最終更新日: 2024.10.15
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2024年8月期 第4四半期:決算説明会 Q&A
決算説明会の主なQ&Aのテキストです。内容はご理解いただきやすいよう、部分的に加筆・修正しています。
- Q1:
- 業績が好調な北米、欧州のユニクロ事業について、将来的にそれぞれの市場で1兆円ずつの売上を達成できる感触はありますか?また、そのために何が必要ですか?
- A1:
- 柳井 株式会社ファーストリテイリング 代表取締役会長兼社長:欧州、北米でそれぞれNo.1ブランドになりたいと思います。世界の主だった市場でNo.1にならない限り、真のグローバルブランドにはなり得ないと思います。それぞれの市場で1兆円、もしくはNo.1になれる感触はあります。そのためには、お取引先、今いる社員、今から入ってくる人材、特にニューヨーク、パリ、ロンドンには素晴らしい人材がたくさんいますので、そのような人材と我々が同じ考え方で一緒に成長していける企業をつくることが大事だと考えています。
- Q2:
- 2025年8月期のグレーターチャイナ、東南アジア・インド・豪州地区の出店数の計画の背景について教えてください。
- A2:
-
岡﨑 取締役 グループ上席執行役員 CFO:グレーターチャイナは、立地が良くない店舗や小さい店舗を閉店しながら、より良い立地に、より大型の店舗を出店するスクラップ&ビルドの戦略を継続しています。今期の出店計画数は60店ですが、閉店もするため、純増数はもっと少ない数字になると思います。グレーターチャイナ市場については、中長期的には非常に強気ですし、楽観的に考えています。立地や店舗の形状も含めて、選び抜いたところに出店していきます。
東南アジアは、ほぼすべての地域で増収増益と、非常に良い手応えがあります。LifeWearに対する需要もしっかりあるため、中長期的にも成長していけると思います。ただし、急速な出店をしてきたなかで、好調な店舗と不調な店舗が見えてきました。東南アジアでもスクラップ&ビルドを実施し、高月商の店舗や、ブランドのメディアとなれる店舗など、精選して出店していきます。そのため、2025年8月期の出店計画数は30店舗としています。このように、店舗数を追うのではなく、店舗の質を重要視しています。そのため、出店数だけを見ても、必ずしも我々の戦略を反映していない点をご理解ください。
塚越 株式会社ファーストリテイリング グループ上席執行役員、株式会社ユニクロ 代表取締役 社長兼COO: 1店舗、1店舗を毎日運営するのは店長や販売員で、その店長や販売員を育成するには、現地に強い経営チームがなければなりません。そのため、出店に関しては、量より質です。グレーターチャイナ、東南アジア・インド・豪州地区だけでなく、北米や欧州も同じです。この方針は、グローバルの各国・各地域で続けていきたいと考えています。
- Q3:
- 東南アジアでは、常夏に合わせた商品構成の確立をめざしていましたが、手応えはいかがですか?
- A3:
- 塚越 グループ上席執行役員:東南アジアでは、年間を通じて売れる商品構成へ見直しています。例えば、日本では四季がありますが、東南アジアは常夏の気候ですので、年間を通して売れる商品は、半袖のTシャツや、ショートパンツなどです。このように、お客様のニーズは地域によって異なり、商品構成を変えながら試行錯誤していますが、手応えを感じています。また、お客様のニーズは日々変化もしているため、同じ商品を同じ方法で売り続けても、売上は失速します。ファーストリテイリングの経営理念23カ条の第1条に「顧客の要望に応え、顧客を創造する経営」があります。年間3,000万件以上いただくお客様の声をもとに、商品開発は手を緩めずにやっていきたいと思います。ものづくりをするのは、マーチャンダイザーだけの仕事ではなく、店舗の方々も含め、社員全員でものづくりをしていくことが、結果的にお客様の欲しい商品の開発につながると思います。これは、ファーストリテイリングの考え方の根幹である「グローバルワン・全員経営」に通じると思いますので、地域・拠点ごとに徹底していきたいと考えています。
- Q4:
- グループ全体で、売上を毎年5,000億円ずつ積み上げていくためには、何が重要だと考えていますか?
