FAST RETAILING

アメリカ事業を足掛かりに、
ジーユーを日本発世界一の
アパレルブランドにしたい。

Daisuke Iwaki

SPECIAL 04

社員インタビュー

ミッション・業務内容

ニューヨークのソーホー地区にオープンしたポップアップストア(期間限定店舗)において、「アメリカ事業の本格出店のための成果を出すこと」と「ジーユーの働き方を変えること(東京本部と密に仕事をする)」の2点が、自らのミッションであると岩城は語る。同店を起点に、岩城はアパレルブランド世界一を目指す。

アメリカに期間限定店をオープン。

ニューヨークで見えたジーユーの可能性と課題

2022年10月、ジーユーはアメリカ初出店となる『ジーユー ソーホー ニューヨーク店』を期間限定でオープンしました。急ピッチで準備を進めなくてはならなかったことに加え、ニューヨーク店は日本の標準的なジーユー店舗と比べると売場面積は約3分の1と限られたことから、日本で展開する商品を厳選してアメリカに持ち込みました。この出店により「商品」と「組織」の2つの観点からジーユーの可能性と課題が見えてきました。

まず「商品」についていうと、「ジーユーの機能性、機能美はアメリカでも通用する」ということ。本当に良い服は世界中どこでも売れることがわかったのは、大きな自信となりました。一方で、ジーユーは世界のお客様の心情を理解し切れていないこともわかりました。日本のおしゃれは、体型を隠しながらきれいな服とカジュアルな服を上手に組み合わせるところに特徴があります。対してアメリカのおしゃれは、ありのままの自分を魅力的に見せるべく体型を隠すことはせず、カジュアルな服とフォーマルな服を明確に使い分けます。サイズの好みも異なり、日本ではオーバーサイズを上手く着こなしますが、アメリカでは体系を隠すのがネガティブで、ジャストフィットの方が好まれます。つまり、グローバルな視点、発想を持った商品開発、販売計画へと考えを改めない限り、ジーユーが発信するファッションは日本では受け入れられても、世界では受け入れられないことがわかりました。今後のグローバル展開も視野に、着丈、裄丈、袖丈などについては早急に考えを整理しようと取り組んでいます。

次に「組織」についていうと、ユニクロをはじめとしたファーストリテイリンググループの知見、ノウハウをフル活用できるということは、ジーユーの世界進出における大きなアドバンテージであることが、今回のニューヨーク出店でも実証されました。一方で、ジーユーには海外生活や海外勤務などを通じ、自分と他者の価値観や生活様式の違いを身をもって知るグローバル人材が不足していることが浮き彫りになりました。特に東京にある本部(グローバルヘッドクオーター、GHQ)のグローバル人材が不足しており、真の意味でのグローバルワン※が実現できていません。今後、世界進出を本格化させていくためにも、グローバル人材の育成は喫緊の課題です。

※グローバルワン:お客様と社会にとって、本当に良いこと・正しいことを追求し「世界で最も良い方法」として実行していくというファーストリテイリングの考え方。

ジーユーのグローバル化に取り組む。

実地で試行錯誤を重ねる以外に解決策はない

現在、私はファッションの本場であるニューヨークで何が通用し、何が通用しないのか、それを日々の商売を通じて理解し、GHQに正しくフィードバックすることで、グローバルワンで取り組むことを目指しています。そうすることで、グローバルのお客様に通用する商品・売場・マーケティング・サービスを再構築したいと考え、業務に励んでいます。

とはいえ、日本とアメリカとでは、やはり同じ仕事をするにしても勝手が違います。私自身、感じている難しさは大きく3点あります。1点目は、言語や考え方が違うことによる現地スタッフとの意思疎通の難しさ。2点目は、アメリカ生活の経験がなく、当地のお客様の嗜好や市場動向の背景にあるものを理解することの難しさ。そして3点目は、2点目に起因する経営判断の難しさです。こればかりは世界進出で先行するユニクロからも、「自分たちで試行錯誤を重ねる以外に解決策はない」とアドバイスを受けましたが、まさにその通りであることを実感しています。

