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トップインタビュー

最終更新日: 2024.01.31
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世界最高のグローバルブランドへ

第4創業。新たに生まれ変わる

2023年8月期の連結業績は、2021年8月期以来、3期連続で過去最高の業績を更新しました。2024年8月期には売上高は3兆円を突破すると思います。今後、数年で売上高5兆円の達成、それを倍にした10兆円の達成も、途方もない目標ではないと思っています。

なぜ今そうした目標を発表したかというと、新聞の取材で侍ジャパンの栗山英樹監督と対談した時に、監督の熱意に感銘を受けたからです。勝つと決意しない限り、実現はできない。栗山監督は、自らチームメンバーを一人ひとり口説いて、選手のベストな力を引き出しました。我々も「今までのアパレル小売業がやったことがない水準でやる」と決意し、その船に全員が乗るか乗らないか。私自身が最初にその船に乗らないと、みんなは乗らないと思ったのです。

 

ユニクロは1984年に広島市に1号店をオープンしました。それが「第1創業」。「第2創業」は2005年です。2001年のロンドン出店以降、失敗続きだった海外展開が、この年の香港出店で初めて成功し、その後、グローバルに成長していく突破口になりました。「第3創業」は2013年です。LifeWear(究極の普段着)という新しい服の概念を掲げ、グローバル化を加速しました。同時に情報製造小売業の基盤も整い、グローバルブランドになる土台が固まったと思います。そして今が「第4創業」です。2023年の年度方針を「第4創業 挑戦、実行、達成」とし、真のグローバルブランドになるために、新たに生まれ変わる時だと決意しました。今までと同様に、理想、高い目標を掲げ、それを達成する方法を考え、実行します。世界中のお客様に満足いただける商品をお届けして、世界最高のグローバルブランドになります。あらゆる人の快適な日常生活を実現し、いつでも、どこでも、誰でも、「ユニクロで買えば安心」という信頼感のあるブランドになりたいと思います。

 

世界唯一、日本発のLifeWear

世界中のあらゆる人のための「究極の普段着」

LifeWearは、優れたデザイン性や高い機能性をもち、快適で、長く着られる、誰もが手に届く究極の普段着です。世界で唯一、我々だけがご提供しています。この服の新しい価値が生まれたのは「日本」です。1999年に制定したユニクロ初のブランドメッセージは、「ユニクロは、あらゆる人が良いカジュアルを着られるようにする新しい日本の企業です」。日本の美意識や精緻なものづくり、勤勉な精神など、日本独自の価値観を活かし、それを強みとして世界に打って出ると考えていたからです。ユニクロの服は、ファッション界の常識を覆し、生活を快適にする部品と定義し、工業製品をつくる精緻さと厳格な品質管理でつくってきました。この匠の精神こそが、世界中でお客様に支持され、成長できた最大の要因です。

  • 実質的な価値を伴った商品を求める方向へ価値観が変化したこともLifeWear への支持の拡大につながり、欧米でのユニクロのプレゼンスは飛躍的に高まりました。ロンドン、パリの中心部では、現地のトップブランドと並ぶ店舗数となり、米国では進出している都市での認知度が80%以上にまで高まりました。欧米で事業を継続的に拡大できる基盤ができたことで、真のグローバルブランドになる条件が整いました。

 

「Global is local, Local is global」で大きな成果

  • 「グローバル」と「ローカル」が現場で一体となって、業務の改革を進めてきたことが、成功の原動力だと思っています。我々が掲げてきた「Global is local, Local is global (グローバル即ちローカル、ローカル即ちグローバル)」の考え方の実行段階に入っています。またユニクロでは、各国のチームとグローバルヘッドクオーターが一体となって、お客様の声をもとに、ローカルでニーズがあり、世界にも通じる商品の開発を行っています。また、グローバルマーケティングも強化することで、コア商品(Tシャツ、フリース、カーゴパンツなど)を中心に、大きな成果が出ています。SNSから人気に火がついたラウンドミニショルダーバッグは、世界中で1,400万点以上が売れています。英国のガーディアン紙が「ファッション関係者の間で『ミレニアル世代のバーキン』と呼ばれている」と報じたほどです。SNSにより一瞬で口コミが世界中に伝わりました。市場が国内市場からグローバル市場になったということです。

  • 三日月形のユニクロ「ラウンドミニショルダーバッグ」は、コンパクトなのに10cmのマチがあり、見た目以上に荷物が入ります。英国のインフルエンサーが、動画共有アプリTikTokで収納力の高さとおしゃれなコーディネートを紹介し、たちまち大人気になりました。世界各国で売り切れが続出、発売から1年が経っても人気が継続しています。

