CONCEPT MESSAGE

PEOPLE
「ジーユーがないと困る」という状態へ。
目指すは「ファッションのインフラ」に
なること。

マーチャンダイザーとしてグッときたのは、「低価格でありながら、ファッション性がある」ということ。これはビジネスの可能性が格段に大きいと直感した。

日本のアパレル業界は衰退していくという危機感。

前職はマーチャンダイザーとして、大手アパレルで有名ブランドとライセンス契約を結んだライセンス商材を扱っていました。世界に知られるブランドであったことから、やりがいのある仕事でした。ただ、高級品、嗜好品の部類に属することもあって、どうしても市場が限られてしまい、マーチャンダイザーとして戦略や数字を追いかけていくうえでは、ビジネス領域の狭さ、社会に与えるインパクトにおいて、やや物足りなさを感じていました。

そんなとき、ファーストリテイリングが主力ブランドであるユニクロのノウハウを活かしながら、野心的な新業態であるジーユーを立ち上げるための、創業メンバーを募集するというニュースに触れ、大きく心が動きました。マーチャンダイザーとして何よりグッときたのは、「ユニクロよりもさらに低価格、しかもファッション性をより重視する」という内容であったこと。これはビジネスの可能性が格段に大きいと直感しました。

2000年代に入り、日本のアパレル業界は縮小傾向が続いていました。日本人一人あたりのファッションに費やすお金が、明らかに減っていることが理由でした。でも、服を買わなくなったかといえばそんなことはなく、購入点数はほぼ横ばいか、それ以上。この点で、ファッションへの興味は失われていないことが明らかでした。つまり、洋服の買い方が変わってきている中で、お客様の消費行動自体に何らかのインパクトを与えていくようなビジネスこそが求められている。高級品、嗜好品としてのファッションではなく、今日でいうところのファストファッションの可能性を、大いに考えていた時期でした。

業界関係者にウケるだけでは、ビジネスにならない。

当時、ファッション業界では、ファストファッションのような比較的新しいブランドの商品を指して、「ファッションをわかってないよね」という否定的な見解を述べる人が多かったのが事実。でも、それと同じくらいに、「これはこれでいいのではないか」という肯定的な立場をとる人も少なくありませんでした。とくにファッションブランドとして新しい立ち位置を築いていたユニクロは、SPAこと製造小売業の業態で、単純明快な「低価格、高品質」という付加価値をもった商品を提供している。業界を熟知する人ほど、ユニクロが積極果敢にチャレンジしている姿をまぶしく感じる人もいました。かくいう私もその一人でした。

ファッション業界においては、とくにハイブランドであるほど、「業界関係者にはウケたけれども、まったく売れなかった」ということがよくあります。こんなとき、マーチャンダイザーとしては、やはり心穏やかではいられません。いくらデザイナーが発信したいことが巧みに具現化され、それが業界関係者に評価されたからといって、それでお終いではないからです。われわれは「何のために働いているのか」「誰のために仕事をしているのか」、その根本の部分がビジネスにおいては極めて重要。お客様に見向きもされなかったことから目を背け、「時代の先を行きすぎた」というような感覚で自己満足していたとしたら、それは趣味であってビジネスではないと考えているからです。とはいえ、では何が原因で売れなかったのかを明らかにしようと試みても、マーケットが限られていると感覚的な話になってしまうことも多く、私自身、悶々とすることも少なくありませんでした。

それだけに今、顧客接点が非常に濃密であり、すべての人たち、それも世界の市場に向けて、低価格で高品質、ファッション性もきちんと満たした商品をお届けしようとするジーユーに、私はアパレル業の面白さを再認識しています。とくに仮説を立て、きちんと検証しながら、グローバルに成功を収めていこうとするこのスケールの大きさは、ジーユーならではの醍醐味と実感しています。

商品開発にデジタルという名の「科学」を持ち込み、ビッグデータを分析。その成果をリアル店舗で検証しながら世界進出を図れるブランドは、世界でも指折り数える程度。

「一番はここだよね」というところを作り込む。

現在、ジーユーはひとつの正念場にさしかかっていると私は考えています。市場に浸透するとともに認知度も高まり、世界進出を果たすまでに成長してきたことにより、ジーユーに対するお客様からの期待度、要求度の高さは、従来の比ではないことを肌で感じているからです。中でも商品構成においては、これまで均一化、均質化を図ることでクオリティーを満たしてきた部分がありますが、マーケットが拡大し、お客様の層が広がったことで、これまで以上に多様性が求められてきています。「幅と深さ」「嗜好性と実用性」といった、決して交わることのないベクトルを同時に追求していかなければならなくなっているのがポイントです。そこで重要となってくるのが、「リアルとデジタルのハイブリット」だと私は考えています。