現場・現物・現実を通してでしか獲得できない知見

言語や文化が違うことによる意思疎通の難しさについていえば、「なぜ、皆で店舗のゴミを拾い、皆で商品を補充し整え、皆でレジに立つ必要があるのか」、日本では当たり前に実施していた事がなかなか現地スタッフに理解されません。担当業務を明確に振り分けた分業が当たり前のアメリカで、マルチタスクによる店舗運営は非効率に映ります。グローバルワン、全員経営こそが自らがビジネスパーソン、経営者として成長していくための近道であることを理解してもらうためには、個々にケーススタディーを積み上げ、納得してもらうほかに術はありません。ファーストリテイリングの価値観を共有すべく、私たちは現地スタッフに対し「我々が大切にしている接客の在り方、サービスに対する価値観」を言葉で説き、行動で示すことを繰り返しています。

一方で、現地スタッフやお客様からも日々、教えを受けています。例えばアメリカでは、「洗濯後の縮みが大きい」というお客様の声が少なからず寄せられました。日本ではあまり耳にすることのなかった指摘でしたので私も不思議でしたが、当地では洗濯物を干すという習慣がなく、乾燥機を使うのが当たり前とのこと。乾燥機であれば洗濯後の縮みも納得で、まさに生活習慣の違いから寄せられたお客様の声であることがわかりました。このように現場・現物・現実を通してでしか獲得できない知見は実に多く、相手を理解することの大切さと、それは一朝一夕にできるものではないことを教えられる毎日です。

そして経営判断の難しさについていえば、チャレンジを繰り返していくほかないと考え、実行しています。心掛けているのは、何をするにもGHQを巻き込むこと。出張ベースで構わないのでGHQからなるべく多くの社員に来てもらい、現場・現物・現実を肌感覚で捉えてもらうことで、全員に海外事業に対する当事者意識を持ってもらいたいと、社内各所へ折に触れて働き掛けています。

ファッションを
グローバルワンでとらえる。

日米の違いはイコール、ジーユーの伸びしろ

ジーユーは、2013年の中国事業を皮切りに、台湾、香港、そして韓国へと進出を果たしました。しかし今回のアメリカ出店は、本当の意味での海外進出との感覚を私は抱いています。それほどお客様の嗜好、考え方の違いを痛感しており、裏を返せばこれまでのアジア事業は「同じアジア人」という素地、土壌に助けられてきたのだと実感しています。

だからこそ私たちとしては、何としてもニューヨーク店を黒字化させることで、アメリカへの本格進出の足掛かりとしたいと考えています。しかも単に黒字化を実現するのではなく、ここで最大限のトライ&エラーを重ねることで、日本とアメリカのファッションの違いを明確にしたいと考えています。なぜなら、日米の違いはイコール、ジーユーの伸びしろであり、アメリカのファッションを知ることは、その先のヨーロッパ事業につながることであり、またアジア事業を再興させることでもあるからです。

このようにして各国のファッションをつねにグローバルワンでとらえ、考え、実行しようとしているアパレルブランドはファーストリテイリンググループをおいてほかになく、ここにファーストリテイリングが世界一を目指せるチャンスがあると、私たちは本気で考えています。

どこの国でも通用する可能性が十分にある

人生は一度しかなく、そのなかで世界一を目指せる機会というのはまたとないと思っていますし、自分がこれほどワクワクすることもそうはないと考えています。とりわけジーユーは、若いメンバーが主体となって会社の未来を左右する業務を担っています。私自身、そこに魅力を感じてジーユーに入社した経緯がありますが、まだ30代の私がこれほど重要な任務に就けるところに、ジーユーで働く醍醐味があると再認識しています。

アメリカで成功できれば、ジーユーも、そして私自身も、どこの国でも通用する可能性が十分にあります。働く上でこれほどのモチベーションはないと信じるからこそ、社内における海外事業の当事者意識を率先して醸成し、国内外への出店をいっそう加速させていきたいです。今回のニューヨーク出店を契機に、どんどん店舗を拡大し、真の意味でのグローバルワンを実現させることで、どこの国・地域でもジーユーの店舗に行けば同じ品質、同じトレンドの商品がそこにある状態を生み出していく。それによりグローバルに驚きと感動を与え、そこで暮らす人たちの価値観をよい方向に変えていけるような商売、経営をしていきたいと思っています。

GU

岩城 題助

Daisuke Iwaki

ジーユー GUUS MD

2011年に新卒で入社。2店舗で店長を務め、2013年に商品計画部に配属、2015年にMD部に着任。以来、一貫してマーチャンダイジングを担い、2022年9月より現職。

※プロフィールはインタビュー当時のものです。

TOP