HOME > IR情報 > 経営方針 > トップインタビュー

トップインタビュー

最終更新日: 2023.03.16
to English page

真のグローバルブランドとして

「欧米でブレイクが起こりつつあります」

2022年8月期は、好調な海外ユニクロ事業に支えられ、連結で大幅な増収増益、過去最高の業績となりました。海外ユニクロは1,585店舗、国内ユニクロは809店舗(2022年8月末)と、海外店舗数が国内の2倍近くに増えています。グレーターチャイナ、韓国、東南アジアに加え、北米と欧州でも継続的に黒字を計上できる体制を確立したことは、今後の成長にとって大きなプラスです。

2022年9月に、ミラノ、マドリード、バルセロナの店舗に行ってきたのですが、驚くほど多くのお客様が来店してくださっていて、爆発的に売れている様子を目の当たりに しました。大変ありがたいことです。かつて日本で、1998年のことですが、フリースを1,900円で発売して大ブームになったことがあります。その年の11月には、首都圏初の 都心型店舗を原宿にオープンし、ユニクロフィーバーが起こりました。あの時のブレイクと同じようなことが、欧州で起こっているのではないかと感じました。

今後は、さらにグローバル展開に力を入れます。北米、欧州は、年間30店舗の出店をめざし、出店ペースを加速、グレーターチャイナは年間100店舗の出店を継続、東南アジア・オセアニア地区は年間70-80店舗と、これまでの2倍のスピードで出店していく計画です。世界中でお客様に支持されるアパレルNo.1ブランドをめざします。


2022年10月6日オープンの「ユニクロ グランビア店」。マドリードの目抜き通りにあり、モダンな要素と歴史的要素をもつ建築様式が特徴的。
店舗面積2,200m2を超えるスペイン最大の店舗です。

 

「アパレルの中で、最高のポジションにいると思います」

我々がお届けしているLifeWear は、誰もが手に取りやすい価格です。それでいて品質面で妥協をすることは、決してありません。本当に良い商品を、誰でも買える価格で売るという最も単純なことを、一生懸命、真面目に続けてきたのは、我々だけだと思います。

さまざまなアパレルブランドがありますが、我々はその中でも最高のポジションにいると思います。価格帯は異なりますが、高価格帯で世界最高級といわれるブランド に匹敵するブランドポジションにいるのではないかと思います。日本、中国大陸、東南アジア、オーストラリア、欧州、米国など、世界の主要な国と地域に出店し、お客様 から支持される真のグローバルブランドになりつつあることを実感しています。

パリ、ロンドン、ミラノのラグジュアリーブランドのコレクションでの様子を見ると、訪れている人の多くはファッション関係者ですが、その人たちが最も着ているのが、 ユニクロです。最高の商品しか着ない人、ファッション感度の高い人、ラグジュアリーブランドの人たちも、ユニクロの服を本当にたくさん愛用してくれています。

ユニクロのLifeWear はあらゆるブランドに合わせやすく、「MADE FOR ALL」を基本としているので、あらゆる人に着てもらえる価格設定にしています。とてもお値打ち感があり、価値を感じていただけている、そういうポジションの企業は他にありません。

 

盤石な経営を支える人材

「私の役割は経営者の育成です」

グローバルでの成長を加速させるために、「ローカル」の力を強化する取り組みを進めています。東京の本部がすべて意思決定を行い、各国に指示するのではなく、各国 の「現場、現物、現実」に基づき、自らが判断し、課題解決する。グローバル・ヘッドクオーターの経営陣は世界中を移動し、あらゆる現場に入って経営していく体制に変 えていきます。その考え方に基づき、東京本部に加えて、ニューヨークでもグローバル・ヘッドクオーター機能を強化します。各国の経営陣や各機能の責任者が、世界中を移動し、連携し合い、意思疎通をして各地に散っていくという働き方に変えていきます。

現在、経営の中枢にいる人たちは、20~30年の経験をもつベテラン人材です。ほとんどが新卒で入社し、店舗からのたたき上げです。私がすごく鍛えた人たちばかりですから心強いです。精神的な強さと、「真・善・美」をよくわかっている人、それを体得した人たちです。その人たちが教育者になって、次の経営者を育てていく。彼らがチームとなって経営していく、そういう意味で私は安心しています。

そのなかで、世界中で経営の実績を積んできた上席執行役員の塚越大介がユニクロのグローバルCEO、同じく上席執行役員の若林隆広がグローバルCOOとして、各国の店舗を回り、現地の経営陣とその場で「即断、即決、即実行」し、店舗と本部が密着した経営を行っていきます。


ファーストリテイリングの経営理念やビジョンを全従業員に共有することは、企業の成長にとって不可欠です。
オンラインでの参加も含めて、世界中から約8,000人の店長や本部社員が参加する「FRコンベンション」を年2回、開催しています。

 

