最終更新日: 2025.02.28
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世界で一番をめざす
ユニクロ創業40周年。未来へ
ユニクロの1号店は、1984年6月に広島に誕生しました。1号店創業から40周年を迎えた2024年、日本に約800店、海外は25の国と地域に約1,700店を展開しています。 私は仕事を始めた時に、カジュアルウェアで世界一をめざそう、と目標を定めました。拙著に『一勝九敗』がありますが、実際は1勝99敗。失敗しても、もう1回挑戦する。それを繰り返して、今があります。40年やってきたというより、体感では3年くらいの思いです。
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ユニクロがブランドとして知られるようになったのは、1998年に始まるフリースブームです。その時に考えたのは、ユニクロは、あらゆる人が、良いカジュアルウェアを着られるようにする新しい企業だということを示すことです。そのコンセプトを象徴する商品として、当時最先端だったフリースを選びました。フリースは高価格の服でしたが、他社と同等か、それ以上の品質で、日本のすべての方が購入することのできる価格で販売したいと思いました。
世界に出ようというのは、当時から考えていました。我々の商売は、世界に通用し、世界一になれるのではないかと思ってきました。そのための計画と準備、挑戦、実行は、これまでも、これからも、ずっと続いていきます。
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1998年のフリースブームでにぎわう「ユニクロ 原宿店」
世界最先端の服であるLifeWear
我々は、人々の生活をより良くするために、服だけでなく、服をつくる会社にできることを見直し続けてきました。その価値観の結晶がLifeWearです。ユニクロ40周年を記念して、世界のファッションの中心地フランスのパリで、「The Art and Science of LifeWear」を開催しました。この特別展の目的は、従来のファッションやアパレルの概念を超えた、新しい服であるLifeWearについて深く知っていただくことです。
世界でも欧州のお客様は、LifeWearの価値観に強く共感し、支持していると感じています。今、世界中で、服に対する価値観は大きく変化し、使い捨ての服ではなく、高品質な服を長く大切に着る。そして、可能な限りリサイクル、リユースする。そうした考え方が主流の時代となり、LifeWearへのニーズはますます高まっていくと思います。
LifeWearの価値の実現には、東レ株式会社とのパートナーシップが欠かせません。2006年に戦略的パートナーシップを締結して以来、ヒートテック、エアリズム、ウルトラライトダウン、パフテックなど、服の常識を変える新しい服を次々と生み出し続けています。東レ社と我々は、業態は異なりますが、情報を共有し、新たな素材開発から生産、商品の改良までのプロセスを一体で行っています。このような協業の成功例は、世界でも珍しいものです。今後も力を合わせ、世界最先端のLifeWearを創造していきます。
2024年10月、パリのヴァンドーム広場に面した会場で、ユニクロの40周年記念特別展「The Art and Science of LifeWear:What Makes Life Better?」を開催。ユニクロの服づくりの根幹にあるLifeWearというコンセプトを、ユニークな展示やインスタレーションを通じて紹介する、大規模な体験型のイベントです。
真のグローバルブランドとして
ユニクロ プリンセスストリート店(英国)
LifeWearへの強い共感。北米、欧州は飛躍的な成長へ
人々の生活をより良くすることをめざしているLifeWear。事業成長と社会への貢献がイコールになる企業をめざす、という我々の姿勢が海外のお客様にも受け入れられ、業績の拡大が続いています。
欧州、北米のユニクロ事業は今、明確な成長ステージに入っています。2024年8月期は、欧州、北米ともに、過去最高の業績を達成しました。なかでも、洋服の発祥地であり、服に厳しい目をもつ欧州のお客様に支持され、爆発的に成長し始めたことには、大きな意味があります。今後はこれまで以上に、ユニクロの知名度が世界中で高まっていくと思います。
