CONCEPT MESSAGE

PEOPLE
どれだけの意志や信念を持って、
ビジネスの土台作りにのぞめるか。

海外で働きたいという想いと、現場感覚を取り戻したいという想いが、今の自分のベースを作っている。

5年ぶりの店長復帰は海外で。

海外で仕事をしたいという想いが強くなったのは、店長を経て新店チームに所属していたときのこと。ロンドンのリージェントストリート店の改装を日本からサポートし、その後、フランスのラ・デファンスの新店プロジェクトに参加しました。ユニクロの製品を海外のお客さまが現地で買ってくれていることに新鮮な驚きがあり、海外への興味が掻きたてられました。

一方で、新店チームに5年在籍していて、このままでは現場感覚を完全に失ってしまうという危機感も持ち始めていました。新店を担当する店長に対し理想的なトレーニングスケジュール、レイアウト、オープン販促などをアドバイスすることはできます。しかし、それは机上論にすぎません。「具体的にどう実行するのか」に対して、自分自身の感覚が薄れてきたことを感じ始めたのです。5年のブランクがあることを周りからは心配されましたが、もう一度店舗に戻りチャレンジしようと決意しました。すると「店長に復帰するのなら、海外でやってみないか」と言われ、躊躇することなく“Yes”と答えていました。

“阿吽の呼吸”が通じない海外では、その国の文化を理解し、
意図を明確にしたうえではっきりと指示することが重要。

立ちはだかる言葉の壁。

強い意欲を持って着任したロンドンのホワイトシティ店ですが、現実は厳しく、言葉の壁は予想以上に高かったです。社内基準であるTOEIC700はクリアしていたのですが、実践ではなかなか通用しない。“How’re you?”、“Fine, thank you.”……それ以上会話を広げることができないような日々にもがき苦しみながら、自ら進んでコミュニケーションを取れるようになるまでに半年かかりました。また、日本なら「あうん」の呼吸で通用しますが、UKでは正当な理由や意図を伝えないと、指示が通りません。

そういった環境に、私自身が少し臆病になっていたのかもしれません。このままではダメだ、現状を変えなければ。そう思って取り組んだのが「ユニクログランプリ(U1)」です。これは世界中の店舗でカスタマーサービスや売上を競う社内コンテスト。トップを目指すことをスタッフに提案すると、「わかった、がんばろう」と賛同してくれたのです。彼らも私との関係を良好にして、よりよい店舗にしたいという思いがあったのかもしれません。結果は惜しくも4位でしたが、「1位を取る」という強い意志がみんなの心を変えたと思います。

国ごとの文化の違いを理解する。

その後、フランス・マレ店の立ち上げに関わることになります。1年間のロンドン生活では、こちらから積極的に行動を起こせば相手も応えてくれることを実感し、ヨーロッパのビジネスも叩き込まれていたので、それらの経験と新店チームでの経験を合わせたら、面白いことができそうだと考えていたんです。しかし、現実は失敗の連続でした。フランスは労働に関する法律が厳しく、スタッフのマネジメントも一筋縄ではいきません。また接客スタイルも、会話を大切にするお客さまが多いので、レジで会話を楽しむお客様を急かしてしはいけません。そういった文化の違いを理解するのにとても時間がかかりました。

それでも、ファッションの中心地で、まわりに負けない店舗を作ることへの意欲は失うことはありません。ロンドンで活躍する世界的なスタイリストやニューヨークの有名なバイヤーなどを起用し、世界中の力を結集して店舗を作りあげていく感覚には、大きなやりがいを感じました。

海外で磨かれたスキル。

海外で働くうえで必要なスキルは、とにかく「明るいこと」。私自身はロンドンでの最初の半年間、これができていなかったからうまくいきませんでしたね。2番目は「フェアであること」。評価の公平性などは日本よりも厳しく見られています。評価だけではなく、フェアに議論できる雰囲気を作ること、フェアに情報を共有することも大事な要素です。3番目は「情熱があること」。もちろん思っているだけではなく、表現すること、実行することが大事。その情熱を言葉に出してきちんと伝えることが、周りの人々を動かしていく力の源になることを、何度も体験しています。すべては、より良いコミュニケーションに通じること。それにより、まずはスタッフに、そしてお客さまに、ユニクロの製品の良さを理解してもらい、私たちの企業姿勢に共感していただく。それが、ブランドを育てるための大きな一歩になると信じています。

ベルギー1号店。それは、単なる新店オープンではなく、
この国での事業をゼロからスタートさせることだ。

自分の意志や信念を研ぎ澄ませる。

ベルギーの1号店であるアントワープ店を手がけるということは、ベルギーでの事業を立ち上げるということ。すべてゼロからのスタートでさまざまな困難がありましたが、その度に自問自答をしました。「なぜユニクロはベルギーに出店することにしたのか?」「Lifewearとは?」「なにを成し遂げないといけないのか?」「それは自分も成し遂げたいと思っているのか?」。それらに対する答えがクリアになればなるほど、自分の信念や意志が研ぎ澄まされていき、多少の困難には動じなくなりました。

まず取りかかったのは全体の事業計画を組むこと。それと同時に進めたのがベルギーの責任者となるスタッフの採用です。人事、マーケティング、ビジュアル、それぞれの責任者を決めることは、今後ユニクロブランドをベルギーで構築する上でのキーパーソンを決めることです。ベルギーでの最初の一歩ではありますが、将来に大きく影響する重要な一歩であることを肝に銘じて、相当な覚悟と責任感を持って採用にあたりました。

新店舗が、誰かの人生を変える。

今ようやく1店舗目を開店したところですが、それだけでも誰かの人生を変えていると思えることに出会えました。たとえば、採用した障がいのあるスタッフの父親からは、「毎日楽しそうに仕事に行く娘を見て、僕は本当に幸せだよ」と直接感謝の言葉をかけてもらいました。また、別のスタッフに昇格を告げたときには「私でもやればできるんだと思えて本当にうれしい」と涙ながらに喜ばれたこともありました。また、「このヒートテックは素晴らしい。クラブ活動で使うから100枚買いたい」とのお客さまが現れ、ひとつの製品には人の生活に影響を与える力があることも再認識しました。

「人生を変える」というと大げさかもしれませんが、人々が幸せになる場面に遭遇すると「こちらこそありがとうございます」と心から思います。それだけで自分がファーストリテイリングで、この店舗で働いている意味があると感じています。