「お客様の心を動かすのは、人です」

店舗の従業員の方には良い人生を送ってもらいたい。日々成長できる環境を提供したいと思っています。哲学的に聞こえるかもしれませんが、「あなたは何のために生きているのですか」ということです。自分が成長したいという人の集団にしないといけない。個人個人が勉強して、成長していこうという意欲をもっている人たちにしないといけないと思います。

販売員教育は同時に経営者教育なんです。どんなに技術が優れ、商品が上質なものであっても、そこに人間の熱い気持ち、ヒューマンタッチがなければ、お買い物の需要を満たすことはできても、お客様の心を動かすことはできません。

これまでは、販売員は作業員的要素が強かったのですが、今後は高度な技能をもつプロフェショナルとしての販売員を増やしていきます。そのために、店舗スタッフの給与水準を大幅に引き上げ、仕事の仕方も全部変えます。一人ひとりの販売員が、豊富な商品知識とサービス精神を身に付けて、店舗に足を運んでくださったお客様に感動を味わっていただく。すべての従業員が常に経営者の視点に立ち、「お客様にどのような体験を提供すべきか」を考え抜き、気付いたことを本部に発信し、本部は即座にビジネスに反映する。店舗と本部が一体となり、現場の情報を基に、商売のやり方を変えていきます。

 

長く愛用される服、それがLifeWear

「LifeWearは、世界のどこでも支持されています」

サステナビリティは、今日のアパレル業界にとって重要なテーマです。何が一番サステナブルかというと、リサイクルをする前に、服として長く着られるものであること、お客様のニーズに対応しながら、満足して長く着ていただける服をつくることが一番のサステナビリティだと思います。

  • LifeWearは、デザインがクラシックで、トラディショナルでありながら、服がもつべき機能性や快適さを併せもっています。服そのものが主張するのではなく、さまざまなスタイルの一部品として美しく着こなせる服です。今の時代の人々の価値観に合っているからこそ、世界中で受け入れられています。

  • ユニクロ リヴォリ店(フランス)

  • 服を回収して、原材料に戻し、また服にする。地球に負荷がかからないようにするにはどうしたらいいかを研究していくことが大切です。我々はすでに全商品をリサイクル、リユースする「RE.UNIQLO」の取り組みや、リサイクル素材を使用した商品の開発と販売、ユニクロ店舗でリペア(修繕)とアップサイクル(創造的再利用)を行う「RE.UNIQLO STUDIO」など、服を長く愛用していただく取り組みにも力を入れています。英国ロンドンのリージェントストリート店に2022年9月にオープンした「RE.UNIQLO STUDIO」は、想像以上にお客様からご好評をいただき、同月にシンガポールのオーチャードセントラル店にも開設しました。10月には期間限定のトライアルで、日本の世田谷千歳台店にもオープンしました。今後はグローバルでもトライアルオープンを、積極的に展開していく計画です。

 

地域のお客様に愛される店づくり

「Global is local, Local is globalであることが大切です」

我々の商売にとって特に大事なのは店舗です。以前から「Global is local, Local is global(グローバル即ちローカル、ローカル即ちグローバル)」と言っていますが、グローバルとローカルを両立させることが必要なのです。新型コロナウイルス感染症の影響で、ハワイは、一時まったく観光客が訪れなくなりました。インバウンドの売上が高い地域だったので非常に心配しましたが、今はハワイの売上は2倍くらいになりました。それは、地元の人たちを大切にした商売をしたからです。ハワイだけではなく、東南アジアでも、同様のことが起こりました。世界各地の各店舗は、地元の人を大切にした商売をすることで、売上が何倍に もなる可能性があります。

我々はハワイで社会貢献活動を行い、地元のアーティストと協業して、アロハシャツ、Tシャツ、ショートパンツなどをつくりました。そうした地域密着の活動が、インバウンドが全くないなかでも、売上のアップにつながりました。店舗はお客様のためにあり、地域のお客様のために商売をするということです。ローカルで通用する商品をつくり、それがグローバルでも売れていく。その知見を、世界全体に広げていけば良いのです。

古今東西、良い経営の原理原則は変わりません。それぞれの国や地域には固有の文化や歴史があり、生活習慣に違いがあり、色、サイズ、デザイン、シルエットなど、お客様の好みは異なります。ローカルの文化、価値観、歴史を尊重しながら、全員がやるべきビジネスプロセスをグローバルで統一していきます。それぞれの店舗のニーズに応じた最適な商品構成を整え、販売員がお客様一人ひとりに情報を伝えていく。世界中、いつでも、どこでも、お客様が本当に欲しい商品をお届けしていく。こうした当たり前を実現したいと思います。


ハワイ州オアフ島のショッピングセンター、アラモアナセンター内にあるユニクロ アラモアナ店では、地元アーティストや企業とコラボした「Together in Hawaii」シリーズを展開。このシリーズの収益の一部は、ハワイフードバンクに寄付されています。

 

