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  • 柳井 正

    ファーストリテイリング 代表取締役会長 兼 社長

    1972年、父親の経営する小郡商事に入社後、84年にカジュアルウェアの小売店『ユニクロ』の第1号店を広島市に出店。91年、社名をファーストリテイリングに変更。99年、東証一部上場、グローバル企業へと成長を続ける

人間のピークは25歳
天命を知るのに若過ぎるということはない

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「就職」とは、自分を良い方向へと変えてくれるものです。若い人の中には「就社」という最初の入り口ばかりを気にする人もいますが、どんな会社に入社するかではなく、まずは仕事に就くことを考えるべきだと思います。なぜなら、どんな仕事であれ、実際に現場に身を置き働くことだけが、一人前の社会人へと、自分を変えてくれるものだからです。

 例えば、ビジネスをする上で大切な「人とのつながり」については、仕事からしか学べません。当社のモットーは「グローバルワン・全員経営」ですが、これは「世界で一番良い方法を全員で実行しましょう」という意味です。仕事はチームワークが不可欠な団体競技。一人一人が人との関わり合いを深く理解しなければ、成立し得ないものなのです。

 ところが、大学ではこうしたことは教えてくれない。テストに必要な記憶力は磨けても、仕事をする上で必要なコミュニケーション力や判断力は身に付きません。大学を出たら一人前と思っている人がいるなら、とんでもない思い違いです。

 また、今の若い人の多くは、人との関わり合いが希薄だと感じています。昔のように、何世代もの人が一緒に生活するとか、学外の人と交流するとか、そういった機会は減りましたよね。自分と似た属性、同じ価値観の人とばかりいては、世界のことを全く知らないまま終わってしまいます。

仕事は団体競技だと話しましたが、そこではチーム全員の全人格を知っておく必要が出てきます。社会人になって数年経てば、リーダーとして振る舞うことも要求されるでしょう。その時にリーダーシップだけでなくフォロワーシップについても理解していなければ、良いリーダーには決してなれないものなのです。

 もちろん、学生時代に人との関わり合いが絶対に学べないとは言いませんよ。でも、「自分はできる」と思い込んでいる人ほど、いざやってみろと言うと実際には何もできない。命令すれば人は動くと思っている。こうしたことは知識として持っているだけでなく、体得していなければ意味がないのです。

 改めて、「就職する」ということは、人との触れ合いとも言えるでしょう。いろいろな人と出会い、一緒に仕事をし、お互いの存在感を伴ったコミュニケーションを重ねる中で、自分を磨いてもらうのです。

 大学を卒業しても、仕事の現場に出たらまだ半人前。謙虚な姿勢で学び、なるべく早くに一人前の社会人へと変わらなければなりません。

自分の「働く意義」は何か
若いうちにその意味を考えよ

 そうやって社会人として一人前になったら、次に考えるべきは「自分のミッションを感じながら仕事ができるようになること」です。若い人には、自分にとって会社とは何か、仕事をするとは何かといった根源的な問いを、もっと発してもらいたい。

 就職すれば、毎日8時間くらい働いた上に、通勤途中や帰宅してからも仕事について考える生活が始まります。少なく見積もっても、人生の半分は仕事に費やすことになるのです。それだけの時間を使うことが、自分の人生にとって何を意味しているのか。そういったことをなるべく早い段階で把握するなり、発見するなりしてほしいと思います。

 ちなみに、今そう言えるのは年齢を重ねたからであって、学生のうちは全くそんなことは考えていませんでした。僕が就職する年齢を迎えた1970年代の初めは、ちょうどヒッピーなんかが流行った時代で、僕自身もどうにかして仕事をしないで生きていくことばかり考えていました。

 不思議なもので、振り返るとそれが逆に良かったと感じています。最初から商売で成功してやろうと考えていたら、今みたいに客観的に人や仕事、経営というものを見られるようにはならなかったでしょう。僕は今67歳。学生の皆さんが僕の年齢になるまでには後50年弱あります。だから僕は問いたい。あなたはその50年を懸けて、最終的に何を成し遂げるんですか、と。

 僕が会社を始めたばかりの零細企業だったころは、毎日が生きるか死ぬかみたいなものでした。でも、当時は一生懸命努力をしても、なかなか成果に結び付きませんでした。なぜか。それは、目の前のことだけに必死で、最終的に何を実現したいのかという「行き先」を決めていなかったからです。

 僕の場合は幸か不幸か、家業の洋服屋を継ぐということだけは決まっていましたが、ある時はこっち、またある時はこっちと行き先を決めずにやっていたから、従業員がほとんど全員辞めてしまうような失敗も犯してしまいました。一つの所をグルグルと回って、努力している気になっていても、結局何も進歩していません。できるだけ若いうちに「行き先」が決まっていれば、その後の50年を無駄に過ごさずに済むのです。

人生は「諸行無常」
その中でどう精一杯生きるかだ

 僕は常々、人間のピークは25歳だと言っています。学術にしても芸術にしても、基となる考え方や能力はほとんど25歳までに決まるといいます。もちろん、成長曲線は人それぞれ。僕が言いたいのは、天命を知るのに若過ぎることはない、ということです。

 当社がサポートをしている南谷真鈴さんをご存知ですか? 今年7月、日本人史上最年少の19歳という若さで7大陸最高峰登頂を達成した大学生アルピニストです。彼女は13歳で登山の魅力にはまり、それから程なくして将来の最年少記録更新に目標を定めたそうです。この人は既に天命を知っている。天命を知っていれば、若くてもこれだけのすごいことができるのです。

 人間、できないことはできませんから、与えられていないものをいくら考えても仕方がない。自分には何が与えられているのかに早く気付くことが大切です。そして、人間は社会的動物なので、そうしたことは周りとの関係の中でしか分からない。人と関わり合いながら、発見するしかないのです。

 発見の機会は死ぬまであります。でも、結果として何も発見できずに終わる一生もあります。それはとても切ない。切ないけれども、人生なんてそんなものです。諸行無常。全てのものがよどみなく変化していくこの世の中で大切なのは、その中でいかに精一杯生きるかです。

 生きている者はいずれ死にます。でも、あのスティーブ・ジョブズだって、偉大なことを連続的にやったのはがんを患って自分の寿命を意識したところからです。若い皆さんが今から、毎日が人生最後の日だと思って何かに取り組めば、きっとものすごく大きな成果が出せるはずです。

※このインタビューは、キャリアデザインセンター『type就活』18卒向け版に掲載した記事です

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