロセスの見直しを行います。相談内容の深刻度や複雑性などによって解決までに要する時間は異なりますが、外部機関へ調停を要請する場合や、再発防止のための仕組みを工場で構築するために数カ月かかる場合などを除き、可能な限り短期間で、遅くとも数カ月以内での解決に努めています。

相談内容は機密情報として扱われます。ファーストリテイリングの従業員は、機密情報の漏洩禁止と適切な情報管理を定める「ファーストリテイリンググループ コードオブコンダクト」の遵守を誓約しています。ホットラインの運用にあたっては、通報者のプライバシーを保護するとともに、報復行為を禁止し、不利益な取り扱いは一切認めていません。また、通報者などの関係者と適切にコミュニケーションをとり、迅速かつ一貫性のある対応に努めています。ホットラインが適切に運営されているかの確認を厳密に行っており、例えば、サステナビリティ部の責任者は、相談者の通報後に担当者が迅速に折り返し連絡を行ったか、相談者が納得できる期間内に対応を完了させたか、などを管理しています。

UNGPの8要件に照らしてホットライン機能の自己評価を行ったところ、特に、「アクセスすることができる」「公平である」に課題があることがわかりました。よりホットラインを認知してもらうため、工場で移住労働者が働いている場合は、母語でホットラインを案内できるよう、ポスターを多言語で作成しています。また、相談者が専門的な解決を必要としている場合は、現地の専門家から直接助言を得られる仕組みを整えるため、国際移住機関(IOM)の助言のもと、移住労働者が、工場での勤務時もしくは帰国時に当社のホットラインを利用し、支援のできるNGOの選定を行っています。

また、2020年より、当社のホットラインの改善に向けた施策を検討するため、労働組合員などの従業員代表を中心とする、工場従業員からの意見聴取を行っています。これまで、工場による定期的な説明やポスターが、ホットラインの周知のために有効である、などのコメントが得られています。工場による定期的な説明の強化や、ポスターの掲出状況の再確認を実施し、認知度のさらなる向上に努めていきます。

工場ホットライン運用プロセス

工場ホットライン運用プロセス

ファーストリテイリングホットラインの運用プロセス

人権侵害に関する相談

2022年度にホットラインに寄せられた相談のうち、ILO中核的労働基準、現地労働法、「生産パートナー向けのコードオブコンダクト」の違反にあたるものは33件ありました。33件のうち28件については、2022年度中に案件をクローズしています。残りの5件についても改善に向けて対応しています。
ファーストリテイリングは、人権侵害を未然に防止するため、これまでに受け付けた相談内容を分析し、改善につなげています。例えば、賃金と諸手当に関する相談の多くは、工場従業員にとって、賃金の制度や計算方法、退職金の支払いやその手続きが不明瞭であることが主な原因であったため、工場から従業員への十分な説明の実施を促しました。
また、相談件数が多い工場には、工場が運営する苦情処理システムを強化するためのトレーニングの実施や、工場による改善計画立案・実行プロセスを確立するサポートを行い、件数の減少につなげました。

2022年度ホットライン相談案件*の内訳
*寄せられた相談のうち、ILO中核的労働基準、現地労働法、「生産パートナー向けのコードオブコンダクト」の違反に該当するもの

