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ステークホルダーエンゲージメント

最終更新日: 2023.03.31
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国際的なNPOやNGOなどのステークホルダーとの対話を通じて、グローバルな社会的課題への理解を深め、事業活動の継続的な改善を図っています。一企業では対応しきれないアパレル業界全体の課題解決に貢献することをめざし、さまざまな業界団体とパートナーシップを結び、活動を行っています。

外部団体との連携

ファーストリテイリングが連携する主な組織と取り組みは、下表の通りです。

名称加盟時期ミッション組織の主な活動内容

繊維・縫製産業労働者の健康と安全のための国際協定(旧バングラデシュにおける火災予防および建設物の安全に関わる協定(通称:アコード))

2013年8月
(アコードへの
加盟時期)

縫製工場の安全性確保のためにブランド各社、労働組合の協力により設立した協定で、法的拘束力がある。工場従業員にとって安全な労働環境の実現に取り組む。
2021年9月、アコードを引き継ぐ新たな協定として発足し、バングラデシュにおける取り組みを継続するとともに、今後、他国への取り組みの拡大も検討する。

縫製工場の防火・電気保安・建物安全性検査の実施、職業安全衛生委員会など工場の管理体制強化支援を行う。工場従業員が安全性の問題を通報できるホットラインの運営や、工場従業員に対する防火・建物安全のトレーニングも実施している。

サステナブル・
アパレル連合(SAC)

2014年9月

アパレルやフットウェア、テキスタイル業界の主要企業が、環境・社会的課題に共同で取り組む団体。アパレルやフットウェア、テキスタイル業界のサプライチェーンにおける環境負荷を低減し、生産活動に関わる人々やコミュニティの発展に貢献する。

サプライチェーンの環境負荷・社会的影響を測定する業界共通ツール(HIGGインデックス)を開発・普及させる。

公正労働協会(FLA)

2015年7月

企業、市民団体、大学などの協働により、労働者の権利を保護し、労働環境を国際標準に適合するよう改善する。

加盟ブランドおよび工場に対し、サプライチェーン全体にわたりFLAの労働環境基準を導入するための支援を行う。加盟ブランドおよび工場の労働環境モニタリングを評価し、改善のための指摘を行う。また、労働環境の課題解決に向け、加盟ブランドや工場と市民団体など、さまざまなステークホルダーとの連携を促進する。

ベターワーク

2015年12月

国際労働機関(ILO)と世界銀行グループの国際金融公社(IFC)の共同プログラムで、政府、グローバルブランド、工場経営者、労働組合や工場従業員など、さまざまな企業や団体、人々と協働し、アパレル、フットウェア業界のサプライチェーンの安定性や競争力を高め、工場労働者の権利向上や労働環境の改善を実現する。

加盟工場に独自の監査、トレーニングや改善提案を行い、労働環境管理の方針や体制の強化を促進する。また、各国における現地活動で得た知見を活用し、各国政府に対する政策策定や計画立案なども支援する。

国際労働機関(ILO)

2019年9月

幅広い労働の問題に取り組む国際連合の専門機関。

仕事の創出、社会的保護の拡充、社会対話の推進、仕事における権利の保障の4つの主要戦略目標に基づき、ディーセントワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を推進する。

ステークホルダーとの協働プロセス

当社の活動に関心を持つ可能性のある個人や団体には、当社の従業員をはじめ、取引先工場の従業員と従業員代表、店舗やサプライチェーンの地域社会の人々、人権課題の解決に取り組む個人や団体などが考えられます。ステークホルダーからサプライチェーンの人権・労働環境に関するお問い合わせやご意見をいただくとともに、さまざまな形でエンゲージメントを行っています。特に、新しい課題が発生した場合や脆弱な立場に置かれる可能性のある労働者の問題に対しては、その分野に知見を持つ専門家などから、より良い対応・解決方法についての助言を受けています。例えば、国際移住機関(IOM)の助言のもと、国や地域を越境して働く移住労働者が、取引先工場での勤務時もしくは母国への帰国時に当社のホットラインを利用し、専門的な解決を必要としている場合に、支援のできるNGOの選定を行っています。