  • ファッションやライフスタイルの変化は全世界、同時多発的に起こる時代になりました。グローバルで成長するためには、お客様の声を聞き、商品の完成度や、時代・トレンドを反映する精度を上げることが重要です。我々には、良い商品をつくる体制が既にあります。ニューヨーク、ロサンゼルス、ロンドン、パリ、上海、東京にR&Dセンターがあり、アジアに長年の信頼できるパートナー工場があります。また、グローバルに店舗網とEコマースの会員基盤をもち、そこに年間3,000万件以上の世界中のお客様からのご要望、ご不満が集まります。アジアを代表して、初めてのグローバルブランドになれる可能性が、我々にはあるのではないかと思っています。

 

店舗経営の革新

「店は客のためにあり店員とともに栄える」

  • 私の執務室には、「店は客のためにあり 店員とともに栄える」という言葉が掲げられています。ユニクロを創業する前、この言葉を提唱した倉本長治さん主筆の雑誌『商業界』を読み、純度の高い結晶のような言葉を見つけました。人生で最も影響を受けた、最も好きな言葉です。極めてシンプルな表現の内に、商いの原理原則のすべてが込められています。経営の目的は、「お客様」つまり店舗のファンを増やしていくことです。売場の従業員の成長が、会社の将来の鍵を握っているのです。店舗の販売員は単なる作業者ではなく、全員が経営者であり、店舗の店主、リーダーです。一人ひとりの店舗スタッフが、お客様にどのような価値を感じてもらうか、それを自分の頭で考える知的労働者になる必要があります。そこから店舗経営の革新が始まります。


  • 倉本長治さんの言葉が書かれた書(小林抱牛書)

今、最も必要なことは、販売員のさらなる教育、訓練です。全世界、全店舗で同じサービス水準でLifeWearを提供するために、経営者は自ら、世界各国の店舗に繰り返し入り、守るべき基準を丁寧に説明し、一緒になって実行する働き方をしてほしいと思っています。商品がどこにあり、特徴は何か、お困りごとはないか、お客様に寄り添える親切な販売員の育成に力を入れています。販売員の採用、育成、評価など、グローバルで統一した基準や制度をつくり、徹底することで、より高いお客様満足の実現に取り組んでいます。

 

個店経営。訪れる価値のある店舗づくり

  • 私は、一般的なチェーン展開はだめだと思っています。個店経営の店舗が集まって、グローバルにチェーン展開していくのが良いと考えています。地域のニーズとグローバルのニーズを融合した店舗が生き残るということです。地域で最も良い店舗だけがグローバルで通用します。Eコマースが発達してくると、行く価値がある店舗しか存在できません。コロナ禍でわかったのは、Eコマースは万能ではないということです。やはりお客様は店舗に行きたがっている。行く意義がある店舗に行きたいのです。我々は欧州の主要都市や、米国ニューヨークのソーホーと5番街に店舗をつくりました。それが成功の要因だと思っています。欧州でも米国でも、デベロッパーから「ぜひうちの地域に、ショッピングセンターに来てください」とお声をいただきます。そこで、チェーンストアではなく、個店経営を展開していくわけです。現地のお客様のニーズを理解し、市場情報を知っている現地の人と、日本人が共同で経営していく。個店ごとに、独自に問題の解決に取り組むとともに、グローバルヘッドクオーターのメンバーが常に現場に入って、現場と一緒に問題を解決する。店舗、生産、物流、販売の現場がグローバルヘッドクオーターと一体となり、直接つながることで、本質的な問題解決ができます。グローバルで個店経営を強化していくとは、そういうことです。

  • 人気の観光スポットである東京・浅草に2021年オープンした「ユニクロ浅草」のキービジュアルは、浅草の街を連想させる「千社札」がモチーフです。地元のみなさんに愛される店舗、ともに成長していける店舗をめざしています。

 

真の「全員経営」の実現

「チーム経営」の体制を強化

2023年9月に、ユニクロ事業のグローバルCEOを務める塚越大介が、株式会社ユニクロの代表取締役社長兼COOに就任しました。塚越は入社して22年になりますが、国内店舗の店長、中国大陸のCOO、北米事業のCEO、我々の社内人材育成機関であるFR-MIC(FR Management and Innovation Center)の責任者も経験していて、世界中のビジネスを熟知しています。我々の基本方針は現場が一番ですが、店舗も本部も全部知っている彼は適任です。私は、株式会社ユニクロ代表取締役会長兼CEO、株式会社ファーストリテイリング代表取締役会長兼社長として、これまで通りグループ全体の経営の意思決定と経営執行を担っていきます。私もまだまだ現役で頑張ります。