2022年度ホットライン相談案件の内訳

相談事例

ホットラインその他の手段を通じて当社に相談のあった事例は、以下の通りです。

  • 事例1(カンボジア)
    2021年、取引先工場が工場の一部の施設を新しい会社として登記する際、従業員代表から、この当該施設で働く従業員が解雇されてしまうのではないか、という懸念の声が寄せられた。ファーストリテイリングは、外部の調停者の支援のもと、労働組合および従業員代表と工場経営者との対話を促した。工場経営者は、新会社登記にあたり従業員の解雇はしないこと、新しい会社でも従前の権利が保障されることを丁寧に説明し、従業員の理解を得た。その後、工場経営者は、労働組合との週次会議を開始し、労働条件などに関する協議の場としている。
  • 事例2(ベトナム)
    2022年、工場従業員より、上司に退職希望を伝えたが、さらに数カ月仕事を続けるように言われているとの相談が寄せられた。ファーストリテイリングが現場調査をしたところ、工場は新型コロナウイルス感染拡大の影響による人手不足に直面しており、退職防止の取り組みを実施した結果、生産ラインリーダーが従業員の自由な退職を認めないという状況が生まれていることがわかった。ファーストリテイリングは、工場に対し、従業員の法的権利を侵害しないことと退職防止の取り組みの改善を求めた。当該従業員は、希望した時期で退職することになり、工場経営層および人事部は退職防止の取り組みと退職手続きの見直しを行い、従業員に通達の上、トレーニングを実施した。
  • 事例3(バングラデシュ)
    2022年、生産ラインリーダーがその部門の女性従業員に対して指示をする際、暴言を発したり、体を触ったりするとの相談が寄せられた。ファーストリテイリングの現場調査の結果、事実であることが確認された。ファーストリテイリングは、工場に対し調査委員会の設置および調査報告書の提出を要請した。調査委員会は、事実であることを確認し、当該ラインリーダーに顛末書を提出させた上で、改善を誓約させた。調査委員会は、今後の言動の改善状況を注視していくこととしている。通報者には結果を伝え、工場の対応に納得したとの回答があった。

人権侵害の未然防止と業界全体の課題への取り組み

人権デューディリジェンスやステークホルダーエンゲージメントを通じて提起された様々な人権侵害のリスクについて、地域やグローバルの専門家とともに、未然防止策を実施しています。

児童労働の防止

児童労働は、子どもたちの健全な成長を阻害するとともに、教育の機会を奪うことにもなる深刻な社会課題です。ファーストリテイリングは、「子どもの権利とビジネス原則」などに基づき、児童労働の撤廃と防止に取り組んでいます。
サプライチェーンにおいては、児童労働防止のための施策を講じるよう生産パートナーに求めています。「生産パートナー向けのコードオブコンダクト」に児童労働の禁止を明記し、労働環境モニタリングでは、工場が従業員を採用するときに、信頼できる身分証明書を用いて年齢をチェックしているかなどを確認しています。

責任ある雇用

ファーストリテイリングは、人身取引を含む強制労働を絶対に許容しない方針を明確にしています。とりわけサプライチェーンにおいて、国や地域を越境して働く移住労働者は差別的な処遇を受けやすい立場にあります。「すべての移住労働者及びその家族の権利の保護に関する国際条約」を尊重し、こうした立場にある移住労働者が雇用時や雇用中に不当に扱われていないか確認するとともに、雇用側の縫製工場や素材工場に対するトレーニングなどの取り組みを強化していきます。
また、2019年2月、ファーストリテイリングは、公正労働協会(FLA)とアメリカン・アパレル・フットウエア協会(AAFA)が2018年10月に策定した「責任ある雇用」に関する業界コミットメントへの支持を表明しました。これは、労働者による雇用手数料の負担など、グローバルなサプライチェーンにおける移住労働者に対する強制労働のリスクを低減するための、業界をあげたコミットメントです。全世界の縫製工場、素材工場工場と協力して、以下の状況が実現されるよう取り組みます。

  • 労働者が雇用手数料を負担しないこと
  • 労働者がパスポートを自己所有し、移動の自由が確保されていること
  • 採用前に基本的な労働条件が通知されていること

「責任ある雇用」のコミットメント実行に向けて、2019年9月、ファーストリテイリングは、国際移住機関(IOM)と、移住労働者の採用および雇用の条件をより良く理解し課題に対処していくための新しい連携プロジェクトを開始しました。IOMは、移住労働に関わる課題解決の第一人者として、各種の取り組みを行っている政府間機関です。このプロジェクトの目的は、ファーストリテイリングのサプライチェーンの管理向上と、移住労働者の人権と労働権の保護に関する取り組みを強化することでした。移住労働者を採用している日本、マレーシア、タイの縫製工場と素材工場の雇用慣行についての調査から開始し、その結果をもとに、移住労働者を守るための原則と具体的な対応策を工場の方針やガイドラインに盛り込みました。

