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ステークホルダーエンゲージメント

最終更新日: 2021.09.06
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国際的なNPOやNGOなどのステークホルダーとの対話を通じて、グローバルな社会的課題への理解を深め、事業活動の継続的な改善を図っています。一企業では対応しきれないアパレル業界全体の課題解決に貢献することをめざし、さまざまな業界団体とパートナーシップを結び、活動を行っています。

外部団体との連携

ファーストリテイリングが連携する主な組織と取り組みは、下表の通りです。

名称加盟時期ミッション組織の主な活動内容

繊維・縫製産業労働者の健康と安全のための国際協定(旧バングラデシュにおける火災予防および建設物の安全に関わる協定(通称:アコード))

2013年8月
(アコードへの
加盟時期)

縫製工場の安全性確保のためにブランド各社、労働組合の協力により設立した協定で、法的拘束力がある。工場従業員にとって安全な労働環境の実現に取り組む。
2021年9月、アコードを引き継ぐ新たな協定として発足し、バングラデシュにおける取り組みを継続するとともに、今後、他国への取り組みの拡大も検討する。

縫製工場の防火・電気保安・建物安全性検査の実施、職業安全衛生委員会など工場の管理体制強化支援を行う。工場従業員が安全性の問題を通報できるホットラインの運営や、工場従業員に対する防火・建物安全のトレーニングも実施している。

サステナブル・
アパレル連合(SAC)

2014年9月

アパレルやフットウエア、テキスタイル業界の主要企業が、環境・社会的課題に共同で取り組む団体。アパレルやフットウエア、テキスタイル業界のサプライチェーンにおける環境負荷を低減し、生産活動に関わる人々やコミュニティの発展に貢献する。

サプライチェーンの環境負荷・社会的影響を測定する業界共通ツール(HIGGインデックス)を開発・普及させる。

公正労働協会(FLA)

2015年7月

企業、市民団体、大学などの協働により、労働者の権利を保護し、労働環境を国際標準に適合するよう改善する。

加盟ブランドおよび工場に対し、サプライチェーン全体にわたりFLAの労働環境基準を導入するための支援を行う。加盟ブランドおよび工場の労働環境モニタリングを評価し、改善のための指摘を行う。また、労働環境の課題解決に向け、加盟ブランドや工場と市民団体など、さまざまなステークホルダーとの連携を促進する。

ベターワーク

2015年12月

国際労働機関(ILO)と世界銀行グループの国際金融公社(IFC)の共同プログラムで、政府、グローバルブランド、工場経営者、労働組合や工場従業員など、さまざまな企業や団体、人々と協働し、アパレル、フットウエア業界のサプライチェーンの安定性や競争力を高め、工場労働者の権利向上や労働環境の改善を実現する。

加盟工場に独自の監査、トレーニングや改善提案を行い、労働環境管理の方針や体制の強化を促進する。また、各国における現地活動で得た知見を活用し、各国政府に対する政策策定や計画立案なども支援する。

国連女性機関
(UN Women)

2019年4月

ジェンダー平等と女性のエンパワーメントのための機関で、2010年7月の国連総会決議により、世界全域で女性と女児のニーズに応じた変化をさらに加速させるために、関連する4つの国連機関を統合して創設された。

国連加盟国がジェンダー平等の達成をめざし、国際基準を策定する支援を行う。また、こうした基準を履行し、世界中の女性と女児が真に恩恵を受けるための法律、政策、プログラム、サービスなどの企画立案を政府や市民社会と協力して行う。持続可能な開発目標のビジョンを女性と女児にとって現実のものとするために世界全域で活動し、「女性のリーダーシップの向上と参画の増加」「女性に対する暴力の撤廃」「平和と安全保障のあらゆる局面における女性の関与」「女性の経済的エンパワーメントの推進」「国家の開発計画と予算におけるジェンダー平等の反映」の5つの活動領域に優先的な取り組みを行って、あらゆる分野における女性の平等な参画を支援する。

国際労働機関(ILO)

2019年9月

幅広い労働の問題に取り組む国際連合の専門機関。

仕事の創出、社会的保護の拡充、社会対話の推進、仕事における権利の保障の4つの主要戦略目標に基づき、ディーセントワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を推進する。

一般社団法人ザ・グローバル・アライアンス・フォー・サステイナブル・サプライチェーン(ASSC)

2019年10月

サプライチェーンにおける強制労働、「現代の奴隷」問題、児童労働、人身取引など企業に関わる人権問題および労働環境問題について、海外関連団体との連携のもと、日本企業による取り組みを推進する。

人権デューディリジェンスやCSR・サステナビリティ調達など、企業の持続可能なサプライチェーン推進の支援プロジェクトのほか、「外国人労働者の責任ある雇用推進」や「持続可能な原材料調達」といった特定の社会・環境の課題解決に向けたマルチ・ステークホルダーによる協働の機会(イニシアティブ)の創出を行っている。

