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【Story】常夏のシンガポールで冬物商品は売れるのか。

シンガポール=アジアの中心という土地柄にこそ、売れるヒントがあった。

「常夏」に「冬物ジャケット」。多くの人の常識の中ではありえない組み合わせ。「そんなもの売れるわけないだろ」提案当初、社長にはテレビ電話越しに猛反対された。そんな中、なぜ売れるという確信を持てたのか?

ユニクロシンガポール店オープンまでの間、店舗の立ち上げを任された社員小野口は徹底的にシンガポールの暮らしを観察した。そこで見たのは、冬物のダウンジャケットを買っていく人々。9月。気温は30度。買っているのは、旅行者・ビジネス出張族がほとんど。

なぜか?アジアにおいて、交通、仕事、人の流れのハブの役割をシンガポールが担っている。シンガポールは、頻繁に海外への渡航する人たちの集まりであり、国外への移動用や寒い土地への出張用に冬用商品を求める人が多かったのだ。

絶対に売れる。もう一度社長を説得したい。直談判した。

その国に住む人々に、何ができるのか。

最終的には「店頭の品揃えの半分だったら」という条件付きで社長の了承を獲得。小野口の本気が社長と会社を動かした。結果、冬物が飛ぶように売れる日々。在庫が足りず急遽日本から送ってもらった。目の前に繰り広げられているのは、日本では絶対に見ることのない光景。後を追うように他のブランドも冬物を置き始めた。常識が変わった瞬間だった。

東南アジア初進出でもあったシンガポールの立ち上げは、ユニクロの大きな飛躍となった。約10年で東南アジアの店舗数は200店舗以上に拡大。向き合っているのは、約6億人の人々。

「単純に売ることではなく、東南アジアの人々にユニクロの服を通じて満足と幸せを提供できるかどうか」

シンガポールでの経験からずっと変わらない、商売人である自分自身への問い。この問いに向き合うことこそ、自分自を変え、世界を変えていく第一歩だと小野口は信じている。