ステークホルダーと定期的な交流を持つにあたっては、月次、四半期ごと、年次といった頻度でコミュニケーションを行っています。頻度は状況により適宜変更されます。コミュニケーションを通じて得た意見やアドバイスは、戦略やプログラムの改善のための参考としています。

ファーストリテイリングは、当社やFLAなどの外部団体のウェブサイトを通じて、人権に関する情報を開示しています。カスタマーセンターを通じ、電話や電子メールなどによるさまざまな問い合わせにも対応しています。

バングラデシュの建物安全性への取り組み(繊維・縫製産業労働者の健康と安全のための国際協定)

ファーストリテイリングは2013年8月から、ビルの崩壊や火災事故から縫製工場の労働者を守ることを目的とした「バングラデシュにおける火災予防および建設物の安全に関わる協定(Accord on Fire and Building Safety in Bangladesh)」(アコード)に加盟し、アコードで推奨されていた工場における職業安全衛生委員会設置や、適正な労働環境維持に取り組んできました。

アコードが実施した取引先工場の検査や、火災予防、電気保安、建物の安全性に関するトレーニングにより、バングラデシュのファーストリテイリングの取引先工場における労働環境の安全性は向上しています。未解決項目と職業安全衛生委員会の設置状況は、アコードの公式ウェブサイトで確認できます。

2021年9月、ファーストリテイリングは、アコードを引き継ぐ枠組みとして発効した「繊維・縫製産業における健康と安全のための国際協定(International Accord for Health and Safety in the Textile and Garment Industry)」に署名しました。今後も、バングラデシュのすべての取引先工場の安全性向上に向けた従来の取り組みを継続、強化していきます。

女性のキャリア形成を支援するプログラムを推進

女性の地位向上支援

ファーストリテイリングは、2019年より、主要生産拠点であるアジアの取引先縫製工場で働く女性を対象としたキャリア形成支援プログラムとして「女性エンパワーメントプログラム」の開発と展開に取り組んでいます。2019年、UN Womenと提携し、バングラデシュの女性労働者の支援を開始しました。適切な支援を行うために、まず、現地のCSO(civil society organization、市民社会組織)、工場経営者との対話や、取引先工場でのパイロットプロジェクトを通し、女性労働者や工場が直面する課題を特定しました。具体的には、女性従業員の課題として、出産や育児、通勤に関する支援が不足しているため、管理職への昇進に対して関心を持ちにくいこと、工場経営の課題としては、工場の諸制度に、女性従業員のキャリア形成への配慮が盛り込まれていないことなどが含まれます。
その後、特定された課題に基づき、取引先工場でトレーニングを実施してきました。選抜された男女従業員に対してジェンダー平等に対する感受性の強化や、労働者の権利と責任に対する知識向上などに関する基礎トレーニングの実施、さらに将来的に管理職になる意欲を持つ女性従業員に対しては、リーダーシップや技術の向上のための上級トレーニングを実施しました。また、実施されたトレーニングを工場が継続して実行できるよう、社内トレーナーの育成も同時に行いました。

2021年から本格的に当プログラムを運用し、同年6月から、女性の働き方に関する調査や、女性活躍に関するトレーニングで多くの実績があるバングラデシュのコンサルティング会社イノビジョンコンサルティングと協働で、他の工場でも同様の取り組みを展開し、対象者へのトレーニングを実施しています。この取り組みを通して、2022年度末までに7工場で計163人(トレーニング受講者の51%)の女性従業員が管理職になりました。

