CONCEPT MESSAGE

PEOPLE
ジーユーという組織において
店長に求められるのは、
オペレーションではなくクリエーション。

すぐに見つかる課題というのは、往々にして自分の好みや強みに引っ張られがちだということを、私は「自分の強み」を理解したことで気づいた。むしろ大事なのは、顕在化していない課題、少なくとも自分には見えていない課題への取り組み。

「ファッションに対する興味と知識」という強み。

就職活動を進める際の軸としたのは、「世界を視野に入れた働き方をしたい」「家庭を大切にしたい」という2点でした。グローバル化が急速に進んでいることを考えると、日本でのみ通用する人材のままでは活躍できるフィールドも限られ、いずれは時代から取り残されて、長く働くこともままならなくなると考えました。一方で、早い段階でグローバル人材へと成長できれば、海外のどこでも働けるはずだし、裏を返せば日本で働いていてもいいはず。その企業がグローバルであればあるほど、どこの国で働いていようとも、そこの社員であることに変わりはなく、この点で働く場所を限定しないということは、女性が長く、自分らしく働くうえで、有利に作用するのではないかと、私は考えました。それだけに当時、創業したばかりのベンチャー企業にも関わらず、早くも世界へと羽ばたき、真のグローバル企業となって本気で世界一のファッションブランドを目指そうとしているジーユーに、私は非常に魅力を感じ、1期生として入社しました。

入社後は、スタッフ、店長代理、店長と順にキャリアアップしてきましたが、入社して3年が過ぎたとき、私は大きな壁にぶつかりました。店長としての職務を全うすることで精一杯だったこともあり、仕事のやりがい、自分の存在意義みたいなものをなかなか見出せず、行き詰まっていました。そんなとき、救いの手を差し伸べてくれたのは、上司でした。「ファッションに対する興味と知識」を私自身の強みとして引き出してくれ、それが店舗の業績にもつながることを、日々の指導を通じて私に気づかせてくれたことがブレークスルーとなりました。

「自分の強み」を知り、「自分の弱み」がわかる。

当時の私にとって、自分よりも経験豊富な年上のスタッフを束ね、皆を導いていく店長業務は、思っていた以上に難しいものでした。しかし、「自分の強み」を見つけた私はそれが自信となって、自分から仕事を作り出していくことができるようになりました。店舗というのは、店長が何も考えなければ成長も止まる反面、店長が新たな仕事を次々と作り出せるようになると、それに伴い店舗も成長していくことを知りました。

ちなみに私が仕事を作り出していくとき、つねに念頭に置いたのは「自分に何ができるか」という発想と、「店舗や会社をよくするには何が必要か」という視点でした。そのうえで、これまでの経験を踏まえ感じているのは、前者については「自分の強み」が活きるということ、後者についてはスタッフの意見が道標になるということです。

とくに私にとって重要だったのは、この両者のバランスをきちんと取るということでした。それというのも、すぐに見つかる課題というのは、往々にして自分の好みや強みに引っ張られがちだということを、私は「自分の強み」を理解したことで気づいたからでした。むしろ大事なのは、顕在化していない課題、少なくとも自分には見えていない課題への取り組み。これについてはスタッフの意見、とくに経験豊かなスタッフの声に耳を傾けることが、とても有効でした。事実、「自分の強み」以外の部分については「そういう視点があったのか!」と、新鮮な驚きを感じることも少なくありませんでした

「自分の強み」を知るということは、「自分の弱み」を知るということでもあります。これはとても大事なポイントで、強い部分は自分がリードし、弱い部分はスタッフの力を借りる。こうして相互に補完し合うことは、チームワークを強固にし、スタッフのモチベーションを高め、店舗の仕事をいっそう楽しくするのだと、私は一連の出来事を通じて身をもって学ぶことができました。

デジタル技術の導入は、お客様とのコミュニケーションを減らすのではないかという懸念を、私たちは最後まで払拭できなかった。しかし、蓋を開けてみたら、むしろコミュニケーションツールとなっていた。

お客様に楽しんでもらえるようなデジタル技術を。

2017年3月、私は横浜港北ノースポート・モール店の店長に着任しました。同店において目指したのは次の3点でした。ジーユーにとって最大級の売場面積を誇り、商品構成においてフルラインアップを実現し、売り場にデジタル技術を導入するというもの。

私は着任とともに新店のコンセプトづくりに携わることになりましたが、リアルとデジタルを融合させた新形態ということもあり、社内でも主要プロジェクトに位置づけられ、各部門から担当者が集結しました。結果として、プロジェクトチームも大所帯となりましたが、そのなかで私に求められていた役割は、プロジェクトの進行に絶えず「お客様視点」を持ち込み、お客様満足の最大化を図ることでした。

プロジェクトはコンセプトづくりに始まり、それをもとにした店舗設計、そして人材教育や売場づくりといったフェーズを経て、同年9月のオープンへと進んでいきました。なかでもコンセプトづくりにおいては、当初よりデジタル技術の導入が主要テーマとなっており、この点でとても明快だったのですが、それでは具体的にどのようにデジタル技術を活用していくかという点で、議論が紛糾しました。