「店舗はお客様への情報発信の場へ進化します」

店舗とEコマースがシームレスにつながり、情報を中心に、販売員がお客様と対話する、こうしたデジタルとヒューマンタッチが融合したものが、情報製造小売業です。「Eコマースが本業」と言ってきましたが、これは単に販売チャネルの話ではありません。Eコマースで集めた情報を起点に服をつくり、Eコマースのプラットフォーム(基盤)により、すべての商品が今どこに、どれだけの数があり、お客様にどうやってお届けできるかがわかります。Eコマースは、お客様により良い商品、より良いサービスを提供し、満足していただくための、仕事のインフラです。

どこにいても、その場で買い物ができるのがEコマースの最大の強みですが、Eコマースではできない「体験」を提供できるのが店舗です。店からお客様に語りかけていく。もっと地域に出ていく。街に密着した店になる。店舗に行くのが楽しみで、つい足を運びたくなるような「最高の体験」を提供できる店舗でないと、存在意義はありません。購入した商品を店舗で受け取れるクリック&コレクトだけでなく、販売員自らがラストワンマイルの配送をするサービスを、一部の店舗ではすでに始めています。店舗から生配信し、販売員自らがお客様に商品の良さやスタイリングを語りかけるライブコマースも好評です。お客様の最大の利便性をデジタル技術で確保しつつ、店舗で最高の体験をお客様に提供していきます。

 

「 服のインフラ」になるという責任

「End to Endの商品づくりを、 さらに強化します」

自分たちが良いと思う商品をつくって提供すれば良い、という時代は完全に終わりました。「つくった商品を売る」のではなく、「売れる商品をつくる」。これが原点にある考え方です。

ファーストリテイリングの強みは、自分たちにしかできないことをやっている点にあります。我々は服のビジネスにおいて、「End to End」ですべてを行っています。創業の頃からめざしてきた「お客様が欲しい服が、欲しい時にそこにあって、すぐに買える」という理想を追求し続けています。常にお客様を出発点にして、情報を収集、編集、加工し、商品を開発して、生産から物流、販売、リサイクルまで、全部自分たちで行っています。これからは、もっと上流部分にも責任をもつ範囲を広げていきます。例えば、コットンを含む原材料など、素材調達の最上流にいたるまで自社で把握し、自社従業員による訪問や第三者機関による監査、第三者認証を通して労働環境の確認を行い、より高いレベルのトレーサビリティを確保していきたいと考えています。ユニクロを創業した1984年から「お客様の求める服を、どうやって店に揃えるか」ということばかりをずっと考えてきました。「お客様が欲しい服が、欲しい時にそこにあって、すぐに買える」、その実現は近づいています。より快適で質の高い生活を実現するための「服のインフラ」を世界中の人たちに提供するという、我々の使命を果たしていきたいと思います。

 

「LifeWearを通して、世界をより良くしていきます」

私は毎日の生活で、「真・善・美」を実践できるように最善を尽くしています。それは、我々の商売も同じです。美意識が必要です。人の普遍的な価値は、真=何が真実なのか、善=何が善いことなのか、美=何が美しいことなのか、だと思っています。その感性がすごく大事です。それは言葉だけでなく、行動に現れます。行動として実行しないと始まりません。一つ例を挙げれば、2022年6月に「PEACEFOR ALL」プロジェクトをスタートさせました。「世界の平和を願ってアクションする」という趣旨に賛同した著名人にボランティアで参加してもらい、平和への願いを込めてデザインしたTシャツを販売し、その利益の全額(1枚当たり販売金額の20%相当)を、貧困、差別、暴力、紛争、戦争によって被害を受けた人々を支援している国際的な団体に寄付しています。非暴力をTシャツで提唱しているのです。Tシャツは着る人の思いを表現し、それを分かち合うことができます。

私は大きな危機感をもっています。我々のようにグローバルに出ている企業が、世界のため、日本のために何ができるか、世界中の十万人を超える従業員が力を合わせればどんなパワーになるか。そうしたことを考え続けています。個人としても企業としても、良い個人であり、良い企業でありたい。良い人のところには、良い人が集まってくるし、良い企業には良い企業が集まってきます。我々だけではできないことも、世界中でベストなパートナーをつくっていけば、パートナーと一緒に成長していくことができます。今ほど、世界の民間企業、心ある個人の協力が必要な時代はありません。日本を本拠地としている我々は、日本がつぶれないように最大限の努力をします。我々の企業理念の「服を変え、常識を変え、世界を変えていく」は、チャレンジ精神を表しています。ビジネスを通して、我々はより平和な世界、みんなが幸せになれる世界を実現するチャレンジを続けていきます。


ユニクロは日本や欧米で難民・国内避難民を100名以上雇用しています。特にドイツやオランダではウクライナからの避難者を積極的に採用しています。2022年10月27日に東欧初のユニクロのポップアップストアが、ポーランドの首都ワルシャワにオープンしました。店舗スタッフとして、ウクライナからポーランドに避難してきた人を雇用しています。接客や小売業に必要なポーランド語習得のための語学研修を提供し、生活再建の支援をしています。写真はウクライナから避難し、アムステルダム「ユニクロ カルファー通り店」で勤務するダリア・バラノフスカさんです。

 

ページトップへ