CONCEPT MESSAGE

PEOPLE
業界の抱える課題をジーユーで解決する。
「数字」に基づく経営と、
「服」や「商売」が好きであるということ。

「お前、経営とは何だと思う?」。30歳を目前に、はじめて「経営」ということの本質に直面し、何も答えられない自分に気がついた。

会社を業界上位まで押し上げ、すっかり有頂天になっていた。

ファッションが好き、商売が好き。この2つの好きを、世界を股に掛けて追求したい——。これが、当時私が商社に入社した理由でした。入社した会社は大手ではあったものの、ファッション業界においては下位に甘んじていることを知ったのは、入社してからのこと。しかし、この事実が私の心に火をつけました。「それなら自分の力で、上位に持っていこうではないか」と。

私が入社した当時のファッション業界は、コストが高く、ムダも多い上、企画も曖昧でした。デザイナーが好きな物を作って売っている、まさにそんな感じです。そこで私はクライアント企業のために、製造拠点として中国だけでなく他の国々も開拓し、安く作れる生産体制を確立しました。同時に物流を改善し、流行っている商品を多角的にマーケティングしながら、ODMも積極的に提案しました。結果、部署で一番の営業成績を残し、会社を業界上位に押し上げることができました。

ところが、そんな私をつかまえて、当時の本部長が言った言葉は今でも忘れられません。「お前は腕力で部下を支配しているだけで、マネジメントというものをちっともわかっていない。お前、経営とは何だと思う?」。私は恥ずかしながら30歳を目前に、はじめて「経営」ということの本質に直面し、何も答えられない自分に気がつきました。それをみた本部長は私に言いました。「経営者になれ」と。

以後、経営について自分なりに猛勉強しました。社内選抜の試験をパスし、アメリカのビジネススクールにも留学しました。初めのうちは周囲が話す英語がわからず、人生で初めて劣等感や疎外感を味わいました。そうした経験がその後の私にとって財産となりました。

※ODM:他社ブランドの製品を設計・生産すること。または、それを請け負う企業のこと。

トップダウンでもなく、ボトムアップでもなく、ミドルアップダウン。

帰国後、私はクライアント企業のひとつであるアパレル企業に出向。課せられたミッションは、「赤字体質を改善し、黒字化すること」でした。

ビジネススクールで学んだことを実地で活かせると、私は大いに張り切りました。結果として、任期内に出向先企業を黒字にすることができ、経営の楽しさ、奥深さを身をもって学んだ濃密な期間となりました。任期満了を機に、出向先の会長から「将来を託したいから、商社を辞めてくれないか」と相談され、私は転籍を即決しました。

こうして転籍したわけですが、ここでひとつの転機が訪れました。それはカフェ事業を営むグループ企業の社長を兼務したことでした。繊維畑を歩んできた私にとって、飲食業は全くの初めて。加えて、社員はほぼ女性。男兄弟、男子校、そして体育会的な商社と、男社会を歩んできた私は、多くの女性たちを前にどのようにリーダーシップを発揮すればよいのか、正直、戸惑いました。

そこで、私が取った行動はとにかく皆の意見を聞くことでした。すると驚くほどに、たくさんの意見が出てきました。皆が同じ想いを抱き、同じ夢を語ることに気がつきました。皆の想い、やりたいことを整理して一定の方向性と大まかなアクションプランを考え、中堅メンバーへと共有する。中堅メンバーがさらに現場からアイデアを募り、そのプランをブラッシュアップさせながら実行へと移す。それらを、私は経営者として支えていきました。

この結果、カフェは社員たちのアイデアにより活性化し、お店で提供するスイーツも日本各地の食材を用いたことからテレビ局などに取材され、技術力を競う権威あるコンテストで優勝しました。社員たちの喜びが増え、自信も深まり、さらなるモチベーションを生み出していきました。