2020年には、IOM、FLA、ASSC*の支援のもと、「ファーストリテイリング 生産パートナー向け責任ある雇用に関する基準とガイドライン」と、工場における遵守状況を確認するための評価手法を策定しました。

「ファーストリテイリング 生産パートナー向け責任ある雇用に関する基準とガイドライン」には、以下の基本原則が明記されています。

*ASSC:移住労働者の強制労働のリスク低減などに取り組む一般社団法人ザ・グローバル・アライアンス・フォー・サステイナブル・サプライチェーン

  • 労働者は雇用手数料を負担しない
  • 労働者は雇用契約書に署名する前に、基本的な雇用条件を理解している
  • 労働者はパスポートなどの身分証明書や滞在に必要な書類を自分で管理する

また、工場に対する以下の要求事項と、各事項を遵守するための詳細なガイドラインも示しています。

  • 方針と手続の作成:
    工場は、移住労働者に対する人権侵害を防止するため、「移住労働者は採用にかかわる費用を一切支払わない」などの基本原則を網羅した方針を作成する。人事部などの業務が方針に則って行われるよう、責任者や担当者を配置し、関連手続きを整備する。
  • 人材あっせん業者に対する審査の実施:
    工場は、人材あっせん業者が法令やガイドラインを満たしているかを確認するため、継続的に審査を行う。審査では、人材あっせん業者が候補者に対し、理解可能な言語で、職務内容や賃金、労働時間などの雇用条件を正しく説明しているかなどを確認する。
  • 改善計画の立案と実行:
    法令やガイドラインへの違反が発見された場合、工場は、人材あっせん業者も含めた改善計画を立て、実行する。人材あっせん業者が審査に非協力的であったり、指定された期間内に違反の改善ができない場合、工場は契約関係を終了する。
  • 救済措置へのアクセスの保証および救済の実行:
    工場は、移住労働者が利用できる苦情処理メカニズムを提供し、周知する。人権侵害が確認された場合は、改善と労働者の救済を実行する。

2020年3月以降、日本、マレーシア、タイの縫製工場と主要素材工場に対し、ガイドラインの周知と理解促進のための説明会を継続的に行っています。工場の管理システムも強化されており、ガイドラインに則った運用の徹底、関連法令についての社内トレーニングなどを主体的に実施しています。

2022年1月からは、ガイドラインに則って、外国人移住労働者に特化した労働環境監査を開始しました。当該監査は縫製工場および主要素材工場を対象に実施しています。移住労働者の採用プロセス・労働環境に関するアセスメントに先立ち、生産パートナーから情報を収集し、労働者の構成や、送り出し国および受け入れ国での採用プロセスの管理方法について理解し、現地アセスメントにおける優先課題を絞り込みます。現地アセスメントには、現場視察、採用、賃金・福利厚生、苦情処理などに関する方針、給与明細、雇用契約書などの書類レビュー、経営者や労働者へのインタビューが含まれます。生産パートナーが労働者に住居を提供している場合は、住居も評価対象となります。人権侵害リスクの高い状況が確認された場合、またはアセスメントの過程で生産パートナーが誠実な対応を欠いたと疑われる場合(虚偽の記録、二重帳簿、労働者の回答を誘導するなど)、安全な場所で労働者と個別に話をするための工場外のインタビューや、抜き打ち訪問によるフォローアップなどを追加で実施します。工場に対し、年に1回監査を実施し、移住労働者が雇用手数料やその他採用にかかわる費用を支払った場合に払い戻しがされていないなどのゼロトレランス項目が見つかった場合、もしくは前年の監査で見つかった重大項目に改善が見られなかった場合は、企業取引倫理委員会に上程されます。委員会では、当該工場の経営・雇用状況も踏まえた審議が行われ、取引の停止や見直しを生産部門に勧告します。同時に、工場と問題の解決策を検討し、フォローアップ監査で改善状況を確認します。問題の是正が確認されなかった場合は、取引停止となります。
ゼロトレランス項目や重大項目以外の問題が見つかった場合、工場は期限付きの改善計画書をファーストリテイリングと合意し、改善活動を実行することが求められます。改善状況は翌年の監査で確認されます。
これまで、縫製工場および主要素材工場において、移住労働者による雇用手数料(渡航費用やパスポート更新費用など)の負担、移住労働者が契約書の雇用条件を渡航前にきちんと理解していないといった、基本原則に反する問題が数件見つかっています。これらの問題については、工場と改善計画を合意し、改善完了に至るまで進捗を確認しています。

