FAST RETAILING

チームを勝たせるリーダー、
世の中に貢献できる
経営者になりたい。
それが私の「事を為すにあり」

Hidenori Nishino

SPECIAL 03

社員たちの「使命」と「実行」

ミッション・業務内容

フランスCOOを担っていた西野は現在、グローバルIMD部の部長を務めている。IMDとはIn-Store Merchandisingの略。商品陳列、POPやポスターなどの販促物を含めた「売場」をわかりやすく魅力的なものにする仕事だ。ユニクロの経営方針や商品施策を具現化したものが商品だとすれば、その商品を表現するのが売場や商品陳列。魅力的な売場をつくり、お客様に最高のお買い物体験を提供することで、顧客満足と利益の最大化を目指している。そのために各部門と連携しながら、「お客様のための美意識のある、買いやすい、売れる売場づくり」と、「お客様がほしいものがいつもある」という状態を日々、追求する西野だが、一連の業務は「世の中に貢献できる経営者」を目指す自身にとって、すべてが新鮮で勉強になるとか。就職活動にはじまり、新人時代、イギリス事業、フランス事業、そして現在について、これまでのキャリアを楽しそうに振り返った。

人はなぜ働くのか、
それを真剣に考えた。

自分の人生と本気で向き合えていなかった

就職活動をするときに、私は「何で働くんだろう」みたいなところがちょっとわからなくなってしまって、実は1年間、留学をしたんです。で、いろんな本を読んだり、多くの人の話を聞いたりしながら、ひとつわかったことは、働くって人の役に立つとか、社会の役に立つものだよ、ということ。

当時、印象に残ったのは司馬遼太郎さんの『竜馬がゆく』で見つけた、「世に生を得るは、事を為すにあり」という坂本龍馬の言葉でした。自らの生き様を踏まえたうえで、「あなたは何のために生きるのですか?」と問われたような気がしてハッとしました。お金持ちになりたいだとか、カッコイイ仕事に就きたいだとか、そういう浅はかな考えで仕事選びをしそうになっていたことに、自分の人生と本気で向き合えていないなと思いましたね。

経営者になりたいと思い、ユニクロと出会った

人の役に立ちたい、社会の役に立ちたい——。ここから私の仕事選びが始まったのですが、「どうせなら、そうした企業を自分で起こした方がいいんじゃないの?」と考えるようになりました。とはいえ、起業家、経営者になりたいと思ったところで、お金もないですし、知識や経験もない。そこで出会ったのがユニクロでした。

入社の決め手は二つありました。一つは、若いうちに店長という経験をさせてもらえることで、管理、育成、成長、リーダーシップ、コミュニケーションといった「ヒト」の部分、商品、サービス、売場、物流といった「モノ」の部分、そして粗利、経費、利益といった「カネ」の部分、これらを自分の裁量で自由にコントロールしながら経営を実地で学べるということ。もう一つは、柳井正という人が掲げる「日本発の企業を世界ナンバーワンにする」という夢を、自分も一緒に成し遂げたいと思ったことでした。

まったく歯が立たずに、自分だけが空回り。

思いを熱く語っても、スタッフからの反応はなかった

新人研修を通じ、「服の民主化を果たしたい」「一部の人しか手にできなかった高品質な商品を、世界の誰もが着られるようにしたい」というユニクロの並々ならぬ使命感に触れて、私の仕事に対する熱量も否応なしに高まっていきました。

その熱も冷めやらぬまま最初の任地に赴いたのですが、ここで私は洗礼を受けました。自分はこの店をこうしたいのだといくら熱く語っても、スタッフからは一向に反応が返ってこない。先頭に立って行動で示しても、誰もあとをついてこない。そんな状況が2カ月ほど続いたある日、私はスタッフの前で言いました。「すみません、僕、間違っていたかも知れません。みなさんは、この店をどうしたいと考えていますか?」と。

そこで私は初めて気付かされました。スタッフたちはそれぞれに強い思いや目標を持っているということ。そしてリーダーである私がやるべきは、それを理解し、共有し、チームで実行に移していくことなのだと。

勇んで乗り込んだイギリスでも、苦い思いばかりが募った

入社して5年が過ぎ、エリアマネージャーとして7〜8店舗を任されるようになったころには、リーダーシップの発揮の仕方も、売場づくりの理解の深さも、新人時代とは比べものにならないほどに成長したという自負がありました。それだけにロンドンにおける旗艦店の新規立ち上げを通じ、イギリス事業を復活させるというミッションにアサインされたときは、「今の力をもって良いお店を作り、お客様を喜ばせるぞ」と勇んで現地に乗り込みました。