商品の開発なり構成を考えるうえで、やはり重要となるのがお客様の声。「答えは現場にあり」という言葉は、ファッション業界においても不変です。このとき嗜好性が高く、対象となるお客様も絞られてくるブランドであれば、リアル店舗でのリサーチ結果である程度の答えが見えてくることもあります。しかし実用性が高く、対象となるお客様も幅広いブランドにおいては、現場の声を拾う程度ではサンプル数が少なすぎます。そこで活用すべきがビッグデータであり、デジタル技術です。

これまでに蓄積してきたあらゆるデータを、さまざまな手法で解析、分析することにより、「これしかない」という真ん中をいかに追求していくか。もしかしたら「多品種、少量生産」をよしとするなら、そこまでしなくてもいいかもしれませんが、この場合は費用対効果の観点からクオリティーが担保されにくくなります。やはり「一番はここだよね」というところをしっかりと作り込むからこそ、デザイン性や機能性を含め、品質を高めることができると私は考えています。

嗜好性と実用性の両方を高いレベルで兼ね備える商品。

ジーユーは、ロンドンにR&Dセンターを設置し、ヨーロッパでのマーケティングリサーチを進めながら、ローカルトレンドはもとより、歴史や文化、ライフスタイルに基づく嗜好を探り、それを日本のマーケットやアジアのマーケットと地道に比較検討しながら、可能性を探っています。

幸い現代社会においては、情報が一気に世界に拡散するため、トレンドはつかみやすくなっています。例えば、ファッションに影響力のある人が「花柄」を着用すると、それが世界に広がっていく様子は、SNSなどですぐに確認できます。でも、それがどう受け入れられていくかで、各国の特徴が出てきます。花柄のパンツを作るにしても、ワイドパンツを好む国もあれば、スキニーを好む国もある。パンツではなくスカートが好まれる国もある。そのスカートも、ロングを好む国もあれば、ミニを好む国もある。こうした事情をふまえ、ジーユーとしてのコアコンセプトを残しながらも、これからは現地最適化も図っていかなければならないと私は考えています。しかもスピーディにそれを実現していかないと、トレンドは次へと移り、商機を失うことは火を見るより明らかです。

さらに言えば、実用性を満たしていくためには、骨格や体つきの違いについても考慮していく必要があります。手の長さ、足の長さ、肩幅、お尻の大きさなどは、日本人と現地の人たちでは違います。実用性という観点においては機能性が重要であり、優れたフィット感を実現するためにはこうした分析も必要です。

世界にファッションブランドは数多ありますが、商品開発にデジタルという名の科学を持ち込み、ビッグデータを分析。その成果をリアル店舗で検証しながら世界進出を図れるブランドは、世界でも指折り数える程度だと思います。もちろんジーユーも、その取り組みは始まったばかり。それでもこれからの取り組み次第で、嗜好性と実用性の両方を高いレベルで兼ね備える商品、それも現地最適化をいち早く満たした商品構成を実現できるようになったとき、世界のファッション業界において未だなしえないビジネスモデルを生み出し、そこにひとつのパラダイムシフトを起こせると私は考えています。

「ジーユーがないと困るよね」といってもらえるような、いうなれば「ファッションのインフラ」となれたとき、それはジーユーだから提供できる付加価値となる。

変わりながら、成長しながら、協業しながら、進化し続ける。

これはまだ夢物語に過ぎませんが、私はいつしか、リアル店舗とネット通販、アナログとデジタルを上手に融合しながら、お客様と個人レベルで一緒に商品開発ができたら面白いと考えています。お客様とシームレスにつながることで、その商品開発を個人用のフルオーダーメイドとして、安価、最速、高品質に実現するだけでも高い付加価値を提供できると思いますし、素晴らしい商品ができたときは多くの人と共有しても楽しいと思います。

こうすることで、「ジーユーがないと困るよね」といってもらえるような、いうなれば「ファッションのインフラ」となれたとき、それはジーユーだから提供できる付加価値となって、ジーユーの確固とした存在意義になるのではないかと私は考えています。

もちろん、決して大風呂敷を広げたつもりはありません。なぜなら、これまでのジーユーの10年の歩みを振り返ったとき、10年前と変わっていないのは、もしかしたら社名くらいではないかと思うほど、私たちは絶えず進化してきたからです。変わりながら、成長しながら、協業しながら、進化し続けてきたのがジーユーであり、それを一緒に楽しみながら前に進める仲間がいるかぎり、私の夢物語は絵空事ではないと強く信じています。