2022年、IOMとのパートナーシップに基づいて、生産パートナーがガイドラインを効果的に実施できるようにするためのトレーニングが実施されました。また、移住労働者の送り出し国の人材斡旋会社への働きかけも開始しました。

  • 2022 年 8 月、ファーストリテイリングは、IOMの協力を得て、日本の生産パートナー向けにガイドラインの導入方法についてのトレーニングを実施しました。このトレーニングにより、採用プロセスにおける移住労働者の人権侵害リスクの特定方法や、採用担当者の慣行に問題がないかを評価する方法について、工場経営者の理解が進みました。
  • 2022 年 8月から 9 月にかけて、IOM は、送り出し国であるスリランカとネパールの人材斡旋会社に対し、責任ある雇用の基礎トレーニングを実施しました。トレーニングを通じて、対象の人材斡旋会社が、ファーストリテイリングの責任ある雇用に関する基準とガイドラインを理解し、遵守していることを確認しました。同様のトレーニングを、2022年12月、ベトナムでも実施する予定です。

2022 年末に向けて、ファーストリテイリングは、IOMとともに、ネパールとベトナムの市民社会やコミュニティに根ざした組織との対話を行い、移住労働者の理解をさらに深めていきます。

抑圧とハラスメント

抑圧とハラスメントは、労働環境や労働者の精神的・肉体的な健康状態に悪影響を及ぼします。健康的な労働環境の実現のために、労働者が抑圧とハラスメントを受けることなく働ける環境を作ることは極めて重要です。ファーストリテイリングはいかなる形の抑圧・ハラスメントも容認しません。「生産パートナー向けのコードオブコンダクト」にも、従業員の尊厳を守ることが明記されています。
ファーストリテイリングのホットラインでこれまでに受け付けた相談内容と、カントリーリスクを分析したところ、特にバングラデシュの工場におけるハラスメントの防止と改善が重要事項であることが判明しました。対策の一つとして、2019年より、現地NGOのアワジ財団(Awaj Foundation)、チェンジ・アソシエーツ社(Change Associates Ltd.)と協働し、工場に苦情処理委員会を設置するプロジェクトを進めています。苦情処理委員会は、5人以上から構成され、委員長および委員の過半数を女性とし、委員のうち2名は工場外から招へいする必要があります。隔月で開催され、ハラスメント防止に関する方針やガイドラインを策定し、ハラスメントの調査や調停の役割を担います。

2022年度、新たに取引を開始した8工場の経営者、労働者、苦情処理委員会の委員に対し、ファーストリテイリングによるトレーニングが実施されました。2021年度にトレーニングを実施した29工場では、1工場につき2人育成したトレーナーに対し、課題解決に焦点を当てたトレーニングを実施しました。トレーナーは、工場の中間管理職および全従業員に対して、ジェンダー平等や委員会に関するトレーニングを行いました。