これまでも各国の経営者や各部門の責任者でチーム経営を実践してきたので、今後も塚越を中心に、引き続きその体制を強化していくことになります。すでに経営チームが中心となって、さらに次の時代を担う20~30代の経営者候補を発掘して育成するサクセッションプランをつくり、世界各地で実行しつつあります。若い力に大いに期待しています。世界各国・各地域の経営者と共に経営チームを構築すると同時に、全社の各部門が連携し、グループ一体となった真の「全員経営」を実現していくことで、経営の質を高めていってもらいたいと考えています。

 

世界最高の基準で仕事をする

社員全員が経営者のつもりで仕事をしたら、効率はすごく上がると思います。全員に成長意欲があり、一番下の人でも努力して能力が上がれば、トップまで行ける。そんな会社にしたくて「グローバルワン・全員経営」を掲げています。2023年3月に日本で大幅な賃上げを実施したのは、世界最高の基準で仕事をしてほしいからです。今、一番必要なのは、世界最高水準の人材です。優秀な人材が少数精鋭で、ワンチームで仕事をする組織をつくっていくことが、事業拡大と収益性の改善へ導く勝因になると思います。成功は、少数精鋭でもたらされます。人海戦術では店舗も社員も会社も、すべてをだめにします。優れた人材には、これまで以上に高い給料で報い、少数精鋭を徹底していこうと思っています。

第4創業で非常に重要なことは、人材投資の強化です。我々は日本発の企業ですが、日本企業でもなく、米国企業でもなく、本当のグローバル企業にならないといけないと思っています。例えば、欧州ではCOOのほとんどが現地出身です。日本と現地の人が共同で経営しています。我々の商品や顧客のことを理解して、グローバル市場のことをよく知っている現地の人が経営者の中にいないと、うまくいきません。これまでの日本人中心の体制から、世界中の人材が、経営者やプロフェッショナル職に就く経営体制に変革します。世界中で最高水準の人材の採用を強化し、その人たちが各事業を異動しながら、経営者としてキャリアを積んでいく。全員で情報を共有して、WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)のように個人の才能とチームワークで、世界最高水準の仕事をし、世界で勝っていきたいと考えています。

 

世界で最も必要とされる会社

事業そのもので社会に貢献

ファーストリテイリングの前身の小郡商事を、父から引き継いだ時、どんな会社にするかを考え、決めたのが「社会に良いことをする」ということです。私の商売の原点です。

  • 海外に出る時の3つの問いがあります。第1は、「あなたは何者で、どこが他の人と違うのですか?」同じことをするのなら、その国に行く必要はありません。第2は、「あなたは世界にどんな良いことをしてきましたか?」我々は難民の支援や障がい者の雇用、服のリサイクル、人権への取り組みなどを、これまで真摯に取り組んできました。そうした行動履歴があって、初めて信頼されます。第3は、「あなたはこの国にどんな良いことをしてくれますか?」単にお金儲けがしたいなら、誰も相手にしません。自分が何者で、何ができて、何を実現したいのか。その思いが伝われば、仲間ができます。同じ志をもつ世界中の優れた個人や企業とチームを組み、誰もやったことがないものを生み出し、社会を変えることができる。我々がやってきたのは、そういうことだと思います。近年のパンデミックや世界の紛争、戦争を通して、我々が思っている以上に世界がシームレスにつながっていることが露わになりました。グローバル化、デジタル化が進み、個人の生活も、企業の経営も、世界中のどこにいても、全部つながっています。「自分だけが良くなる」ことは不可能です。このような時代に、最も良くないのは、自分のことだけ、自社のことだけ、自国のことだけ、といった一方的な利益しか考えないことです。単純な思考、極端な行動、自分たちと異質なものを許容しない不寛容、そうした考え方では、これからの世界は何も解決できないと思います。国や民族の枠組みを超えて、もっと高い位置から世界を見て、社会のために商売をする視点をもてば、世界はまだまだ、さまざまな可能性に満ちています。未来を信じる。未来は自分たちでつくる。その覚悟が必要です。お客様を信じ、商売のつくり出す価値を信じ、これからも社会のために仕事をしていきます。


  • 柳井正が1979年に作成した「小郡商事(株)経営理念」は、その後、理念が追加され「経営理念23カ条」となりました。経営に対する基本的な価値観は、現在まで変わっていませんが、第8条の「社長中心」は、のちに「全社員最適」に変更されています。家族中心の経営だった小郡商事は、社員中心のファーストリテイリングへと成長しました。

 

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