ところが、結果はまったく歯が立たず、自分だけが空回り。「あれ? この感覚、前にもあったな」「新人のときとは違うはずなのに、どうして?」「これが文化や価値観の違いというものなのか?」……。幸いにもイギリス事業の経営者の手腕によって、事業は無事に黒字化を果たしましたが、当の私はといえば、これといった成果も挙げられずに不完全燃焼、苦い思いばかりが募りました。原因は、本質的なところのコミュニケーションが不足していたことでした。

経営者として、
自分に足りなかったもの。

フランスでは、イギリスよりも強いチームを作ることを目標に取り組む

リーダーとはチームを「勝利に導く人」であり、リーダーには「目的地」を決めるという大きな役割があります。リーダーがまずやるべきことは自分たちにとっての「成果とは何か」を明確に定義することです。目指す場所が明らかにならないと、現在地も、進むべき方向も、評価の基準もはっきりせず、チームが成り立ちません。

私はこのことを強く意識していたし、そのためのコミュニケーションもしっかり取ってきたつもりでしたが、日本では「察する文化」に助けられていたに過ぎず、それが不十分であることが異国の地で露呈したのだと実感しました。それだけに次の任地となったフランスでCOOを任された際には、出店店舗数や売上目標額、利益額といった明確なゴールを定めるとともに、「なぜ、それを目指すのか」「その実現がフランスにどんなメリットをもたらすのか」「自分たちが得られる成果とは何なのか」といった目的の一つ一つを、現地従業員たちと共有することを心がけました。

結果として、イギリス駐在時よりも強いチームを作ることができましたが、それでも掲げた目標、ゴールにはあと一歩届きませんでした。敗因はひとえに、経営者としての私の実力不足にありました。

不足している知識や経験は、経営者としての私の伸びしろ

現在、尊敬する経営者のもとで、IMDという売場づくりを起点に商売や全社改革を担う部署を預かってわかったことがあります。経営者として私に足りなかったのは次の二つ、「実行力、徹底力、要求力」と「経営者としての知識と経験」です。

前者について言えば、私はリーダーとして物わかりが良すぎたのだと思います。リーダーが絶えずチームをフォローアップし、ときにはプッシュ、それもダメ押しするくらいの冷徹さをもって結果を要求すること、そうやってチームに勝ちグセをつけていくことが重要なのだということを、上司の姿を通じて知りました。

そして後者について言えば、私の売場づくりの視点と、その道のスペシャリストたちが見ている売場づくりの視座の高さは、子どもとプロ選手くらいの違いがあることを知りました。しかも彼らは、デザイン、商品企画、商品計画、マーケティングといった各領域のスペシャリストたちと日々、侃々諤々の議論を重ねながら、ユニクロを世界一にするための研鑽を重ねています。「COOを務めてなお、自分には知らないことがたくさんあるな」というのが配属当初の率直な感想であり、今もキャッチアップに四苦八苦しています。ただ、「不足している知識や経験」こそが経営者としての自分の「伸びしろ」だと感じているだけに、日々学ぶことがある今は仕事が楽しくて仕方ありません。

この企業で自分ができることを最大限に発揮する

「起業したい」「経営者になりたい」と考えたことから入社した会社でしたが、今日まで実際に働いてきて感じているのは、世界ナンバーワンになるという大きな夢を持ち、その目標を実現させるチャンスが現実的にある会社は、そう多くはないということ。

だからこそ世界ナンバーワンになるまでは、この会社で自分のできる最大限を発揮し、仲間たちとともに「お客様のため、社会のために必要とされる企業になる」ことを本気で目指していきたい。これが私の「事を為すにあり」なのだと、今はそう考えています。これから就職活動を始める皆さんもぜひ、自分が働く意味、生きる目的というものを、真剣に考えてみてください。そうやって明確となった志や使命感はきっと、実りある人生に導く大きな原動力となっていくはずです。

UNIQLO

西野 秀典

Hidenori Nishino

ユニクロ グローバルIMD部 部長

2002年に新卒で入社。2004年に店長に就任し、スーパーバイザー、エリアマネージャーを経て、2008年にイギリスに赴任。UKエリアマネージャー、グローバル旗艦店である「ユニクロ 311オックスフォードストリート店」店長を務める。2014年にフランスへと移り、フランスエリアマネージャー、グローバル旗艦店である「ユニクロ パリ オペラ店」店長を務めた後、フランスCOOに就任。2020年11月より現職。

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