2022年度末までに、バングラデシュの全ての縫製工場が、ハラスメント禁止方針とガイドライン、委員会運営の手続きを策定し、苦情処理委員会を設置しました。2022年度は、計25件の苦情が、委員会の調査と調停を経て解決されました。また、ファーストリテイリングは、従業員のハラスメントに対する意識向上を目的とした工場内アナウンスを作成し、工場訪問時に音声が流されているか確認しています。このアナウンスは、ハラスメントの定義をシンプルかつ、わかりやすい言葉で伝え、従業員が相談案件を誰に報告すべきか、どのような対応が期待できるかといったことも説明しています。さらに、ファーストリテイリングは、委員会が適切に機能しているかについても評価を行いました。これは、工場内の方針や規程、トレーニングや苦情処理プロセスといったマネジメントシステムについて、整備状況や運用実態を評価するものです。

賃金と福利厚生および生活賃金

賃金と福利厚生および労働時間に関する監査指摘事項に対して、目標を掲げ、改善に取り組んでいます。サステナビリティ部は、工場と密にコミュニケーションを取りながら改善状況を確認するとともに、労働時間が削減されることによって工場従業員の収入が損なわれないよう、賃金と福利厚生を維持する施策について他社の好事例の共有などを行っています。
サプライチェーンで働く人々のより豊かで安定した暮らしの実現に向けて、ファーストリテイリングは最低賃金の保障だけではなく、生活賃金の実現を目指しています。 ファーストリテイリングは、「生産パートナー向けのコードオブコンダクト」の中で、賃金は、衣食住などの基本的なニーズを満たしたうえで、相応の社会生活が営める水準であるべきとしています。
ファーストリテイリングが2015年に加盟した公正労働協会(FLA)は、公正な生活賃金の実現にコミットしています。 FLAは、グローバル生活賃金連合の「アンカー計算法」に基づき、さまざまな団体の手法を用いて工場の賃金データの収集とベンチマーキングを行うことにより、各地域の工場従業員ニーズの理解を進めています。ファーストリテイリングは、FLAと協働し、工場の賃金支払い状況を分析したうえで、生活賃金と実際の賃金に差があった場合の対応方法を模索していきます。

生活賃金の実現に向けたファーストリテイリングの目標や取り組みについての詳細は、下記リンク先をご参照ください。

新型コロナウイルスによる影響への対応

新型コロナウイルス感染症の拡大による工場従業員のリスクを軽減するため、ファーストリテイリングは、特に労働環境における安全と安心のための対策に力を入れています。工場従業員を感染リスクから守るため、工場内での手洗いや検温、マスクの着用などを工場に求めています。また、縫製工場において生産済みの商品や生産を開始している商品に対し、事前に合意した条件に則った支払いを確約するなど、生産パートナーの支援を行うと同時に、工場が休業を余儀なくされた場合の従業員への補償などに関するガイドラインの提供も行いました。さらに、工場従業員が待遇と休業補償などの権利を侵害されるといった不当な扱いを受けた際に、ファーストリテイリングに直接通報できるホットラインを設置しています。インドやバングラデシュなどの感染拡大が深刻な国や地域の工場では、感染対策と衛生管理状況のアセスメントや工場従業員インタビューを実施しました。発見された課題に対しては、工場への改善指導と改善状況の確認を行いました。
また、ファーストリテイリグは、新型コロナウイルス感染症の悪影響を緩和し、アパレル業界における持続可能な社会保護システムを確立するために、125以上のブランドが参加するILOのコール・トゥ・アクション(行動呼びかけ)「COVID-19: Action in the Global Garment Industry」への賛同を表明しています。

関連リンク

生産パートナーへのトレーニング

生産パートナーには、「生産パートナー向けのコードオブコンダクト」や最新の労働環境基準などを正しく理解してもらうために、定期的にトレーニングを実施しています。例えば、労働環境基準の改定ポイント、防火安全基準や残業時間に対する正しい賃金計算方法などに関するプログラムを提供しています。2022年度は、対象となる546工場のうち、85%に相当する19カ国465工場を対象に、トレーニングを実施しました。

ページトップへ