ユニクロの商品は、あらゆる人が気軽に買うことができます。品質やデザインも良く、他のブランドとも合わせやすいため、新しいブランドのあり方だと評価されています。大都市の一等地に、現地の歴史や文化とユニクロの価値観が融合した旗艦店を出店したことも、成功の要因です。2024年に初進出した、スコットランドのエディンバラ、イタリアのローマ、ポーランドのワルシャワ、米国のテキサス州では、大変好調な売上が継続しています。欧州、北米のアパレルの市場規模は、合わせて約120兆円と言われています。それぞれの市場で売上収益1兆円、将来的には3兆円をめざします。
アジアは個店経営の強化を進め、次のステージへ
成長のポテンシャルが非常に高いのが、世界で最も人口が多い、グレーターチャイナ、東南アジア・インド・豪州地区です。ここからさらに成長をしていくために、個店経営を強化していく必要があると考えています。
中国大陸は国土が広く、それぞれの地域で気候や文化、習慣が異なります。グローバル企業とローカル企業の両方の特徴をもった、地域密着の店舗運営へ変革を進めています。欧州で成功したように、大都市に旗艦店を出店し、地域のライフスタイルに合った商品構成で、地域に密着した社会貢献活動を行う。それぞれの店舗が、その地域のお客様から絶対に必要だと思われるような店舗に変えていきます。
東南アジアは、商品構成を根本的につくり替えます。通年で販売できる商品の拡大や、地域に合った新商品の開発など、常夏の気候に対応した商品構成を早急に確立します。
インドは成長が著しく、なかでも今年初進出したムンバイは、商業の中心地でもあるため、非常に好調です。我々が思っていた以上に、ポテンシャルがあります。インドも東南アジアも、近い将来、それぞれの国で1,000億円の商売ができると考えています。経済成長とともに、将来は中国大陸並みの大きな事業の柱になると思います。
ジーユーは経営チームを強化して、急成長をめざす
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ジーユーには、ユニクロと同じくらいの成長の可能性があります。ジーユーのブランド価値を明確に定義し、商品、売場、人材など、商売の中で具現化します。低価格帯市場でグローバルに通用するブランドの基礎を確立しなければなりません。これから本格的に、ファーストリテイリング全体でジーユーに経営資源を投入し、バックアップしていきます。最も重要なのは、経営者の育成と社員の教育です。人材の層を厚くしながら、経営チームを強化していきます。2024年9月、米国に初の海外旗艦店「ジーユー ソーホーニューヨーク店」と、オンラインストアをオープンしました。米国のユニクロと連携して、店舗やSNSで積極的な情報発信を行ったこともあり、オープン当日は大盛況でした。世界の情報の発信地であるニューヨークで評価されるブランドにならないと、世界には出ていけないと思います。
ファーストリテイリングのプラットフォーム、ユニクロで培った仕組みや経験があるので、それらをうまく活用することで、ユニクロ以上の早い成長スピードを実現できると思います。今後は、日本事業の成長を加速すると同時に、グレーターチャイナや米国で事業基盤を構築していきます。その後、東南アジアを含め、グローバル展開を加速したいと思います。
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ジーユー ソーホー ニューヨーク店(米国)
国を超えたチーム経営
少数精鋭で、新たな働き方を実現
世界での、我々の本当の勝負は、これからです。世界中のすべての社員が、広い視野でお客様のために何をすべきかを考え、行動していく必要があります。自立した判断力をもつ個人が、チームを組み、互いの強みを尊重し、弱みを補完し合いながら仕事をすれば、強い組織になれます。常にお客様の期待を超える成果を出し、会社の収益を上げていきます。世界水準の優れた人材に、成長機会を与え、世界最高の基準で仕事をするため、報酬も着実に上げていきます。
能力・識見ともに優れた次世代の人材が、各国・各部門に数多くいます。そうした経営者候補の、具体的な発掘と登用を加速していきます。現在の執行役員・各国の経営者が、責任をもって育成に関わる体制を構築しています。
世界各地で経営チームをつくる一方、グローバルヘッドクオーターの経営陣は、直接現地へ足を運び、現場・現物・現実に基づいて、自ら課題を発見し、現地の経営チームと共に課題解決をする体制につくり変えていきます。