トップダウンでもなく、ボトムアップでもなく、ミドルアップダウンという経営手法。このマネジメントの仕方は、そのまま私の経営スタイルとして身に付いていくことになりました。

私はかねてより、自分が抱く問題意識を共有し、業界が抱える課題を解決できるのはファーストリテイリンググループであり、ジーユーだと考えていた。

ファッションの力とは、ある特定の人だけが楽しむものではない。

現在、アパレル産業が注力すべき課題は、次の3点だと私は考えています。「デジタル」「グローバル」、そして「ファッション」です。

まず「デジタル」について言えば、お客様の利便性をさらに高め、お客様が本当に欲しいと思う商品をお届けするためには、データ解析が必要不可欠。過去の購入履歴からお客様の好みを分析するだけでなく、買っていない商品はどういうものかという視点からのアプローチも重要で、こうしたデータ管理をどこまでできるか。その成果が、そのまま市場における自社の優位性を左右すると、私は考えています。しかし、これを実現するためには十分な経営資源が必要であり、この点で多くのアパレル企業がそれが不足しているのが実情です。

次に「グローバル」について言えば、これはもはや時代の要請です。現時点において、仮に国内市場で確たる地位を築き、利益を生み出していたとしても、日本の消費年齢人口は頭打ち。加えてグローバル化が進む現代においては、いつなんどき海外から有力企業、有力ブランドが参入してこないとも限りません。利益の追求のみならず、リスクヘッジの観点からも、アパレル企業においてもグローバル戦略は必須です。

そして最後に「ファッション」です。「アパレル企業なのに、なぜ?」と思うかもしれませんが、ファッションというのはある特定の人(顧客)の満足にだけ好影響を与えればそれでいいというような、そんな限定的で表層的なものではないからです。たとえばスポーツをやったことのない人に対して、エントリーウエアとして手頃な商品を提供し、そのウエアをキッカケに新しい世界へと誘うことができれば、ファッションはその人の人生を豊かにすることができます。発展途上国の人たちに対しても、彼らが働いたお金でも十分にファッションを楽しめるようにすることができたら、その国にさらに活力を与えることができます。ファッションというのは、そうした大きな力を秘めているのです。

商品構成、トレンド感、そしてそれを伝えるマーケティング。

私はかねてより、自分が抱く一連の問題意識を共有し、業界が抱える課題を解決できるのはファーストリテイリンググループであり、ジーユーだと考えていました。

ファーストリテイリンググループの強みは、世界に影響を与え得るスケールとネームバリュー、そして人材。なかでもジーユーは、その強みを生かして安くいいものを作るだけでなく、そこにファッションという要素をきちんと加味していました。ガウチョパンツの大ヒットは記憶に新しいところですが、デジタルを活用することで的を絞り、それを世界に向けて仕掛け、ファッションの力で世界中にワクワクやドキドキを与えようとしている。このような企業は、なかなかありません。

しかし、現在のジーユーは、ひとつの転機を迎えていると私は考えています。なぜなら、自社の「ファッション」が拡大しすぎて、商品構成において「定番品」と「流行品」のバランスがくずれてしまっているからです。そこで商品本部長として私が取り組んでいるのが、自社の商品価値向上のための戦略の実行です。具体的に言えば、「適切な商品構成」「トレンド感」そしてそれを伝える「マーケティング」、この3つを確実に遂行することです。

「適切な商品構成」においては、コアなカテゴリーの質を高めていくことです。どういうことかと言うと、たとえばスウェットというコア素材においては、オーバーサイズスタイルというリラクゼーション感覚を加味することで、デザイン感を演出する。しかし、ここでポイントとなるのは、すべてをデザイン感のあるものにするのではなく、プルパーカーのようなベーシックなものも用意しつつ、その売れ行きやお客様の嗜好、現場の声などをデジタルで管理すること。そして、定番と流行の「比率」をきちんと割り出すことで、数字に基づいた利益コントロールを行うことが重要です。