ステークホルダーとの協働プロセス

当社の活動に関心を持つ可能性のある個人や団体には、当社の従業員をはじめ、取引先工場の従業員と従業員代表、店舗やサプライチェーンの地域社会の人々、人権課題の解決に取り組む個人や団体などが考えられます。ステークホルダーからサプライチェーンの人権・労働環境に関するお問い合わせやご意見をいただくとともに、さまざまな形でエンゲージメントを行っています。特に、新しい課題が発生した場合や脆弱な立場に置かれる可能性のある労働者の問題に対しては、その分野に知見を持つ専門家などから、より良い対応・解決方法についての助言を受けています。例えば、国際移住機関(IOM)の助言のもと、国や地域を越境して働く移住労働者が、取引先工場での勤務時もしくは母国への帰国時に当社のホットラインを利用し、専門的な解決を必要としている場合に、支援のできるNGOの選定を行っています。

ステークホルダーと定期的な交流を持つにあたっては、月次、四半期ごと、年次といった頻度でコミュニケーションを行っています。頻度は状況により適宜変更されます。コミュニケーションを通じて得た意見やアドバイスは、戦略やプログラムの改善のための参考としています。

ファーストリテイリングは、当社やFLAなどの外部団体のウェブサイトを通じて、人権に関する情報を開示しています。カスタマーセンターを通じ、電話や電子メールなどによるさまざまな問い合わせにも対応しています。

ステークホルダーとの協働事例

  • 2017年10月、ILOなどによりタイのバンコクで開催されたワークショップ「ILO-Sweden Regional Meeting on Promoting Decent Work in Garment Sector Supply Chains in Asia」に参加しました。このミーティングには、縫製産業を重要と位置づける国の政府関係者、雇用者・労働者団体などのステークホルダーが参加し、アジアの縫製産業における労働・人権関連の課題について議論を行いました。

    関連リンク

  • 2017年11月から2018年6月にかけて、取引先工場のある中国、ベトナム、インドネシア、カンボジア、バングラデシュ、ミャンマーについて、ビジネスおよび社会・環境課題に関するリスクアセスメントを実施しました。アセスメントの過程では、 2017年10月に参加したワークショップ「ILO-Sweden Regional Meeting on Promoting Decent Work in Garment Sector Supply Chains in Asia」で討議された課題を取り入れ、 重要なステークホルダーである現地のNGO、FLA、ベターワーク、他ブランドなどにも意見を聞き、アセスメント結果に反映させました。
  • 2019年には、ステークホルダーの意見を取り入れ、再度リスクアセスメントを実施しました。その結果、前回と同様、工場従業員向けホットライン、移住労働者の強制労働のリスクを低減するための「責任ある雇用」の取り組み、生活賃金、労働時間、女性のエンパワーメントが、強化すべき項目として特定されました。

バングラデシュの建物安全性への取り組み(繊維・縫製産業労働者の健康と安全のための国際協定)

ファーストリテイリングは2013年8月から、ビルの崩壊や火災事故から縫製工場の労働者を守ることを目的とした「バングラデシュにおける火災予防および建設物の安全に関わる協定(Accord on Fire and Building Safety in Bangladesh)」(アコード)に加盟し、アコードで推奨されていた工場における職業安全衛生委員会設置や、適正な労働環境維持に取り組んできました。

アコードが実施した取引先工場の検査や、火災予防、電気保安、建物の安全性に関するトレーニングにより、バングラデシュのファーストリテイリングの取引先工場における労働環境の安全性は向上しています。未解決項目と職業安全衛生委員会の設置状況は、アコードの公式ウェブサイトで確認できます。

2021年9月、ファーストリテイリングは、アコードを引き継ぐ枠組みとして発効した「繊維・縫製産業における健康と安全のための国際協定(International Accord for Health and Safety in the Textile and Garment Industry)」に署名しました。今後も、バングラデシュのすべての取引先工場の安全性向上に向けた従来の取り組みを継続、強化していきます。

女性のキャリア形成を支援する共同プロジェクトを推進

国連女性機関(UN Women)とのパートナーシップにより女性の地位向上に貢献

ファーストリテイリングは、2019年より、主要生産拠点であるアジアの取引先縫製工場で働く女性を対象としたキャリア形成支援プログラムの開発と展開に取り組んでいます。2019年6月、ファーストリテイリングとUN Womenは、バングラデシュの女性労働者や工場が直面する課題を理解するため、現地のCSO(civil society organization、市民社会組織)、工場経営者、UN Womenと対話を行いました。その後、2020年12月にかけて、2つの取引先工場とパイロットプロジェクトを実施しました。

まず、2工場の現状評価を行った結果、下記の課題が特定されました。

女性従業員の課題:

  • 出産や育児、通勤に関する支援が不足しているため、管理職への昇進に対して関心を持ちにくい。
  • 家事の負担があり、早く帰宅しなければならないうえに、責任が重くなり業務量が増える、といった懸念から、管理職になることに対して、良いイメージを持っていない。

工場経営の課題:

  • 工場の諸制度に、女性従業員のキャリア形成への配慮が盛り込まれていない。
  • 研修が技術に偏っており、自己管理能力やリーダーシップの醸成などのソフトスキルが重視されていない。
  • 昇進は推薦制で、管理職は男性で占められる傾向にある。