新たな働き方の実現のために、少数精鋭を徹底します。最先端のデジタル技術や、あらゆるソフト、ハードを活用することで、国を越えたチームを組み、グローバルな経営体制に変革していきます。
バランスの取れた経営の継続
株式会社ユニクロの社長に就任した塚越大介をはじめ、会社の理念に共感し、成長に貢献してきた経営者が育ってきています。「経営の継承」とは、座学ではなく、現場の仕事、実務を通して、経営の原理原則、判断基準を教え、仕事を成功に導いていくことです。それを日々、現場で実行しています。
また、創業家の役割として、柳井一海と柳井康治には、企業ガバナンスの部分をしっかりと担ってもらいます。真に「正しい経営」を行い、社会に役立つ良い企業になれるように、発信をしていってほしいと思っています。
創業以来、誇ることがあるとすれば、長期にわたり、ほぼ一貫して成長を続けられてきたことです。「社会にとって正しいことは何か」を常に考え、長期的な視野、全体的な利益を考えた経営を実践してきました。だからこそ、持続的な成長が実現できたのだと思います。大切なのは、これからも「正 しい経営」を実行し、長期的な成長を続けることです。
公開企業でありつつも、しっかりとした創業家が存在する。ファミリー企業の良さを併せもち、双方の良いところが発揮される。そうしたバランスの取れた経営を継続していきたいと考えています。
2024年10月、アムステルダムにオープンした「ユニクロ コーニングスプレイン店」。大盛況で迎えたオープン日の朝礼の様子。
今日よりも、より良い未来
長期的な価値を高める経営
社会にプラスの価値を与える企業しか、永続的には発展しないと思います。我々はこれまでも、長期にわたり、事業そのものの価値を高める経営に専念してきました。企業として利益追求は当然のことですが、社会のあらゆる方面で、共存共栄の関係をつくり、「事業拡大」と「社会に対する貢献」がイコールになるような会社にしていくことが重要です。
我々の商売は、個々の店舗が主体となる経営なので、地域への貢献が不可欠です。「地域の人と協業して、共に栄える」という姿勢を大切にしてきました。また、互いにビジョンを共有するパートナー企業と力を合わせ、事業のすべてをEnd to Endで、自ら責任をもってやり通してきました。そのような経営をより徹底していきます。原材料調達や素材生産から縫製までのすべてを可視化できるネットワークを構築し、我々の価値観と基準を共有いただける生産パートナーと、より強固な関係を構築していきます。
近年の技術革新のおかげで、グローバルな規模でパートナーシップを結び、共に成長し、互いに利益を得られる関係が、より強力に実現できるようになりました。これは、我々にとっては大きな追い風です。今後も変わることなく、長期的な価値を高める事業活動を行っていきます。
より良い未来のために
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我々が掲げるLifeWearの価値観は、あらゆる人のための服「MADE FOR ALL」、世界中の平和を実現する「PEACEFOR ALL」です。平和こそが我々の願いです。世界の平和がなければ、我々の商売も続けていくことはできません。そんな「世界の平和を心から願い、アクションする」という想いを実現したのが、「PEACE FOR ALL」プロジェクトです。ユニクロではチャリティTシャツを販売し、利益の全額(一枚当たり販売金額の20%相当)を寄付して、緊急人道支援などの国際的な活動に役立てています。2024年冬からは、全世界で100万点規模のヒートテックなどを寄贈する活動「The Heart of LifeWear」を開始しました。10月には、モルドバ共和国に逃れるウクライナ難民の方々にヒートテックをお届けしました。国内ユニクロ事業では、特定非営利活動法人ジャパン・プラットフォームを通じて、令和6年能登半島地震により被災された方々と、一般財団法人みらいこども財団を通じて、国内の児童養護施設の子どもたちに、合計7万点の「ヒートテック」をお届けしました。
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「服を変え、常識を変え、世界を変えていく」というステーメントの実現は、我々の原点であり、めざす場所でもあります。世界で最も信頼される会社になるために、これからも頑張っていきます。
The Heart of LifeWear活動 ヒートテックの寄贈先
* 2024月12月31日現在の寄贈予定数。ヒートテックのほか、気候によってはエアリズムの寄贈も含みます。