こうしたなかで私が何よりこだわったのが、「ファッションの楽しさを、お客様自身にデジタルを活用することで楽しんでいただく」ということでした。ファッションの楽しさについては本来、接客を通じお伝えすることがアパレル業界のひとつの使命であり、同時にそこで働く私たちのやりがいでもあります。しかし、それをデジタル技術を活用し、いかに変革していくかが今回のプロジェクトの最大のチャレンジ。だとしたら、お客様にファッションを楽しんでもらえるような技術としない限り、その取り組みはお客様への新たな付加価値とはならないと私は考えました。

そこで競合他社の実店舗での取り組みは言うに及ばず、世界中の小売店において導入されているさまざまな事例をリサーチしながら、私はつねに「お客様視点」でデジタル技術の活用法についてイメージを膨らませていきました。

オシャレナビ・カートとオシャレナビ・ミラー。

こうして実現したのが、RFID(Radio Frequency Identifier)を活用した「オシャレナビ・カート」であり「オシャレナビ・ミラー」でした。前者はショッピングカートにモニターが付いており、タグをかざすと商品情報や在庫状況をはじめ、商品を着用したモデルや一般の方々の1,000種類以上のコーディネート実例や、購入したお客様の商品レビューが表示されるようになっています。後者についても同様で、通常時は鏡ですが、タグが付いた商品をかざせば、コーディネート実例と商品レビューが見られるようになっています。

とくにカートで在庫を調べられるようにしたのは、「お客様視点」が活きた部分だと自負しています。デジタル技術で単にドキドキやワクワクを提供するだけでなく、いかにしてお客様のストレスを解消できるか。ショッピングにおけるストレスフリー化はお客様への大切なサービスであり、日頃からお店のスタッフとつねに考えてきたことの成果が活きました。この点で「セルフレジ」の導入も、精算時の所要時間の短縮を実現できる点で、ストレスフリー化の大きなポイントになったと考えています。

私がプロジェクトを通じて感じたことは、店長として人を動かすことと、プロジェクトメンバーとして組織を動かしていくこととは、まったく異なる能力が必要であるということでした。とくに後者においては、想いだけで組織は動かず、それをやることのメリットをしっかりと会社にプレゼンできる能力が必要であることを知りました。ぼんやりとアイデアを伝えるのではなく、具体例とともに実現したい姿を伝え、「お金が足りない」「時間が足りない」という壁も、上司や社内の知見を拝借しながら費用対効果を具体的数値で示すことが重要だと実感しました。

そしてプロジェクトメンバーとして私が何より心がけたのは、「すぐ行動する」ということでした。収穫だったのは、現場を担う私自身が台風の目となり、組織内に渦を巻き起こすことができれば、本部の各部門が動き出し、絶えず新しい風が吹き込まれていくことを目の当たりにできたことでした。もともとチャレンジスピリッツ旺盛な企業だけに、ジーユーにおいて自らが求心力となって働くことの醍醐味を、私は肌で感じることができました。

世界を意識しながらチャレンジできる仕事。

デジタル化への取り組みとともに私が注力したのが、人材教育と売場づくりでした。ジーユーには「おしゃリスタ」と呼ばれるコーディネートを得意とするスタッフがいますが、私はその育成とともに、既存スタッフの再教育が重要と考えました。デジタルを融合した新形態の店舗である以上、私たちにも心機一転が必要だと考えたからでした。また、売場づくりについては「自分の強み」を信じ、新しい試みにもチャレンジしました。広い売場面積を活かし、什器もこれまでより低いものを採用することで開放的な空間を創出し、通常店舗の10倍以上のマネキンを配置。それもファッションのテーマごとに異なるものを新調しました。

こうして作り出していった空間に、オシャレナビ・カートやオシャレナビ・ミラーが加わったことで、店舗はまったく新しいジーユーの姿をお客様にお見せすることができました。「わぁ、すごい」「全然違うね、今までのジーユーと」といった声をお客様から直接聞けたことは、本当にうれしかったですし、私たちの大きな励みとなりました。

しかし、大事なのはむしろこれからだと私は考えています。デジタル技術はつねに最新の状態を保持していないと、すぐに飽きられ、廃れてしまうからです。この点で私たちにとっては諸刃の剣。何もしなければすぐに「古いジーユー」となってしまいます。

それでも私は、デジタル技術をチャンスに変えることができると考えています。なぜなら、次々とドキドキ・ワクワクを提案していくことを喜びとし、それをひとつの企業価値としているジーユーにとって、こうした環境はむしろ望むところ。私の頭の中にも、オープン時には実現できなかったアイデアが、まだたくさんあります。それに私が着目しているのは、オシャレナビ・カートやオシャレナビ・ミラーが、お客様との接点を確実に増やしていること。実はプロジェクトチームは、デジタル技術の導入がお客様とのコミュニケーションを減らすのではないかという懸念を抱えていました。しかし、いざ導入してみると、むしろコミュニケーションを増やすツールとなっている。この事実は、私たちを大いに励ましています。

今、つくづく思うことがあります。それはジーユーという組織において店長に求められるのは、オペレーションではなくクリエーションだということ。それを仲間と試行錯誤しながら追求する先に、きっと世界をアッと言わせる何かが生まれるのだということを予感しながら働いています。日本にいても、つねに世界を意識しながらこうした数々のチャレンジができる仕事は、やはり刺激的だし、とても楽しいです。