その後、下記のトレーニングを実施しました。

  • 2工場の従業員約7,000人から選抜された男女300人に対し、下記のテーマで15時間の基礎トレーニングを実施:
    • コミュニケーションや課題解決スキルの向上
    • ジェンダー平等に対する感受性の強化
    • リーダーシップについての理解促進
    • 労働安全衛生と女性の健康
    • 女性の権利と責任に対する知識向上
  • 参加者の中から、さらに将来的に管理職になる意欲を持つ女性従業員100人に対し、リーダーシップや技術の向上のための80時間の上級トレーニングを実施
  • 女性が昇進しやすい環境づくりに向けて、周囲の理解を促進するためのトレーニングを実施
    • 男性の現場管理者50人に対し、女性の活躍を妨げる偏見などへの気づきを促すセッションを2回実施
    • 42人の男性、8人の女性からなる中間管理職50人に対し、ジェンダー平等の意識向上のためのトレーニングを2回実施

さらに、実施されたトレーニングを工場の研修カリキュラムに組み込み、今回トレーニングを受けなかった従業員の教育に活かせるよう、工場経営者向けのセッションも行われました。

プロジェクトの成果を測定するため、定量調査として、トレーニングを受けた従業員66人と、トレーニングを受けなかった94人に、アンケートを実施しました。また、定性調査として、男女の従業員および現場管理者、女性従業員の配偶者、工場の人事担当者の49人にインタビューを行いました。その結果、課題に対し、下記の改善が見られました。

女性従業員の改善:

  • 職場の権利に関する知識が向上した。
  • 職場や家庭での性差別に対する意識が向上した。
  • 管理職の役割を担う自信がつき、昇進への意欲が高まった。
  • 上級管理職とのコミュニケーションが円滑になった。

男性従業員の改善:

  • 女性の管理職としての潜在能力を認めるようになった。

工場経営の改善:

  • 既存の入社時の技術研修に加え、マネジメント能力などの研修も検討されるようになった。

また、プロジェクト後の継続課題としては、女性管理職の育成や能力開発を目的とした、体系的な人事制度の導入や、現場管理者、男性従業員、女性従業員の家族といった、周囲の理解促進などがあります。こうした課題に対し、改善に向けて、継続的な支援を行っていきます。
このパイロットプロジェクトを通じて得られた知見を活かし、今後も、工場従業員のキャリア形成支援を継続していきます。

関連リンク

アジアの労働者の社会保障充実と労働環境整備に取り組む共同プロジェクトを推進(国際労働機関)

2019年9月、ファーストリテイリングと国際労働機関(ILO)は、アジアで労働者の社会保障の充実と労働環境の整備に取り組むことを目的としたパートナーシップを締結しました。ファーストリテイリングが生産拠点を置くバングラデシュ、カンボジア、中国、インド、インドネシア、ミャンマー、ベトナムの7カ国を対象に、労働市場と社会保障制度の比較調査を実施し、労働者の保護水準の向上につながる政策対話を促進します。

このプロジェクトの主な対象となるアジアでは、急速な経済発展にともなう産業構造および労働市場の変化に起因して、特に縫製産業に従事する労働者の突発的な失職のリスクが高まっています。一方で、アジア諸国における既存の社会保障制度と労働市場政策は、失業のリスクや長期失業に伴う生活困窮のリスクに十分に対応していないという課題があります。

ファーストリテイリングは、2019年9月から2年間で180万米ドル(約1億9千万円)の資金を拠出し、ILOによるアジア各国を対象とした労働市場および社会保障制度に関する調査と、インドネシアでの雇用保険の導入促進および失業時の労働者支援を強化するプロジェクトを支援しています。

インドネシアでは2020年11月、雇用創出法が可決され、失業期間中の収入を保障する雇用保険制度が追加されることになりました。本プロジェクトを通じて、ILOは、インドネシアでの雇用保険制度の創設に向けた機運を高め、政府の動きを後押しする下記の取り組みを進めてきました。

  • セミナーや研修で基本的な知識や他国の事例を紹介するなど、政労使の代表者が雇用保険制度への理解を深めるための取り組みを実施
  • 制度設計について政労使が協議する場を設け、適用対象、給付額、保険料率、支給期間などに関するそれぞれの立場の取りまとめを実施
  • 制度設計の複数のオプションについて、財務持続性、行政能力、組織体制の観点から実行可能性調査を行い、オプションごとのメリット・デメリットと改善点について提言
  • 法案の国会提出以降は、労働省社会保障局と労働社会保障実施機関に対する資料提供やブリーフィングを実施
  • 法案の成立以降は、効果的な制度とするための実施細則や実施体制について労働省に助言

上記の制度創設支援と並行して、失業者の再就職支援のためのITスキルトレーニングや、就職支援スタッフに対するトレーニングを開発し、実行しています。さらに、他のアジア諸国での社会保障制度の強化の必要性と、その実現可能性に関する調査も行っています。

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