この取り組みをさらに推進するために、バングラデシュにおける主要取引先縫製工場8工場とともに、2025年末までに以下を達成することを目指します。

  • 1. 1,500人の女性従業員が管理職になるためのトレーニングを受講
  • 2. 対象工場における女性管理職比率が平均30%以上に上昇
  • 3. すべての女性従業員が、以下のサービスやサポートを受けやすい環境が整備されている
    • o 託児所や託児サービス
    • o 身体的・精神的健康を増進するためのサポート
    • o 安全な通勤手段

2023年からは、トレーニングを拡大し、工場で働くより多くの女性が参加できるようにすることに加え、女性が職場で活躍し、安心して働ける環境を整備することをプログラムの新たな焦点としています。具体的な取り組みとしては、保育施設やサービスの導入支援、女性の身体的・精神的ウェルビーイングのための課題と機会の把握、女性従業員の通勤に伴うリスクへの対応が含まれます。

関連リンク

アジアの労働者の社会保障充実と労働環境整備に取り組む共同プロジェクトを推進(国際労働機関)

2019年9月、ファーストリテイリングと国際労働機関(ILO)は、アジアで労働者の社会保障の充実と労働環境の整備に取り組むことを目的としたパートナーシップを締結しました。ファーストリテイリングが生産拠点を置くバングラデシュ、カンボジア、中国、インド、インドネシア、ミャンマー、ベトナムの7カ国を対象に、労働市場と社会保障制度の比較調査を実施し、労働者の保護水準の向上につながる政策対話を促進します。

このプロジェクトの主な対象となるアジアでは、急速な経済発展にともなう産業構造および労働市場の変化に起因して、特に縫製産業に従事する労働者の突発的な失職のリスクが高まっています。一方で、アジア諸国における既存の社会保障制度と労働市場政策は、失業のリスクや長期失業に伴う生活困窮のリスクに十分に対応していないという課題があります。

ファーストリテイリングは、2019年9月から3年間で180万米ドル(約1億9千万円)の資金を拠出し、ILOによるアジア各国を対象とした労働市場および社会保障制度に関する調査と、インドネシアでの雇用保険の導入促進および失業時の労働者支援を強化するプロジェクトを支援しました。

本プロジェクトを通じて、ILOは、インドネシアでの雇用保険制度の創設に向けた機運を高め、政府の動きを後押しする下記の取り組みを進めました。こうした活動の結果、インドネシアでは2020年11月、雇用創出法が公布され、失業期間中の収入を保障する雇用保険制度が追加されました。インドネシア政府は2022年2月に失業給付の支給を開始しました。

  • セミナーや研修で基本的な知識や他国の事例を紹介するなど、政労使の代表者が雇用保険制度への理解を深めるための取り組みを実施
  • 制度設計について政労使が協議する場を設け、適用対象、給付額、保険料率、支給期間などに関するそれぞれの立場の取りまとめを実施
  • 制度設計の複数のオプションについて、財務持続性、行政能力、組織体制の観点から実行可能性調査を行い、オプションごとのメリット・デメリットと改善点について提言
  • 法案の国会提出以降は、労働省社会保障局と労働社会保障実施機関に対する資料提供やブリーフィングを実施
  • 法案の成立以降は、制度の細則を定める政府規則や実施体制を定める労働省規則の立案に関して助言
  • 実施細則の成立以降は、失業手当に関する手続きや業務フローの構築について、労働省と労働社会保障実施機関へ助言

上記の制度創設支援と並行して、失業者の再就職支援を行う労働局職員や職業カウンセラーを養成するための研修プログラムの開発・実施、就職に必要な技能および知識を習得するための訓練を提供する公共職業訓練所のプログラム強化(コンピューターネットワーク、アニメーション制作など、再雇用の見通しが高まっているインドネシアの新興産業に関わる科目追加支援)についての技術協力も行われました。

さらに、他のアジア諸国での社会保障制度の強化の必要性と、その実現可能性に関する調査を実施し、今後の各国での協働可能性についての検討も行っています。2022年には、バングラデシュで労働災害時の労働者への収入保障と医療補償を目的とした労災保障スキームの確立に向けた取り組みが開始されました。

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