FAST RETAILING

地球環境に対する意識が根強い
「オーストラリア」という成長市場で、
未来のLifeWearの姿を模索していく。

Makoto Takase

SPECIAL 04

社員インタビュー

ミッション・業務内容

ユニクロオーストラリア事業部で総店長を務める高瀬は、オーストラリアという国に二つの点で大きなビジネスチャンスを感じている。一つは人口が増加傾向にあり、先進国にあって市場が今も拡大しているから。もう一つは、現地の人たちの暮らしぶりに、ユニクロのLifeWearとしての価値を高めるヒントが隠されているように感じているからだという。目下では店舗数拡大を目指して現地人材の育成に力を注ぐ一方、商売のサイクルを回しながら課題とチャンスを発見、発信することで、全社のビジネスをより良い方向へと変えていくための提案活動にも力を入れている。

日本に留まっていては
いけない。

世界のどこでも働けるような人材を目指そう

海外の文化への興味から、私は学生時代に東アジアの国へ短期留学したのですが、当時は英語が話せず、拙い現地の言語で会話をしていました。対して、その国の学生たちが当たり前のように留学生たちと英語で話す姿に、少なからず衝撃を受けました。そして、現地の学生たちの並々ならぬ向学心の高さに触れて、「日本に留まっていてはいけないな。世界のどこでも働けるような人材を目指していかないと、これからの時代についていけなくなるな」といった、そんな危機感のようなものを抱くようになりました。

そうしたある日のこと、何の気なしにその国の首都にあるユニクロの店舗に入ったんです。当時の私の認識は、「ユニクロなんかが世界一になれるわけがない」という冷めたものでした。ところが私が目にしたユニクロの姿は、外国の一等地に店を構え、入店制限するほどの盛況ぶりで、現地の販売員たちの接客も素晴らしかった。「この会社は、本当に世界一になるかもしれない」「ここで働いたら、自分も世界で活躍できる人材に成長できるはずだ」——。海外での一連の体験が、ユニクロへの入社動機となっていきました。

若いチームの指揮を執る。

長期の売上を予測して一気に在庫を確保する

入社して半年が過ぎ、私は札幌にある全社的にも売上上位の店舗に異動となりました。店長から在庫管理と売場づくりを任されたのですが、当初は人気商品をなかなか入荷できず、お客様をがっかりさせてしまうことが少なからずありました。全国的に品薄で会社の倉庫にも在庫がない、というのが理由でした。とはいえ、「それは社内の都合であって、お客様に説明することはできる?」と店長に指摘され、確かにそのとおりだと思いました。

そこで私は考えました。一般に在庫を抱えることは経営のリスクとなるので、どこの店舗も短期の売上予測に基づき、短期で在庫を確保します。それなら長期の売上を予測して一気に在庫を確保すれば、人気商品も常に店頭に陳列できるのではないかと。当時の店長のサポートもあり、私は思い切って、6ヶ月分の在庫を一度に確保しました。

そのために、商品ごとの売上動向はもちろんのこと、お客様がどんな商品に興味を示されているのか、声なき声も店頭で徹底的に集め、予測と結果のギャップをゼロに近づける努力をしました。これにより、ほぼすべての商品において全色、全サイズが継続して店頭に揃っている状態を実現しながら、在庫もきちんと消化。お客様からも「あなたのお店に来ると、いつも在庫がある」と、お褒めの言葉をいただけるまでになりました。

今、日本と季節が逆になっている南半球のオーストラリアで仕事をしていますが、北半球の本部や店長たちと同じ季節感で商売の話ができるのも、札幌での取り組みが、自分の強みとなって身に付いているからだと感じています。

納得と理解を得られない限り、行動には移してもらえない

オーストラリアは2050年には人口が倍増すると言われており、先進国のなかでも市場が拡大し続けている点で、ビジネスチャンスのある国です。そこで私たちも出店を増やし、事業を拡大すべく、将来の店長、幹部となる現地人材の育成を急ピッチで進めています。

私はもともと海外勤務志望でしたから、入社後も新興国での出店事例などを参考に自分なりにイメージを膨らませてきました。赴任当初、現地の人たちとはユニクロの価値観を共有するところから始める必要があると思っていたのですが、それは私の思い違いでした。現地社員たちは皆、日本の文化や企業に強い興味を抱いて入社しており、ユニクロの価値観もきちんと理解していました。