「トレンド感」については、ジーユーの真骨頂でもあります。グローバルにトレンドを追いかけ、商品開発に結びつけていくことが大事である一方、トレンドというのはときに曖昧で、ヨーロッパの流行、アメリカの流行、そして日本の流行が一致しないこともよくあります。こうしたとき重要となるのは、異なるトレンドから共通項、言い換えるなら公約数を見つけることであり、同様に今のジーユーの公約数も探っていく。こうして並んだ両者の公約数のうち、一致した最大のものがジーユーのお客様にとっての最大公約数であり、たとえばそれがレギンスだったとしたら、そのレギンスを単品で提案するのではなく、ワンピースと組み合わせるといったスタイリング、商品群で魅せていくことが、ジーユーの存在意義だと私は考えています。

そして最後に「マーケティング」についていえば、これは今のジーユーの最大の弱点と理解しています。要は「商品の特徴や特長をどうお客様に伝えるか」というのがポイントで、新規で取り入れた試みや改善点があるなら、そのストーリーをもってお客様に端的に伝えることが大事です。もっと言えば、最初の段階からマーケティングを見越した商品開発をしていく必要があると言えます。

ここで生まれるワクワク、ドキドキを掛け算することでco-creation(共創)を生み出し、低価格のファッションを世界規模で提供する。それができれば発展途上の国々を含め、ジーユーは世界に対し、新しい自由、人生の自由を提供できる。

ソリューションにエモーションをプラスする。

前述した3つの戦略は、言わば業績を上げていくための短期的な取り組みであり、これから私が長期的に取り組んでいきたいと思うのは、「ジーユーとは何か?」という本質的な部分の追求です。現在、営業本部がデジタル技術を活用したフューチャーストアの実現に取り組んでいますが、同様に商品本部もマスカスタマイゼーションを実現し、お客様が欲しいと思うものを短期間で提供できないか、真剣に模索しています。

しかし、こうした取り組みだけではソリューションの提供にすぎません。さらにジーユーが取り組むべきは、そこにエモーションをプラスすることだと考えています。たとえばお客様に向けて、誰もが楽しめるようなスポーツイベントを開催し、ジーユーのスポーツウェアを用意。スポーツの楽しさを体感してもらうことで、新しい自分に出会うキッカケを提供する。あるいは社員に対して、ファッションショーへの参加やメディアへの出演を通じて、その影響力を実感してもらう。同時に、デジタル、ファッション、グローバル、マーケティングを学ぶことによって、自分が成長していくという達成感を味わってもらう。

これらはほんの一例に過ぎないかもしれませんが、ポイントはここで生まれるワクワク、ドキドキを掛け算することでお客様や社員とco-creation(共創)を生み出し、低価格のファッションを世界規模で提供することへとつなげること。それができれば発展途上の国々を含め、ジーユーは世界に対し、新しい自由、人生の自由を提供できると、私は信じています。

最後に、これから入社する人たちに、ぜひお伝えしたいことがあります。

まず「経営者を目指す人」には、ファッションを勉強して欲しいと思います。ファッションとは限定的、表層的なものではありません。新しい自分に出会うキッカケを与えることで、その人に新しい人生を提供できるほどの力を持っています。逆に、「ファッションが好き」「接客が好き」という人には、ぜひ経営を学んで欲しいと思います。マストトレンドを見極め、経営者視点でマーケットを見てもらったとき、自分が行使する力は、ジーユーにおいては世界にまで及ぶからです。

そして、すべての人に伝えたいのは、「学ぶ」ということに「遅すぎる」ことはないということです。ジーユーにはファッションから経営、そしてデジタル活用にいたるまで、広大な学びのフィールドが広がっています。各分野のスペシャリストたちが集結し、同じ目標、同じ夢に向かって、一致団結して邁進しています。これこそがジーユー最大の強みであり、ジーユーという会社の素晴らしさだと、私は考えています。