- A4:
- 柳井会長兼社長:人材が重要だと思います。世界は情報でつながっているので、グローバルのことを理解しながら、ローカルの事情に合わせること、そして個店単位、SKU(Stock Keeping Unit:在庫管理を行うときの最小管理単位)単位での経営を強化していくことが必要だと考えています。そのためには、最新のデジタル技術を駆使しながら、End to End(商品企画から生産、物流、販売、お客様のお手元に届くまで)で仕事ができ、いかにお客様の生活にプラスになるか、社会にプラスになるかを考え抜ける人材やチームを、各地でつくらないといけないと思います。
- Q5:
- グレーターチャイナのユニクロ事業の現在の状況と、進めている改革の進捗について教えてください。
- A5:
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塚越 グループ上席執行役員:直近の国慶節商戦では、特に上海を含む華東地域や、内陸部の西南地域などは、季節の変わり目の後押しもあり、需要が喚起されたことで、業績が回復しています。
グレーターチャイナでは、スクラップ&ビルドをしながら、旗艦店・大型店の出店を進めています。例えば、西南地域にある重慶は、人口が3,000万人以上です。このような地域で、潘CEOを中心とした現地のチームメンバーが旗艦店級の店舗の出店を計画しています。我々がめざす情報製造小売業になるためには、旗艦店級の店舗からの情報発信、店舗での買い物体験が必要です。グレーターチャイナでは、そのような取り組みを継続していきます。
また、商売には、アップダウンがあるため、商品が売れている要因と売れていない要因は、個店ごとに分析していかないといけません。外部環境の変化も大きいため、柔軟に対応することに加えて、グレーターチャイナは店舗数も多いため、本部からの一律の指示だけでは、全店舗の業績は上がりません。そのため、店長たちが本当の意味での商売人の感覚と、経営者・店主として商売を実行することが非常に重要だと思います。先ほどの質問に、柳井も人材と答えましたが、これから現地の人材教育をしていくことが、将来のグレーターチャイナ事業の成長、ファーストリテイリンググループ全体の成長につながると思います。
- Q6:
- グレーターチャイナの4Q3カ月間の既存店売上高は減収だったと思いますが、その振り返りを教えてください。
- A6:
- 塚越 グループ上席執行役員:4Q3カ月間の既存店売上高は、若干の減収となりましたが、売上の数字だけを追っていても意味はないと思います。重要なのは、1つ目に、お客様に「我々は何者か」を継続的に発信するということです。それがブランディング、マーケティングであり、毎年2回発行している『LifeWear magazine』も、その取り組みの一つです。2つ目に、お客様のニーズにあった商品や、商品構成を確立することです。我々は、中国大陸でもお客様の声を大量に収集していて、地域や店舗ごとにお客様がどういう商品を求めているのか、を確認できるプラットフォーム(経営コックピット)があります。そのため、売れている商品は増産し、売れていない商品は計画を変更する、などの機動的な判断が、SKUベースでうまく回り始めています。グレーターチャイナは、ポテンシャルのある事業なので、今はまだ通過点だと思います。目先の業績のアップダウンに左右されず、めざすべき方向を社員全員とすり合わせて、商売していくことが重要だと思います。
- Q7:
- グローバルヘッドクオーターの変革について、1年間の振り返りと、さらに改善できる点があれば教えてください。
- A7:
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岡﨑 グループ上席執行役員CFO:塚越のプレゼンテーションでも説明がありましたが、商品領域については、人が国を越えて異動しています。現地に身を置いて、市場や競合状況を肌で感じた人たちが、世界とつながってマーチャンダイジングや新商品を開発するという動きが定着してきたと思います。実際、成果につながりつつあるため、この取り組みは非常に良かったと思いますし、今後も推進していきます。このような取り組みを試行錯誤するなかで、成果が出ることもあれば、そうでないこともあります。そのため、人を分散させることがいい領域、人を集中させた方がいい領域などを見極めながら、グローバルヘッドクオーターのグローバル化を着実に進めていきたいと思います。また、塚越のように、世界中を経営者が飛び回り、実際の現場に入り、そこでチャンスと課題を発見し、グローバルに対する指示を出すという働き方が普通になってきた点は、非常に良いことだと思います。
塚越 グループ上席執行役員:現場・現物・現実を商売のモットーとしていますので、現場に行かないとわからないことが多いと思います。東京にいる多くの社員も海外に出張して、実際に現場を確認し、チャンスと課題を発見しています。大きなチャンスやポテンシャルのある商品のヒントが、ある地域の、ある小さな意見から見つけられます。これは、お客様の声や、毎日店頭でお客様に接している販売員の声のチカラです。売れる商品や良い取り組み事例は、すぐに他国に共有して、それを全店舗で実行する。それがグローバルで展開をする企業のメリットだと思いますし、我々の商売の原点だと思います。
1枚1枚の服を、世界中の1店舗1店舗で販売した積み上げが、3兆円以上の売上をつくっています。これは本当に地道な努力です。これからも、常に危機意識をもちながら、毎日真剣に商売していくことが重要です。社員全員がどれだけそれを本気でやっていけるかが、ファーストリテイリングの将来につながっていくと思います。
以上