とはいえ、オーストラリアは国民の権利意識も高いことから、何を依頼するにしても合理的に説明をして納得と理解を得られない限り、行動には移してもらえません。そこで私が日々の店舗運営において心がけているのが、「基準を明確にすること」と「相手のために時間を確保すること」の2点です。

日本では「習うより慣れよ」と言われますが、ここオーストラリアでは練習を通じて一定の基準を満たすまでは、実戦に臨むようなことはありません。つまり現地社員たちが、自分ひとりでできるようになるまでサポートを受けることは彼ら彼女らの権利であり、同時に私たちの義務。

実は多民族国家であるオーストラリアでは、自分に課せられた義務を果たさないかぎり、自らの権利を行使することはできません。国際社会で通用する人材となるためにも、義務と権利は表裏一体であることを理解しておく必要があると感じています。ですから、私自身の教育するという義務を果たすことなく、私の権利であるスタッフにお願いをするということはできません。何かを実現したければ、明確な基準と合理的な方法で相手を理解させ、納得させた上で、自身の権利である要求をすることが出来るということです。日本では、何となくお願いをしてしまうようなこともこちらでは、お願いをされた人が時間内に要求されている質でその仕事が本当に完結できるのか、その人が仕事を完結させる環境は十分に整っているか、一つ一つ丁寧に考えながらスタッフにお願いをしています。日本でも感じるべき当たり前のことですが、世界に出て仕事をしていく中で、こういった当たり前のことをより感じるようになりました。

役割を分担し、一人ひとりに明確な使命を与え最後まで任せる

日本での店舗運営は、ベテランスタッフたちに助けられることもよくあるのですが、オーストラリア事業は歴史が浅く若いチームであることから、ベテランスタッフがいません。そこに日本からエキスパートとして派遣されているだけに私の責任も重大ですが、自分の身はひとつ、できることにも限りがあります。それだけにチームワークがより重要です。

店長である私が仕事を分け、役割を分担し、一人ひとりに明確な使命を与え最後まで任せる。そして、その成果をしっかりと評価し、感謝の言葉を添えることを忘れない。たったこれだけのことで、チームはどんどん成長します。若いチームだからこそ成長は早く、日増しにオペレーションの成果が上がる現状に、私の士気も高まるばかりです。

現在、スタッフたちと挑戦しているのが店舗からの情報発信。オーストラリアにおけるユニクロの認知度は高いものの、生活の隅々までは浸透し切れていません。例えば、ヒートテックは知られていても、3つのタイプが存在することまではあまり知られていません。そこで私たちは週替わりで異なる商品を打ち出して、その特徴をしっかりお客様に伝えることで、LifeWearとしての価値をアピールしています。

南半球の地の利を
生かす。

エコロジー先進国の暮らしとユニクロの親和性を追求する

オーストラリアはエコロジー(自然環境保全)先進国です。雄大な自然を有し、資源も食糧も豊富。それゆえ自然環境に対する意識は高いです。また、労働にも増して、家族との休息をとても大事にします。今、国際社会はさまざまな社会課題に直面し、日本でもSDGsが浸透して日々の生活を見直す機運が高まっていますが、オーストラリアの人たちのスローライフとも言える暮らしぶりには、未来のヒントが隠されているように感じています。

例えば、こちらの人たちは正しく作られた品質のよい商品を長く使い続けます。それがエコロジーだと考えるからですが、この点でユニクロの商品は親和性が非常に高いと言えます。今、私が考えるのは、オーストラリアの人たちのニーズを満たしていくことは、ユニクロのLifeWearとしての価値を高めていくことにつながるのではないかということ。

日本事業では約850店舗の中の一店長でしたが、オーストラリア事業では約30店舗の中の一店長。さらに現在、南半球で事業を展開しているのはオーストラリアだけということもあり、本部に対する私の発言力も相対的に大きくなっています。

だからこそ私は、本部に対しても積極的に情報発信を行い、季節が逆になっていることを生かして北半球のビジネスをリードしていけるような働き方をしていきたいと思っています。そして今後、他の国・地域へ進出する際の模範となっていきたいですし、そうした新規事業にも挑戦したいと考えています。

UNIQLO

高瀬 真

Makoto Takase

ユニクロ ユニクロオーストラリア事業部

2014年に新卒で入社。国内計2店舗で店長を務める。2019年にユニクロオーストラリア事業部に異動し、シドニーやブリスベンで店舗運営を通じた現地人材の育成を担う。現在は「ユニクロ シドニーエリア マッコーリ店」総店長を務める。

※プロフィールはインタビュー当時のものです。

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